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茨城県近代美術館 常設展(2023/4/21)

こちらの記事 の続きです。

混雑を避けてひたち海浜公園を早めに後にしたものの、ホテルのチェックインまで少し時間があったので、千波湖畔まで足を伸ばし茨城県近代美術館で常設展を見てきました。

企画展「いのくまさん」もだいぶ力を入れていそうで気になったんだけど、スキマ時間では見切れそうもないので断念。

常設展もきちんと作品リストがあって嬉しい。鉛筆と合わせて手に取ったら、受付の方が「バインダーもお使いになりますか?」と声をかけてくださって、大変ありがたかったです。(急遽立ち寄ったので自前のバインダーは持ってきていなかった……)
図版と解説入りのカードを無配しているのもイイ! 気遣いが行き届いた美術館だなと思いました。

国立西洋美術館のブルターニュ展に貸出中の「ポール=ドモワの洞窟」の分も貰ってきてしまった。メインビジュアルを飾ってましたね!

第1展示室 日本の近代美術と茨城の作家たち 春から夏へ

https://www.modernart.museum.ibk.ed.jp/viewer/info.html?id=138

こぢんまりとした展示室でしたが、中村彝に横山大観、菱田春草、下村観山、川合玉堂と、重文展で見た画家の作品が結構あって嬉しかった!

そっか、茨城って岡倉天心ゆかりの地なんだ。天心記念五浦美術館ってあったなそういえば。大学時代に住んでたはずなのにまるで気にしたことなかったな……。

以下印象に残った作品たちについて。

菱田春草「普賢菩薩」

伝統的な日本画風の普賢菩薩とやたら写実的な象の取り合わせがミスマッチに感じないのは、綿密に計算した上で描いているからなんだろうな。象は造形こそリアルだけどいわゆる「朦朧体」の夢幻的なタッチで、仏画とマッチするようにリアリティが調整されてる感じ。

彩度の低い画面の中に際立つ普賢菩薩の衣の青の鮮やかさ、絵柄の異質感に、この世ならぬ物という感じが出てていいなあ〜と思った。
そしてそんな普賢菩薩を背に乗せられて光栄なのかニコニコしている象がかわいい。普賢菩薩のクールな表情と好対照ですね。

下村観山「大原之露」

平家物語の大原御幸を題材にした作品。大きな画面いっぱいに描かれるのは、ツツジの花でかろうじて春とわかるものの、あまりに侘しい景色。金地に緑が空気遠近法的にぼかされた背景がこの世ならぬ雰囲気を醸しています。おおっと思って近づいてキャプション見たら下村観山で嬉しくなっちゃった。

すっかり世を捨てた生活をしていた建礼門院と典侍が、後白河法皇の姿を見て現世に引き戻されていくイメージなのかな。

ツツジの紅や建礼門院の着物の柄(オシャレなのでこの柄のグッズほしい)、侍女の手首の数珠の房の青がアクセントのように映えてて素敵だなと思いました。見られてよかった。

小川芋銭「於那羅合戦下絵」

展示室中央のガラスケースをどれどれと覗き込んだらオナラ合戦ですよ。完全に「ひどい民話を語る会」の世界じゃねーか! と思ったら本当に旅先で聞いた民話が元ネタなんですね。(文化遺産オンライン参照)

くそっこんなので! と思いつつ、あまりの絵面とゆるさに笑いを堪えるのが大変でした。下ネタは鉄板だからね。だからこそ語り継がれるんだと京極夏彦も言っていたからね。しかたないね。

真ん中の人しあわせそうすぎる
「放屁競技」とかいうパワーワードにツボってたら完成版は「放屁大會」にレベルアップしていた……
鼻を押さえて逃げ出す狐くん かわいそう
「鼬」に苦戦してるところや謎の「牛蒡」の文字も下絵ならではの味があります
キャプションの英訳すら面白くてずるい
バトルオブオナラて

長谷川潔「長谷川潔の肖像」

版画集の中から、メゾチントという手法を用いたものを中心に10点が展示されていました。黒が柔らかく、深く、音すら吸収してしまうような静けさ。
とくに「玻璃球のある静物」がよかったな、配置のバランスもバチっと決まってるし、玻璃球とプリズム? の意匠化された反射の表現がイイ……もっと他の作品も見てみたいな、調べてみよう。

第2展示室 花ものがたり

https://www.modernart.museum.ibk.ed.jp/viewer/info.html?id=140

第2展示室には花をモチーフにした作品がずらり。時代も技法もさまざまで、花に物語を寄託したもの、環境破壊への批判など主張を織り込んだものとアプローチもさまざま。興味深く拝見しました。

那波多目功一「寂光」

展示室入口正面にドンと飾られた大作。「寂光」というタイトル通り寂しくはあるけれど、悲しくない、静かで優しい光の風景に心惹かれました。エモい。これは月の光でいいのかな。
一見意匠化されているようでいてリアルな植物の描写も好き。じっと見つめて浸っていたくなる作品でした。

バーン=ジョーンズ「フラワー・ブック」

花の通称から連想した聖書や神話の物語を、円形のちんまりした図像にまとめた版画集。(ナンバンサイカチ→別名ゴールデンシャワーツリー→黄金の雨→ダナエ みたいな感じ)

全38作のうち、19作が展示されていました。美しく手彩色され、丁寧に額装された小さな画面が並ぶ様は、宝石箱のようでワクワクしてしまう! 元ネタとなる花の写真と学名・通称が一枚一枚添えられていてありがたかった。元々の英語の花の名前がわかんないとこの絵の趣向ってピンとこないもんね。

白百合の咲き乱れる中の受胎告知を描いた「白い庭」が清らかで特に好きでした。円形の画面の中に直線的な天使と身をかがめたマリアがカチッと収まっているのも気持ちいい。
この作品は撮禁&グッズも図録もないし、寄託だからかwebの収蔵品一覧にもないので、Amazonで洋書買っちゃいました。届くの楽しみだ〜!

ついつい天井撮ってしまいがち
ロビーに展示されたロダン「三つの影」
どうしても同じ像の反復に見えなくて不思議
グレーと赤のソファがおしゃれ。フッカフカ!
歩き疲れた身体をゆったり休められて助かりました☺️