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【『メアリーの総て』やろがいの話】

(2019年1月7日  無人島キネマ・ブログ版 初掲)

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「ホラー映画なんて何が良いのかしら?あんなの悪趣味なだけじゃない!」なんて、、、

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この作品を観て、

映画の見方、広げてこ〜〜〜

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とは言ってもこの映画、別に「オカルトやモンスター、最高!!」とか「血しぶきや切り株、テンションあがる〜!」とか、そういう話ではもちろん、ない!

むしろ美しい油絵のような映像の中で、美しいエル・ファニングが美しい衣装をまとって、美しい成年と美しい恋に落ちる、どんだけ俺の目を美しがらせたら気がすむんや!!という、中でもエル・ファニングの美しさを観るだけでも充分価値のある映画なんや!(今回もギリ脱いでないけどな!!)

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でも美しいばっかりで過ぎていかないのが人生や!主人公メアリーが恋した男は、親のスネをかじってロクに働きもしないくせに意識は高くて口だけは達者なヤツや!「自由恋愛主義」なんてヘリクツ抜かして義理の妹に手出そうとしてたみたいだし、風邪熱でグッタリした赤ん坊を嵐の夜に無理矢理外出させて死なせてしまうようなダメ亭主。住む家がなくなって居候させてもらった先輩の詩人は、このダメ亭主より輪をかけて享楽主義のデカダンかぶれなヤツで、メアリーの人生踏んだり蹴ったり!もう、、

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と叫んで逃げ出したくなる状況や!もうたくさんのものを失って、心の中の愛や希望までもが失われかけたそんな時、メアリーは何をしたと思う?

それは自分の中に温め続けてきた『フランケンシュタイン』の物語を書き上げることだったんや!

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物語を創作する、書き上げて作品にする、それはメアリーにとって、亡くなった子を産み直すことでもあり、自分の人格を肯定し直すことでもあり、優しくも抑圧的だった父親からの自立、それはつまり、自分の過酷な過去の体験を物語として相対化するという物語療法(ナラティヴ・セラピー)的な効果によって、メアリー自身が生まれ変わることができたという話だったわけや!!

でもそんな物語がどうしてよりによって『フランケンシュタイン』なんていうバケモノの話になるのか?そこが今回の話の中心軸!!

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メアリーの書き上げた『フランケンシュタイン』を読んだダメ亭主は「なんで人間のいいとこを寄せ集めて作ったモノが怪物になっちゃうの?理想も希望もないじゃない。怪物じゃなくて“天使”に書き直したらどーお?」なんて、あさって、しあさってどころじゃない1週間後くらいの方向間違った指摘をするんやけど、それに対して返答するメアリーの言葉が素晴らしい!
そしてその直後、同じく『フランケンシュタイン』を読んだ義理の妹、この娘もいろいろ大変なことがあってたくさん傷ついた娘。その娘の感想は「私はこの醜い怪物にこそ共感した、その復讐がかなうことを応援する気持ちになった、そして私の心は救われた」!!

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この一言がとっても大事!!人は美しい話、立派な人物、正しい行いを寄せ集めた映画にばかり感動するわけやない!醜い怪物や酷い物語に、辛い自分を肯定されているような励まされているような気持ちになることだってある!そんな気持ちを引き受けてくれているジャンル映画、それが、

ホラー映画なんだと思うんやで〜〜〜〜〜〜!!

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