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【スラムダンク】土屋外伝

井上雄彦先生の名作漫画、『SLAM DUNK』。

最も有名なスポ根漫画と言える、バスケ漫画の金字塔ですが、特に全国編が始まるにつれ、「強キャラなのにほとんど描写のない謎キャラ」がちょこちょこ出てきます。

名朋工業の森重寛、愛和学院の諸星大、常誠の御子柴など、、

その中でも一際謎めいているのが、大栄学園の4番を務める、土屋淳です。


ポジションや身長等、プロフィールはほとんど不明ですが、ゼッケンが4番であることから、おそらく高3でキャプテンでしょう。

彼は、陵南の1年、自称「大阪一のチェックマン」である相田彦一が、インターハイ神奈川県予選敗退後に地元大阪へ帰省し、インターハイ大阪府予選を見学に行った際に紹介された選手です。

後に湘北がインターハイ1回戦で辛勝する、名門の豊玉を下し、その年の大阪府予選を優勝したのが大栄学園で、オフェンス重視でハイスコアゲームを得意とする豊玉のペースを乱し、味方を活かしながらロースコアに持ち込んで勝利に導いたのが土屋淳です。

彦一曰く「長身のフロアリーダー」「まわりを活かすのがうまい」「どことなく仙道さんタイプ」の土屋ですが、それ以降は数コマしか出てこず、セリフは、湘北vs山王を観戦中に「尊敬するで、山王」と発言したのみです。

そんな土屋に魅了された僕は、勝手に土屋の人物像やプレースタイルを想像し、原作の夏のインターハイの後に行われた秋の国体の前後のストーリーを勝手に作りました。

僕はバスケ経験が皆無で、知識はスラムダンクとネットで軽く調べた程度ですので、矛盾点等あるかもしれませんし、ストーリーが面白くなるように、多少パワーバランスをイジっている面もありますが、どうかご容赦ください。

ちなみに、元となる作品は、下記のチャンネルの複数の動画のコメント欄に投稿していました。

ここに載せている作品は、投稿を1つにまとめたものです。

↓サラシナ【スラムダンク考察チャンネル】


また、大栄学園は土屋以外は選手の名前すら明かされておらず、他の大栄メンバーは完全オリジナルキャラクターです。

上記のチャンネルの下記の動画で考案されたオリジナルキャラクターを一部修正して登場させています。


それでは、ぜひ『土屋外伝』をお楽しみ下さい。

ーー

彦一が見学していたあのインターハイ予選の豊玉vs大栄の試合終了後、イラ立ちを隠せず「パスばっか回しやがって、お前自身がもっと勝負せんかい!」と突っかかる岸本に対し、土屋は「そないやから負けたんとちゃうん?今年の俺らは強い。お前らには負ける気がせん。」と吐き捨てる。

岸本「何やとお!?」
殴りかかろうとする岸本をチームメイトが押さえ込む。

岸本に睨まれながら、土屋はうなだれる南に目をやり、「今のままならな。」とつぶやく。


40日後、広島の旅館にて、インターハイ初戦敗退し、流川に薬を届けて帰ってきた南に出くわす土屋。

土屋「おう。薬か、それよう効くからな。お前のアクロバットプレーのケガもすぐ治るやろて。」

南「ふん。ナガレカワに渡してきたんや。」

土屋「ナガレカワ?、、ああ、向こうのエースか。アイツは上手かったな。」

南「日本一の高校生になるらしいで。明日沢北とやる言うんに。」

土屋「ははっ、イキリ倒しとんな笑、お前のエルボー食らってもチームを勝利に導く、正義の味方気取りや笑」

南「、、、でも、もしかしたらあるんちゃうか、って、心のどこかで思ってしもうとる。」

土屋「、、、そうか。はたから見とってもヤツの動きは凄かった。直接相手したら思うところもあるやろな。」

土屋「で、お前これからどないすんねん。」

南「国体か。」

土屋「それもある。続けるなら、国体は味方、ほんで冬はまた敵や。せやけどそれ以前に、1プレーヤーとしてどうすんねん、っちゅー話や。」

南「、、、」

土屋「悩んどんかい、ほなもうええわ。続ける明確な意志のないやつには興味ない。国体にもいらん。大阪帰って俺らの結果待っとれ。」

南「くっ!、、」

岸本「おい南、どこ行っとったんや、、っておい何や土屋ァ!お前なんかなあ、国体さえ終わったら、冬はボコボコにしたるからなあ!!」

土屋「、、はぁ、、めんどいヤツ来たで。俺は部屋戻るわ。」

土屋は南とすれ違いざまに小声でつぶやく。

土屋「あのアホはやる気やぞ、キャプテン。」

南「!」

土屋「続けるなら、あのアホの硬い頭かち割ったれ。」

去っていく土屋

岸本「どうした南、あのイキリ細目の言うことなんざ気にすな。冬に見返したったらええんや。何なら国体も俺らが主導権を握って、、」

南「岸本、、」

岸本「あん?」

南「もうちょっとだけ、バスケを楽しもう。大栄より、湘北より、、」

岸本「!、、せやな。」

大栄はその後順調に勝ち進み、名朋にも辛くも勝利したが、森重に負わされたケガと疲労のせいか、博多商大附属(仮の優勝校)に準決勝で敗北。

インターハイ終了から数日後、、
大栄学園体育館

大栄監督「これより、国体近畿ブロック大会に向けて、大阪選抜合宿を始めます。」

大栄 ズラッ!
土屋・淀川・茨木・和泉・守口・住吉・松下

豊玉 ズラッ!
南・岸本・板倉・矢嶋・岩田

大栄監督「例年、国体は豊玉の北野前監督が大阪選抜の監督を務めてらっしゃいましたが、惜しくも高校バスケから引退されたということで、今年は私が監督を務めることになりました。みんなよろしく。」

大栄監督「それでは早速、2チームに分かれて試合をしてもらいます。まずは各選手の相性や、インターハイを終えて反省点も踏まえた実力を見させてもらおうと思います。」

大栄監督「土屋、お前は無理すんな。まだケガの影響があるかもしれん。貴重な戦力やからな。それと南君、大阪選抜として、無茶なプレーをすることはならんぞ。」

土屋・南「はい。」

大栄監督「ちなみに、南君はケガはどうや?湘北戦で頭から突っ込んでたが、、」

南「薬塗ったんで完全に治りました。」

土屋(やっぱ効くなあ、、)

Aチーム
PG:住吉
SG:矢嶋
 F  :岸本
 F  :茨木
 C  :淀川
控 :土屋

Bチーム
PG:板倉
SG:守口
 F  :南
 F  :和泉
 C  :岩田
控 :松下

土屋は森重に負わされたケガの影響もありベンチスタート。

南は自ら中に切れ込もうとするが、ディフェンスの上手い大栄のインサイド勢、淀川と茨木に阻まれる。

大栄のスコアラー和泉が「やつらと中で戦おうとするな」とアドバイスしかけるが、それを聞く前に南は切り替え、3Pを決める。

和泉はチームメイトの茨木をうまいこと引き寄せ、空いた岸本は南を止めに行くが間に合わず、南の連続3P。

和泉や板倉もいたが、間違いなく南がエースだった。

ただ、さすがに南のシュートが全て入るわけではなく、リバウンドはほとんど淀川に取られた。

一方、Aチームのオフェンスは、岸本がかなり活躍していた。

インターハイから大阪に帰り、南たちチームメイトとよく話し合い、岸本は豊玉vs大栄にこだわるより、大阪選抜への貢献で実力を見せることを選んでいた。

ラン&ガンを続けてきたことにより、自らボールを運んでそのまま点を取ることができる岸本は、大栄の選手よりも1人で攻撃を完結させる力を持っていた。

土屋がベンチにいる分、アウトサイドが弱くなりがちなAチームを、大栄メンバーも含めて周りを活かしつつ、外から中から引っ張っていた。

ベンチから両チームをじっと見つめる土屋「、、、」

しかし、復活のエース南と和泉、板倉により得点を量産され、点差が開いてきたため、後半土屋を投入。

岸本の負担は減り、よりインサイドを固めることができるようになったAチームは、ゴール下でのBチームの自由を奪った。

しかし、Bチームには外から点を取れる選手が3人もいる。

南は自分ばかりでなく和泉や板倉にもアシストをし、それによりBチームのディフェンスが広がったらスキを見て中に切れ込んだ。

ディフェンスでは大栄の選手に敵わないが、ディフェンスは和泉や守口にある程度任せ、板倉では心許ないゲームメイクも同時に担いながらオフェンスの要としてチームを牽引した。

途中でBチームは守口と松下を交代させたが、土屋と岸本が奮闘するも、AチームはBチームに追いつけず、Bチームの勝利。

試合後、

大栄監督「いい試合だった。これを参考に10日後の近畿ブロック大会のスタメンと作戦を考えます。」

大栄監督「とその前に、大阪選抜のキャプテンを決めなければならないが、土屋、やってくれるか?」

土屋「監督、僕は辞めときます。」

一堂「!?」

大栄監督「なぜだ?無理強いをするつもりはないが、、」

土屋「僕はまだケガのこともあってフル出場できないですし、今日負けちゃいましたしね。」

土屋「それに、僕よりふさわしいやつがいますよ。」

大栄監督「ほう、そしたら土屋は誰を推薦するんや?」

土屋「南です。」

南「!」

土屋「大阪が国体で優勝するには、福岡や愛知、秋田、神奈川を倒さないといけない。この前優勝した博多率いる福岡はウチの弱点を知っとるし、愛知はウチに負けた名朋が必ず対策を練ってくる。愛知の星もいるし、このままでは危ないかもしれない。僕が尊敬する山王がそのまま出てくる秋田は当然エグい。ヤツらのゾーンプレスを突破して、なおかつヤツらより点を取るには圧倒的なオフェンス力がいる。それは山王を倒した湘北を見ても明らかやった。なんせ豊玉を後半点の取り合いで逆転したチームでしたから。」

岸本(野郎、、今さら蒸し返しやがって、、)

土屋「ルカワは1年にして一流のエースやったし、あのバテバテのシューターもエグかった。」

豊玉勢(ルカワ?誰や?)

土屋「他のヤツも当然凄かったが、神奈川にはそんな湘北と準優勝の海南がおる。去年のインターハイで豊玉を追い詰めたイケメン君とか、週刊バスケットボールに載ってた髪の毛ツンツン君とかも気になりますし。(あと桂剥きのおっさん、あれは選手じゃないか。)」

土屋「ウチがインターハイで優勝できひんかったんは、何がなんでもボールをリングに入れるっていう力が足りひんかったんちゃうかなって思ったんです。博多にはもう点取らせてもらえへんかったから。ウチには得点で引っ張るキャプテンが要る。南も、頭思っきし打って、荒すぎるプレーはもうせーへんと思いますしね。」

岸本「てめー舐めとんか!」

土屋「このうるさいアホも、ウチにはないオフェンス力を持ってる。そのアホが絶対の信頼を置いてる南をキャプテンにすべきです。」

岸本「!」

土屋「まあ、近畿突破して不甲斐なかったら僕が代わりやりますけど。」

岸本「何やお前偉そーに!」

大栄監督「みんな異論はないか?」

一堂頷く。

南「!」

大栄監督「決まりだな。南君、よろしく頼むぞ。」

南「、、はい!」

土屋「、、ほな、いこーや」

大阪選抜、近畿ブロック大会へ!


近畿ブロック大会は、強豪洛安を擁する京都に苦戦するも、何とか大阪が1位通過し、いよいよ国体本戦へ!


10月 東北国体 宮城県

大阪 ユニフォーム:青
4:南 烈(キャプテン) SF 184cm
5:土屋 淳(副キャプテン) GF 189cm
6:淀川 達志 C 193cm
7:和泉 久哲 GF 186cm
8:岸本 実理 PF 188cm
9:板倉 大二朗 GF 183cm
10:矢嶋 京平 SG 180cm
11:岩田 三秋 C 190cm
12:茨木 剛 PF 188cm
13:守口 佑紀 SG 178cm
14:住吉 悟 PG 170cm
15:松下 由春 SF 180cm
監督:大栄学園の監督
コーチ:豊玉の新監督
マネージャー:大栄学園のマネージャー

神奈川 ユニフォーム:赤
4:牧 紳一(キャプテン) PG 184cm
5:藤真 健司(副キャプテン) PG 178cm
6:三井 寿 SG 184cm
7:仙道 彰 SF 190cm
8:高砂 一馬 C 191cm
9:花形 透 C 197cm
10:長谷川 一志 F 190cm
11:神 宗一郎 SF 189cm
12:宮城 リョータ PG 168cm
13:福田 吉兆 PF 188cm
14:清田 信長 SG 178cm
15:流川 楓 SF 187cm
監督:高頭 力
コーチ:田岡 茂一
マネージャー:相田 彦一

スタメン

大阪
PG:土屋
SG:板倉
 F  :和泉
 F  :南
 C  :淀川
控 :住吉・守口・矢嶋・松下・岸本・茨木・岩田

神奈川
PG:藤真
SG:三井
SF:牧
PF:仙道
 C :花形
控 :宮城・清田・神・長谷川・流川・福田・高砂


試合開始前

大阪勢「何やと!?」

大栄監督「うーん、牧がFに入っとる。」

土屋「予想外でしたね。でも、牧は一流のPGやけど、まわりを活かすよりも自ら中に突っ込んで体を張って点を取るタイプですからね、Fでもうまくやるでしょう。それよりもPGの5番は、、」

南「、、こいつはエースや。」

大栄監督「なに!?」

南「去年のインターハイ、うちはこいつを止められんかった。もともと止める気はなくて、こいつより点を取ればいいと思ってましたけど、こいつが最後までコートにおったらうちは負けてた。」

土屋「イケメン君か。」

南「あいつはエースやけど、視野が広くてパスもうまかった。突っ込んでくるばかりやないから、うちのディフェンスは後手後手になった。そういうやつです。」

大栄監督「なるほど。ゲームメイクは牧より上と判断したのか。しかし、やはり牧が最重要人物や。ゲームメイクを5番に任せる分、牧を止めるのはさらに難しくなるやろう。」

土屋「ですね。」

板倉「PGはあのドチビちゃうんかい。次会うたらけちょんけちょんにしたろ思とったんに!」

土屋「6番は山王戦で3P決めまくっとった湘北のシューター。神やなくてこいつを使ってくるということは、6番が調子よくて、バテてきたら神と交代するっちゅー作戦か?」

和泉「そうやろうな。牧がFにおるのにさらにあれだけ入るシューターがいると、うちのディフェンスがブレる。序盤は三井を止めるのが大事そうやな。」

南「湘北のCがおらん、、何でや、、」

大栄監督「大学で教えとる知り合いに聞いたが、噂によると彼は引退したらしい。深体大からスカウトを受けていたらしいが、何らかの理由で破談して、受験のために勉強してるとか。」

南「そうですか。うちにとっちゃラッキーですね。あいつはやりにくかったから。9番はどんなやつや、、」

土屋「たぶんあいつやな。かなりでかい。ヨド、お前に似てるな。」

淀川「似てるわけないやろ、、って、ほんまや!!」

南「ナガレカワもスタメンちゃうやんけ。牧はいいとして、7番はナガレカワより上なんか?」

岸本「こいつ、、」

南「どうした?7番を知ってんのか?」

岸本「ああ。テルオのツレのチビが俺に向かって言いよったんや。お前なんか仙道さんの足元にも及ばへんわ、って。ああムカつく!!はよ試合出してくれや!」

土屋(仙道をじっと見つめる)

土屋「ああ、そう言えば赤坊主は?」

淀川「たしかにいないな。」

岸本「あのアホンダラか!あんな素人くさいやつが国体出れるわけないやろ!」

土屋「いや、あいつ動きは変やけど、リバウンドは全国でも1,2を争うレベルや。流れを変える妙な力も持ってる。ああいうやつは敵にいると厄介やけど、おらんくてよかった。」

岸本「けっ、たいしたことねえわ!」

大栄監督「まずは、Fに入って動きが予測できない牧と、シューター三井に注意や。9番のCは淀川に任せる。牧がFに入ったことで、インサイドの高さとパワーではうちが不利。そこで、オフェンスは南、和泉、板倉で外から点を取れ。土屋はできるだけ偏らないように3人にうまくボールを回すように。」

スタメン「はい!」

土屋「神奈川は強い。海南に湘北、翔陽も全国常連校や。ツンツン頭の7番も。」

岸本「何や土屋ァ、怖気づいたんなら俺に代われや。」

土屋「あほ、武者震いや。」

南「神奈川のやつらに二度は負けん。蹴散らすだけや。試合を楽しんどったら、試合終わった時には俺らが勝っとる。行くで。」

大阪勢「おう!!」



神奈川

高頭「大阪はビックリしとるようだな。」

清田「かっかっか!当然!なんてったって牧さんがPGじゃないんだから!」

藤真(清田を睨んで)「それは、俺が牧より劣ってるっていう意味か?」

清田「え!?ああ、いや、そのお、、」

牧(清田にゲンコツ)「いらんことを喋るなお前は。」

清田「はい、すみませえん泣」

流川「どあほう、、」

清田「うるせえ!」

宮城(けっ、なんでえ、PGなら俺もいるってのに、牧だの藤真だの、いい加減にしやがれ!)

三井(ニヤニヤしながら)「まあ気にすんなって宮城!お前もどこかで出番が来るかもしれないだろ笑」

宮城「三井サン、スタメンだからっていい気になりやがって!三井サンがバテたら代わってやるよ!」

三井「ああ!?何だとお!」

流川「どあほうが3人、、」

三井・宮城・清田「何だとお!?」

三井「てめえだってスタメンじゃねえくせに!」

流川(イラッ、何で俺はスタメンじゃねーんだ、、)

花形「まったく、うちはガキばっかりだな、藤真。」

藤真(清田の一言でイライラ中)

花形(うっ、お前もか、、)

福田(1人でイライラしながらプルプル)

高砂・長谷川「はあ、、」

高頭(やれやれ顔で頭ポリポリ)

清田「神さんは何でスタメンじゃないんすかね?」

神「三井さんが調子いいからな、前半は三井さんでいくんだろう。たぶん後半は牧さんがPGにつくから、そのタイミングで俺も出るかもしれない。信長も出番あるといいな!」

清田「神さぁん!優しいなあ!」

田岡「仙道、福田。」

仙道「ん?はい。」

福田(プルプル)

田岡「仙道、お前が攻めどころだ。牧は当然マークが厳しいだろう。おそらく三井も、インターハイの山王戦のイメージが強いし、シューターだからタイトなマークがつく。だがお前はまだ無名だ。うちは混成チームで見ての通りさほど仲が良くない。だからこそお前が要なんだ。引き締めていけ。」

仙道「でも、うちはすごい人ばっかですよ、みんなが力を出せば、、」

田岡「お前がそんなんでどうする!覇気を持て覇気を!」

仙道「まいったなあ笑、まあ、頑張りますよ笑」

彦一「仙道さん!神奈川の勝利は仙道さんにかかってまっせ!ただ、大阪の5番は要チェックですよ仙道さん!大阪の5番は今年のインターハイベスト4の大栄学園のキャプテンの土屋さんです!ワイのチェックによると、仙道さんに似たプレーをする選手で、上背あるのにまわりを活かすんがうまいんですわ!ほんで、大阪の8番岸本!あいつだけは絶対に、、」

仙道「わかったよ彦一、何とかするさ。」

彦一(!ほんまかっこええで仙道さん!)

田岡「ふう、、福田。お前は優秀な選手だ。中2でバスケを始めて、陵南に入ってきた頃は1番ヘタで、謹慎期間もあったが、それでもお前はここにいる。大したやつだ。越野も植草も羨ましがってるぞ。スタメンに入れなくて悔しい気持ちはわかる。だが、ここが踏ん張りどころだ。国体チームにいるということは、お前の成長にとって大事なことだ。仲間から、相手から、盗めるものは全部盗め。そして何があってもいいようにいつでもコートに出られる準備をしておく。この経験が、今年の冬、はたまた来年、陵南が全国に行くための力になるんだ。」

彦一「そーですよ福さん!福さんはオフェンスの要!さらに上手なったら、絶対に誰も止められへん選手になりまっせ!」

福田「、、はい。」(ふるふる)

高頭(扇子パチン)
  「では、作戦を伝える。相手はオフェンスの豊玉とディフェンスの大栄の混成チームだ。ディフェンシブと言っても、この前のインターハイを見るに、大栄はかなり柔軟なチーム、特に5番の土屋はかなり戦いにくい選手だ。豊玉は強情な選手が多いチームだが、もし格上の大栄チームがあえて豊玉のサポートに回るような戦法を取れば、かなり厄介な相手だろう。実際秋田山王を倒して決勝に来てるしな。そこで、安西先生ではないが、奇襲をかける。」

海南勢「!?」

牧「監督、奇策は常々否定してませんでしたか?」

高頭「うむ。海南のようにチームワークを意識して練習を積んできたチームならそうだな。だが、神奈川は4校の混成で、個の力を重視したチームだ。弱小校からのし上がり、短期間で山王を倒すまでに成長した湘北に近いところがある。個の力が強いということは、目立った選手にマークがきつくなる。まずはお前だ、牧。そしておそらく外を警戒して三井。夏に結果を残した海南と湘北は警戒されて当然だ。だが、うちにはまだ戦えるメンバーがいる。藤真、仙道、序盤は君たちで攻める。花形はゴール下を死守だ!」

藤真・仙道・花形「はい。」

牧「なるほど。たしかにそれが確実ですね。」

三井「この三井寿にビビってるってか?まあ、当然だな。」

牧「ライバル愛知は倒した。今年の夏を制した福岡も既に散った。秋田も敗れた。その秋田を倒した大阪を倒せば、俺たちが全国1位だ。相手がどこであろうと、最後まで勝つ!行くぞ!」

神奈川勢「おう!!」




観客 ザワザワ、、

清田「お?なんだなんだ?」

岸本「何やうっさいのお!」

ゾロゾロ、、

愛知代表 4位
諸星 森重 名朋のおっちゃん etc.

福岡代表 ベスト8
島津(仮名) 田上(仮名)※ etc.

静岡代表 ベスト8
御子柴 湯船 etc.

※博多商大附属(インターハイの仮の優勝校)の選手で、オリジナルキャラクター。島津はPG、田上はC。上記サラシナチャンネルの動画を参考にしていますが、当該動画は現在削除または非公開になっており見れません。

河田兄「深津、どっちが勝つと思う?」

深津「予想なんて意味ないピョン。勝敗は最後までわからないピョン、、ピニョン※!」

河田兄(また間違えたな、、)

秋田代表 3位(3決で愛知に勝利)
深津 河田兄 野辺  松本 一之倉 河田弟 堂本監督 etc.

※井上先生自身が原作終了後を描いた「あれらか10日後」にて、深津が接尾語を「ピニョン」に変えたことが明かされている。

ズンズン

花道・ゴリ・木暮・彩子・晴子・安西先生・魚住・池上

野辺「お、赤坊主が来たぞ。もう坊主じゃないけど。」

ゴリ「秋田は負けたのか。沢北がいないとは言え、混成チームの大阪もかなり仕上がっているようだな。」

木暮「あの山王を倒してきた相手とやるのか、厳しい戦いになるな、、」

ゴリ「何を言ってる。俺達は山王に勝ったんだ。気後れしてる場合じゃないぞ。」

彩子「そーよ木暮先輩!なんてったって神奈川はうちに海南、翔陽、陵南のドリームチームなんだから!」

晴子「本当に、信じられない!」

花道「フン!海南だろーが陵南だろーが、オレがいないと、ヤマオーにもヤマオーを倒したやつにも勝てないだろーな!ハッハッハ!」

清田「おい!うるせーぞ赤毛ザル!そこで指くわえて見てろ!」

花道「ぬ、野ザル!ホケツのくせに偉そーに!」

清田「なっ!黙れ黙れー!」
  (俺だって活躍できるのにっ!)

流川「どあほう。」

池上「仙道はスタメンのようだな。」

花道「ぬ、センドー!」

魚住「当然だ。アイツは神奈川全体のエースだ。全国制覇をするためには、必ずアイツの力が必要になる。それより福田はどうしてる?」

花道「フン、フクスケめ。」

福田(ベンチでふるふる)

池上「だいぶイライラしてるな、、問題起こすなよ、、」

木暮「おい、三井がスタメンだぞ!」

花道「おお、ミッチー!」

赤木「アイツ、俺達が引退してからも相当猛練習してたらしいからな。」

木暮「宮城はベンチか。無理もないな、牧と藤真がいるんだ。」

花道「リョーちんもまだまだだな!」

赤木「流川もベンチだな。だが、どこかで使う場面は出てくるだろう。」

花道「けっ!ルカワ、、!」

晴子「流川君、、」

花道「なっ!ハルコさん!」

安西先生「桜木君、この数か月間、ケガでバスケットから離れて、感覚が衰えてくる頃だ。彼らのプレーをよく見て、盗めるだけ盗んでおきなさい。」

花道「フン!天才が盗むなど、言語道断!」

晴子「だめよう、桜木君!冬の選抜では桜木君に活躍してもらわないといけないんだから、しっかり学ばないと!」

花道「そ、そーすか、、?」

岸本「けっ、うっさいねんあの赤頭!」


ツカツカ、、

藤真(南の方へ歩いていく)

花形「!」

南「!」

藤真「あの時の悔しさを、俺は忘れない。お前らにも、海南にも、俺は負けない。覚悟しておくんだな。」

南「、、、」

岸本「何やお前!ケンカ売ってんのk」

土屋(岸本を止める)

岸本「何で止めんねや!ケンカ売ってきたんはあっちやぞ!」

土屋「ラッキーや。」

岸本「?」



アナウンス「ただいまより、第51回国民体育大会 バスケットボール 少年男子の部 決勝戦を行います。」

ピーッ!

ボール フワッ

パン!

長谷川「花形が勝った!」

三井、ボールを取り藤真へ

ゴリ「PGは藤真で来たか。監督としてじゃなくスタメンで出る藤真を見れるいい機会だ。」

大阪のディフェンスは一旦マンツー

マッチアップ 神奈川オフェンス

藤真ー板倉
三井ー和泉
牧 ー土屋
仙道ー南
花形ー淀川

ダム!

藤真、板倉を一瞬で抜き去る

板倉「!?」

守口「速い!」

藤真、一気にフロントコートへドリブル

スッ

仙道が南のマークを外す

魚住「仙道がボールをもらう気だ!」

藤真、チラッ

ギンッ!

仙道「!?」

藤真、そのままレイアップの体勢に

だが、淀川がブロックに飛ぶ

藤真(!?まずい、パs、、)

淀川「と見せて、パスや!」

バンッ!

藤真「!?」

南「あ、、」

土屋、パスカットされたボールを取る

土屋「速攻っ!」

ブン!

ダダダッ!

板倉、ボールを受け取りそのままレイアップ

大阪、先制

岸本「淀川てめえ!オレのマネしやがって!舐めとんのかコラァ!」

ゴリ・木暮「さっきのなんか見たことある気がする、、」

宮城「何やってんだ藤真!」

三井(おめーが言うな!)

牧「、、、」

仙道「ドンマイ!次、一本取りましょう!」

南「、、、」

土屋「、、、」


〜試合開始前〜

土屋「ラッキーや。」

岸本「!?どういう意味や!」

土屋「あのイケメン君、試合に集中できへんやろな。」

岸本「あ?今、俺らに負けんとか言うとったやんけ。」

土屋「あいつにとって今敵は俺らだけや。せやのに『海南にも負けへん』って、味方にまで対抗意識燃やしとる。たぶん牧をかなりライバル視しとるんやろな。南、ちょっとこっち来い。」

南「、、、」

土屋「おい!南!」

南「!、お、おう。」

土屋「あのイケメン君、本来はうまくパスを捌くやつやって言うとったけど、今日はワンマンで来るでたぶん。『周りに頼らずとも点を取れる、オレは牧より上や』ってプレーで見せようとしてくると見た。せやから、向こうの誰かがパスもらおうとしとっても、構わずブロックに行ってくれ。苦し紛れのパス出したらカット。ヨド、お前も頼む。」

淀川「了解した。」

南「、、」

〜〜


藤真、目をギラギラさせタイミングを見計らう

ダム!

茨木「また抜かれたで!」

藤真「!?」

淀川・土屋、藤真を囲む

藤真「くっ!」

藤真、仕方なく三井にパス

バンッ!

和泉、パスカット

藤真「くそっ!」

清田「だああ!どーなってんだ!!」

パシッ!

牧、和泉からスティール

藤真「!、、」

清田「おお!牧さん!さすがっす!」

土屋「ヤバい!」

牧、三井にパス

三井、3P

ガンッ

淀川、リバウンドを取る

三井「チッ、ちょっと緊張したかな。」

土屋「あぶな、、」

本当は、南が淀川とダブルチームで藤真を止めに行くはずだったが、南の様子を察し、一瞬の判断で土屋がダブルチームに行った

その結果、土屋がマークすべき牧がフリーになり、三井をマークしていた和泉がパスカットすることを読んだ牧がスティールに成功した

土屋、ボールをもらいに行く

土屋「ほな、1本じっくり!、、おっ!」

藤真、目をギラギラさせ土屋をマーク

神奈川ディフェンスもマンツー

マッチアップ 大阪オフェンス
土屋ー藤真
板倉ー仙道
和泉ー三井
南 ー牧
淀川ー花形

土屋(ふっ、もろたで。)

土屋、あえてさりげなく藤真が奪いやすい位置でボールをつく

藤真(今だ!)

パチン!

ピピーッ!

審判「赤5番!」

藤真「!?」

土屋(ニヤリ)

土屋はファウルを誘っていた。

三井「おいおい!」

牧「藤真、、」

花形「、、」

土屋、このスキに一瞬南のもとへ駆け寄る

土屋「南、何をビビっとんねや。あんなやつが怖いんか?はっきり言って、今のあいつはカモやで。」

南「、、ああ、、」

土屋「それとも、またエルボーの罪悪感にでもかられとるんか。」

南「!?」

土屋「もう終わったことや。あいつは交代して、お前はファウルもらって、済んだ話やないか。悪かった思うんは勝手やけど、試合に持ち込むんはちゃうぞ。それにな、今のあいつはお前にキレとんちゃうでたぶん。あいつに対してはわざとやなかったことぐらい、あいつもわかっとる。お前に対する怒りはついでみたいなもん。本当のところは、チームメイトであるはずの牧への対抗心で我を失っとるだけや。今のあいつはエースちゃうし、今のお前はエースキラーやない。気にすな。」

南「!」

南「せやな、すまん。切り替えるわ。」

土屋「、、オフェンス、頼むで。」

土屋、ボールをキープ

南「ガンガン点取るで!前半で15点差や!」

三井「なにっ!?」

牧「生意気な。」

土屋「フッ、せやなあ。」

ダム!

藤真、抜かれる

藤真「くそっ!」

仙道、フォローしようとするも、南・板倉は中へ

牧・仙道、切り込みからのパスを警戒

土屋中へは行かず、和泉へパス

和泉、3P

パスッ

神奈川0-5大阪

土屋「ナイシュ、和泉!」

和泉「おう!」

藤真、板倉を抜けず三井にパス

三井、和泉のタイトなディフェンスに一瞬止まる

藤真、すぐにボールを返すよう催促

和泉、藤真へのパスコースを遮ろうとするも、三井は牧へパス

藤真「くっ!」

ダム!

土屋「!?」

牧、土屋を抜き、仙道にパス

パスッ

仙道、ミドルを決め神奈川初得点

彦一「ナイスですよ仙道さーん!」

南「2点取られたらこっちは4点取るんや!」

土屋、藤真を抜き、牧がフォローに入ったスキに南へパス

南、神奈川ディフェンスをものともせずカットインからのミドル

神奈川2-7大阪

牧「藤真!しっかりしr」

仙道、牧を止める

仙道「藤真さん、ドンマイです。今は向こうに流れきてますけど、いつもみたいにパス捌いてくれたら、絶対うちに流れが来ます。藤真さんが捌いてくれないと、俺らは動けませんから。」

藤真「、、あぁ、、」

ゴリ「藤真の様子がおかしいな。手柄を焦ってるように見える。翔陽では見られない、混成チーム故の問題か、、」

花道「おい!ホケツを出すから負けてるじゃねえか!もっとマシなやつを出s」

ゴンッ!

ゴリ「お前は黙ってろ!」

河田兄「深津、対戦した後にこうして土屋を見るとどうよ。」

深津「あいつは本当にやりにくいピニョン。視野が広いし、全然ブレないピニョン。準決勝まで見た感じ、神奈川の7番も同じようなタイプだけど、エース寄りの7番に対して、土屋は自分を消して味方を活かせる。あいつのリーダーシップはかなり脅威だピニョン。」

堂本「土屋も神奈川の7番もオールラウンダーで、視野が広く味方を活かすのが上手いタイプだ。チームに精神的な安定をもたらす点も似ている。だが、集中力に欠けていた南を土屋はすぐに立て直したが、神奈川はまだ5番を立て直せそうにない。まあ、神奈川の7番はまだ2年生のようだから仕方がないが。」

ゴリ「本当なら牧が藤真を立て直したいところだろうが、おそらく藤真は牧に1番対抗心を燃やしている。それがわかっているからこそ、仙道は牧が藤真に声をかけるのを止めたんだろうが、仙道の声かけで藤真が立ち直るかどうか、、」

藤真、板倉を抜くも、南と淀川のダブルチームでまたもパスコースを限定され、三井へのパスを読まれてパスカット

和泉→南で3Pが決まる

ピーッ

藤真「!?」

高頭「交代だ。」

藤真「俺はまだやれる!」

高頭「気持ちはわかるが、一旦落ち着くんだ。」

藤真「あんたに、俺の気持ちがわかるんですか!」

長谷川「藤真ぁっ!」

藤真「!!?」

長谷川「いいから座れ。」

藤真「、、、」

スタッ

宮城「ふぅ、、」

花道「ぬ、リョーちん!」

木暮「藤真を下げて、宮城を使う気だ!」

ゴリ「牧をPGに持ってこなかったということは、おそらく藤真の交代は一時的なものだろう。宮城はつなぎだ。だが、このつなぎは大事だ。」

宮城「1本じっくり!」

板倉「おいおい!交代したかと思えばドチビやんけ!神奈川は人員不足かいな!」

宮城「はあ、、てめーのアホ面を見るまでもなく抜いてやるよ。」

板倉「何やて!?」

宮城「ほな、いくで?」

ギュン!

板倉「うおっ!?」

守口「速え!さっきのやつよりさらに速いかもしれへん!」

土屋、リョータを遮ろうとするが、

スッ

パシッ

宮城「おっさん、頼むぜ。」

牧「!」

牧、圧倒的なドライブからの得点

ピーッ!

審判「青6番!バスケットカウント・ワンスロー!」

淀川「しもた!」

高砂「さすがだ!牧!」

牧「、、誰がおっさんだ。」

彩子「リョータ!ナイスアシスト!」

宮城「アヤちゃん!!」

深津「一本じっくり、なんて言って、あいつ嘘つきピニョン。でも、そういうのも含めてあいつは他とは違うやりにくさがあるピニョン。」

牧、冷静にフリースローを決める

高頭(ふう、、)

牧(少しは空気がよくなったな。宮城はオフェンスではかなり助かる。だが、ディフェンスは、、)

バッ!

宮城「!!くそっ!」

土屋、宮城の遥か上から南へパス

南、得点

宮城、板倉をまたも抜き、牧が得点

板倉、茨木と交代

宮城「ざまあ見やがれ!」

板倉(くそっ、ドチビが!)

その後はお互い得点を少しずつ重ねるも、大阪優位は変わらず、点差が少しずつ広がってきた。

理由は、

①大栄がマンツーをやめて、ボックスワンを敷いたこと

宮城に外がないことを見抜かれ、中を堅固に固めつつ、土屋が三井をマークして外を封じた

②リバウンドで大阪が競り勝っていること

花道、ゴリ、魚住と、リバウンドの強いプレーヤーを欠いている神奈川は、淀川のテクニカルなプレーでリバウンドを取れずにいた

花形をうまく外に釣り出しながらスクリーンアウトを確実に行う淀川と茨木がリバウンドを取るため、南、和泉は積極的に3Pを打つことができた

前半10分
神奈川11-22大阪

ビーッ

神奈川、タイムアウト

高頭「どうだ、大阪は強いか?」

牧「かなり強いです。堅固な守りを敷きながら、土屋がスコアラー達にうまくボールを回してますよ。」

高頭「仙道、まだ余裕はあるか?」

仙道「ディフェンスが少し外に広がってくれれば、何とか。」

高頭「そうか。三井はきついマークにあっているからな。だが三井、今はあれでいい。必ずチャンスが来る。焦りは禁物だぞ。」

三井「はい。」

藤真「、、、」

花形「藤真、、」

藤真「お前は悔しくないのか、、俺達は、国体に選ばれても、チームの引き立て役に甘んじてきた。決勝のこの場で、俺はスタメンに選ばれたかと思えば、期待されたのは仙道へのお膳立てだ。牧はPGでもFでも得点を求められるのに、、俺は牧の代わりですらなかった。これが悔しくないのか!!」

花形「、、すまない、藤真。」

藤真「!?」

花形「俺たち翔陽メンバーは、お前を特別視しすぎていた。監督のいない翔陽で、人一倍ゲームメイク力のあったお前が監督を兼任してくれているのに、甘えていたんだ。いつしか、俺達とお前は別だと、分けて考えていたのかもしれない。同じ高校生なのに、同じ選手なのに、俺達はお前を特別扱いしすぎていた。だからこそ、湘北戦でお前が最初にコートに立とうとした時、俺はお前を止めてしまった。あの時にお前がコートに出ていたら、俺達は勝っていたかもしれない。俺達はスタメンとしてプレーをする選手、お前はギリギリまで残しておく選手兼監督、そう決めつけていたせいであんなことに。お前は監督である前に、俺達と同じ選手だ。俺達とお前は同じなのに、お前ばかりに打倒海南を背負わせすぎた。俺達は、バスケが好きで、バスケで勝つことを目指して3年間やってきた。自分の役割を果たして、目の前の試合で勝つ。それが1番のはずなのに、お前に背負わせすぎたせいで、大事な国体決勝戦まで、打倒海南にこだわるようにさせてしまった。すまない。これからは、同じ目線で、目指すべきものを共有していこう。」

藤真「、、うっ、、」(涙を流す)

長谷川「藤真、悪かった。打倒海南は、試合に勝って神奈川を制する上での結果だ。今は海南を味方として、全国の舞台で戦ってるんだ。一緒に勝ちを目指そうぜ。」

藤真「、、そう、、だな、、」(涙をぬぐう)

高頭「藤真よ、気持ちは定まったか?」

藤真「、、はい、監督。さっきは失礼しました。もう大丈夫です。」

高頭「うん。よし、ではスタメンに戻すぞ。当初の作戦通り、藤真と仙道で攻める。少しディフェンスが広がってきた時、総攻撃だ。」

牧・藤真・三井・仙道・花形「はい!」

高頭「宮城、よくつないでくれた。点差がついたのはお前のせいじゃない。むしろよく食らいついてくれた。」

宮城「、、はい。」(ちっ、俺の出番はこんだけかよ!)

ビーッ!

審判「両チーム、コートに戻ってください。」

藤真「仙道。」

仙道「?」

藤真「悪かったな。今からでも遅くない。やるぞ。」

仙道(ニコッ)「おっけーです。」

田岡(藤真、あいつはあいつにしかわからない苦悩があったことだろう。だが、いつだって苦悩を打ち破るのは、大切なチームメイトだ。花形と長谷川が藤真を立て直してくれた。さて、ここからは仙道の見せ場になるぞ。)

ゴリ「思ったより早く藤真に戻してきたな。」

花道「まーたホケツか。このままじゃ負けちまうぞ。」

魚住「いや、藤真の顔が変わった。本来のエースガードである藤真の顔に。何より、仙道の顔までよくなった。これは、、」

ピーッ!

大阪は、神奈川がスタメンに戻したことで、ディフェンスをマンツーに戻した

藤真ー和泉
三井ー土屋
牧 ー茨木
仙道ー南
花形ー淀川

ダム、ダム

藤真、ボールをゆっくりつく

土屋(あいつ、目つきが変わりよった)

ダムダムッ!

藤真、素早いクロスオーバーで和泉を抜き去る

和泉「まじかこいつ!?」

南・淀川、序盤の作戦同様に藤真をダブルチーム

藤真(ニヤリ)

藤真、3Pラインより手前でジャンプし、淀川の上から高くシュート

岸本「ムリや、入りっこないで!」

ガンッ!

ボールはリングには当たらずバックボードに当たり跳ね返った

ガスッ!

全員「!!??」

仙道、バックボードで跳ね返ったボールをそのままアリウープ

岸本「なっ、なんじゃそりゃああ!!」

観客「おおおおお!!!」

彦一「ア、ア、アンビリーバブルやあ!!!!!」

藤真の放ったボールはシュートではなかった

仙道の天才的なセンスを信じて放ったパスだった

土屋(こ、こいつは!?)

南(な、、)

牧「まったく、こいつらは笑」

花道・宮城「おい!それはオレのだろーが!!」

福田(いや、俺のだ、、!)

彩子「たったワンプレーでここまで空気が変わるなんて、、」

仙道「藤真さん、ナイスです!」

藤真「本当にやってのけるんだなお前は笑」

和泉・淀川・茨木「、、、」

土屋(おいおい、みんなあのプレーにビビりすぎやで、、このままやと流れを持ってかれる、、)

南「パス!」

土屋「!」

土屋、藤真の上から南へパス

南、シュートフェイクを入れ、ドライブからのレイアップ

南「同じ2点や!」

土屋「!」

深津(ピクッ)

南「手数は俺らの方が上や!気にすな!」

岸本「その通りや!攻め攻め!」

淀川「、、そーやな。」

茨木「うっしゃあ!ワイらも点取るで!」

和泉「お前にそんなことを言われるとはな、俺らも落ちたもんや笑」

南「ふん、言うてろ。」

土屋(ふっ、南に助けられたな。)

しかし、藤真は止まらない

藤真、三井を使いながらボールを運び、パスフェイクを入れ切れ込む

淀川「させるか!」

ビッ!

バシッ

土屋「なに!?」

藤真、初めて牧にパス

牧「いいパス出すじゃねえか。」

ダムッ!

茨木「!?」

清田「抜いた!」

淀川、茨木が抜かれることを予想しフォローするが、

キュッ!

牧、巧みなフットワークでかわし得点

神「さすがだな、牧さんは。藤真さんのパスも完璧だった。」

次の大阪の攻撃は決まらず、藤真、再びドライブで切り込む

ビッ!

バシッ

花形にボールが渡る

淀川「牧にやられても、お前にやられるわけにはいかんねや!」

フワッ

スカッ

淀川「!?何や!?」

花形、フェイダウェイ

パスッ

魚住「藤真のドライブからの花形のフェイダウェイ、翔陽の必勝パターンだ。」

神奈川17-24大阪

大阪、差を縮められないよう得点力を上げるため、茨木を下げ板倉に戻す

インサイドのディフェンスが弱まったことにより、ここから藤真→仙道のラインで得点を量産。

藤真はある程度アシストを続けると、機を見て自らシュート

一方、大阪も南、和泉、板倉により順調に得点を重ねる

前半残り2分半
神奈川29-38大阪

諸星「広げられていた点差は止まった。間違いなく神奈川の動きがよくなった。でも大阪も順調に得点を重ねてるから、追いつくまでにはいかないな。」

島津「神奈川の攻めは強いばい。普通の強豪チームならもっと神奈川に点を取られとるやろうたい。大阪の大栄メンバーはディフェンスがいいけん、あの程度で済んどる。」

御子柴「豊玉のオフェンスが効いてるな。神奈川の猛攻から何とか逃げ切れているのは、豊玉のオフェンス力があってこそだ。」

松本「、、そろそろあいつが動くかもしれない、、」

木暮「三井、、」

三井はこれまで、和泉や土屋という外のディフェンスがうまい選手に徹底マークされており、得意の3Pは序盤の牧からのアシスト以外、打つことすらできていない

しかし、三井は南から1つ、板倉から1つ、和泉から2つファウルをもらうことに成功しており、大阪の猛攻の流れを止める役割を十分に果たしていた

三井がディフェンスに徹していた理由は3つ

1つは、大阪が三井を警戒していたこと

牧と三井には厳しいマークがついていたため、藤真→仙道 or 花形で攻めた方が効率がよかったのである

2つ目は、体力の温存

あれから練習を重ねたとはいえ、これだけ徹底マークをされていれば、振りほどくのには体力を消費する

そして3つ目、"絶好のタイミング"を待つためである

ビッ

パシッ

和泉「しもた!」

スパッ

藤真からアシストを受け、三井が3Pを決めた

仙道と花形に気を取られ、大阪のディフェンスが自然と中に気を取られていたスキを突いた。

淀川が2点取り返すも、神奈川は仙道にボールが回る

南(止めるっ!)

フワッ

仙道、レイアップの姿勢

ブンッ!

大阪勢「!?」

仙道、三井へのキラーパス

三井、またしても3Pを決める

彦一「アンビリーバブルやあ!!何でそないなパスが出せるんやああ!!」

岸本(あ、あいつ、、どこに目ついとんねや、、ムカつく、、)

南(くそっ、この仙道とかいうやつ、動きが読めへん、、ナガレカワとはまた違うタイプのエースか、、)

田岡「俺は夏に湘北戦で経験したからわかるが、前半終了間際の連続3Pは相手にとってダメージが大きい。完璧なタイミングでパスを出した藤真と仙道あってこそだが、欲しい時に決められる三井はやはり持っている。しかし、仙道はやはり天才だ。俺は鼻が高いぞ。(ニヤリ)」

前半残り10秒

藤真、一気にインサイドに突っ込む

仙道と三井へのマークが厳しくなる

ビッ!

南「あっ!」

藤真、自らシュート

パスッ

ビーッ!

南(やっぱりこいつは強敵やった。敵ながらええ選手や。)

長谷川「おつかれ、藤真。」

高頭「よし、追い上げムードだ。藤真、よくやった。」

藤真「、、ありがとうございます!」

前半終了
神奈川37-43大阪


田岡「高頭、後半もメンバーはこのまま行くつもりか?」

高頭「、、いや、試したい作戦があるんですよ。」

田岡「奇遇だな。俺も提案したい作戦があってな。」

高頭「そうですか。では、田岡先輩の作戦から聞かせてもらいましょうか。」

田岡「ふん、いいだろう。」


花形「ふう、、」

仙道「大丈夫すか、花形さん」

花形「ああ、、まあちょっと、、想像異常に、、疲れてはいるな、、」

牧「無理もない。普段の翔陽のような戦い方じゃなく、インサイドもかなり動き回ってるからな。お前に似たあの淀川ってやつの動きも厄介だ。」

花形「できるだけ仙道が切れ込むスペースを、、作りたいとは思ってたけど、、思ったほど作れなかった、、もっと点を取ってもらうつもりでは、、あったんだけどな、、」

藤真「俺が心配をかけたのも大きかったはずだ、悪かった。」

花形「はは、、ほんとに心配したぞ、、だけど、、後半の追い上げは、、お前のおかげだ、、」

清田「牧さん、ちょっと前半抑えすぎたんじゃないっすか!?もっと思いっきり突っ込んでも、、あっ、、」

藤真「清田、さっきは悪かったな。もう気にするな。」

清田「う、うす。」

藤真「宮城、助かったよ。」

宮城「けっ、あんなんじゃ全然試合に出た気がしねえよ。」

高頭「前半の反省会はそこまでだ。後半の作戦を伝えようと思う。」


大栄監督「みんな、前半お疲れ様や。まずはリードを保ったまま後半を迎えられたのは本当によかった。」

大阪勢「、、、」

南「すんません、15点差つける言うとったのに。」

大栄監督「まあ、最後追い上げられたのは仕方がない。神奈川は間違いなく強いからな、簡単に点差を維持することはできんやろう。せやけど、あの神奈川にうちは得点力で負けてない。南もかなり点を取ってくれた。まだ攻められるで。なあ岸本。」

岸本「当然や。俺が後半20点取ったる。」

大栄監督「その意気や。」

土屋「監督、後半神奈川はどう出てくるでしょうか。」

大栄監督「うーん。向こうのCがかなりバテてきとったな。淀川のディフェンスが効いとるみたいや。高砂に代えてくる可能性はあるな。」

南「ナガレカワも出てくるやろ。」

和泉「おい南、前から思とったんやけど、ナガレカワやなくてルカワやで。」

豊玉勢「えー!?」

和泉「、、まあええわ。んなことより、三井に替えて神で来るかもしれませんね。」

土屋「そうやねん、やけどあの三井、調子よさそうや。替えてくるかどうか、、」

大栄監督「神奈川は選手層がかなり厚い。せやけど、神奈川は4チームの寄せ集めや。チームの連携を取るんは難しいはずや。メンバーを変えてくるなら、そこの穴はつけるかもしれん。甘いパスは見逃すな。」

土屋「わかりました。」

大栄監督「得点に関しては、南、和泉、そして岸本、お前らに任す。オフェンス面では今んとこ何の問題もないから、前半同様でかまわん。それと土屋、牧へのマーク、より厳しくな。あいつは後半が特に強い。」

土屋「わかりました。」


ビーッ!

審判「後半の試合を始めます。両チーム、コートに戻ってください。」

牧「優勝するのはオレたちだ!」

神奈川メンバー「おう!!」

南「オレたちが天下取るんや!」

土屋・岸本・和泉・淀川「おう!!」

大阪
PG:土屋
SG:和泉
SF:南
PF:岸本
 C :淀川

両チーム、コートへ

土屋「!?」

牧「さて、暴れるか。」

岸本「あん?」

牧「止められるもんなら、止めてみろ。」

神奈川メンバー
PG:牧
GF:三井
GF:神
CF:流川
CF:仙道

大栄監督「牧に加えて、シューター2人とエース2人!?」

高頭「まさか、田岡先輩も同じ作戦だったとは、驚きましたよ。」

田岡「フン、まったくだ。まるでレッドクリフ※だな。」

※西暦208年、中国三国志の時代に勃発した「赤壁の戦い」のこと。圧倒的な曹操の軍勢に対し、兵の数約10分の1の孫権・劉備の連合軍が勝利した。孫権軍の大都督、周瑜と、劉備軍の天才軍師、諸葛孔明が火攻めという案で一致し、曹操軍を焼き尽くしたことで有名。

高頭「いやいや先輩、うちは弱小じゃないですよ笑、もともと強いですから。」

田岡「それもそうだな笑」

藤真「それに、勝負は最後までわかりませんからね。」

高頭・田岡「藤真!」

藤真「まあ、アイツらに託したからには、勝ってもらわないと困りますが。」

高頭(ふう、まったく、一時はどうなるかと思ったが、いつもの藤真に戻ったようだな。)

田岡(藤真が監督の目に変わった。たしかに、藤真の言う通りだ。リスクもはらんだ作戦だからな。俺としたことがまた油断を、、これは改めなければいけないな。)

ゴリ「Cなしで大阪に挑むのか!?」

魚住「花形は苦戦していたからな、、俺達がいればまた違ったんだろうが、、」

花道「けっ、あのキツネめ、今さらのこのこ出てきやがって!神奈川は負けるぞ!」

安西「私が監督でも、このメンバーで臨んだでしょう。」

湘北勢「!?」

彩子「何でですか先生?たしかにすごいメンバーだけど、大阪のCは手強いし、197cmの花形でさえリバウンドをほとんど取れていなかったぐらいなのに、、Cなら海南の高砂もいるはずです。」

安西「そうだね。だけど、大阪の戦法は今のところ豊玉に合わせたラン&ガンオフェンスにマンツーマンのディフェンス。常に走り回っているから、普段はインサイドに固定の花形君では辛い場面があった。」

堂本「海南の高砂は走り合いに慣れてはいるが、どちらかというとやはり中を固めるディフェンシブな選手だからな。外から点を取れる選手の多い大阪を逆転するのには少し不安がある。」

名朋のおっちゃん「そこで、大阪の得点力をさらに上回るスコアラーで固めながら、Cの代わりに走れるエースFを2人入れたんだな。あのツンツン頭のセンスは前半で証明されたし、もう1人の流川とかいうやつも、全日本ジュニアで見たところ相当なFだ。おい、聞いとるのかヒロシぃ!」

森重「Zzz」

おっちゃん「あちゃー、寝とるがな!」

安西「流川君と仙道君なら、ディフェンスでも大阪のインサイドよりも速く戻れるかもしれない。オフェンスは言うまでもないね。それに、彼らがリバウンドを取れないとは、私は思っていない。」

木暮「なるほど、たしかに今の大阪を相手にするには一番のメンバーかもしれませんね。」

ゴリ「だが、牧と言えど、もともとチームがバラバラのエース集団を、Cなしでまとめきることができるでしょうか?」

安西「うん。そこが問題だ。大阪の5番の子、彼がそのスキを見逃さないだろうね。彼が神奈川の弱点に気づいて対応し始めるまでの間に、どれだけ得点を重ねられるかが勝負だ。」

晴子「流川君、、」

花道「ぬう、ルカワめ、、」

清田「流川の野郎、ヤツが活躍するのは癪だが、俺を差し置いてコートに立つんなら、それだけの動きをしてもらわないと困るぜ!」

牧「止められるもんなら、止めてみろ。」

土屋「、、、みんな、ディフェンスはマンツーであたれ。」

淀川「お前か、ジャンプボールは。」

流川「、、、」

審判「後半戦を始めます。」

ビーッ!

バシッ!

大阪勢「!?」

流川、身長8cm差の淀川に余裕で競り勝つ

彦一「な、なんちゅージャンプ力や!あれは桜木さんにも引けを取らんで!」

花道「おのれルカワ!!」

ゴリ「あいつが入部して初めての部内戦でも、ジャンプボールは俺と互角だったぐらいだ。当然の結果だ。」

神、ボールを受け取り牧へ

大阪ディフェンス マンツーマン
牧 ー土屋
三井ー和泉
神 ー南
流川ー淀川
仙道ー岸本

土屋、牧のマークにつくが、

ダムッ!

土屋「!?」

牧、一瞬で抜き去る

和泉「土屋が抜かれた!?こうもあっさり!?」

大阪、すぐに中を固めに向かうも、

ビッ!

牧、流川へパス

淀川「くっ、間に合わへん!」

ガスッ!

流川、豪快なダンク

花道・清田「あああああ!!💢」

観客「おおおおお!!」

仙道「まったく、派手なやつだ笑」

牧(お前が言うな。)

彩子「前半出れなかった分、フラストレーションが溜まってたのね。晴子ちゃん、流川、暴れるわよ(ニヤリ)」

晴子「る、流川君♡(目が♡)」

花道「ハ、ハルコさん!?」

親衛隊「ル・カ・ワ!ル・カ・ワ!L・O・V・E・ル・カ・ワ!!」

木暮「い、いつの間に汗」

洋平「親衛隊に先越されたか笑」

花道「!?洋平!お前らまで!」

高宮「よお花道!流川が活躍してイライラしてるとこだろ!」

ゴスッ!

高宮、花道の頭突きをくらい煙が出る

大楠「おいおい、ほんとにイライラしてる時にからかったらそうなるだろーよ笑」

野間「あら、もう後半じゃねーか。洋平のバイクが遅えから遅れちまったじゃねーかよ。」

堀田「お前ら、またあのちっこいバイクで4人乗りか?」

高宮「おっ、番長!」

堀田「みっちゃんは当然出てるんだろうな?」

木暮「前半から出てるよ笑」

堀田「何ィ!?俺としたことが、前半応援しそこねたぞ泣、今からでも遅くない、旗を掲げろ!!」

高嶋たち「おう!徳ちゃん!」

魚住「おい赤木、湘北の応援は何でいつもこうなんだ。」

赤木「知らん!まったく、バカばっかりだ!」

大阪オフェンス

土屋「!?」

岸本「な、なんやて!?」

牧と神、土屋へのダブルチームでプレス

赤木「ど、どういうことだ!?」

〜〜

ハーフタイム

高頭「、、ということで、オフェンスは牧を起点に、とにかく自由に動いて点を取りまくれ。大阪に得点力で真っ向勝負だ。」

後半メンバー「はい!」

高頭「それとディフェンスだが。後半が始まってから少しの間、ゾーンプレスで行く。そして、牧、神、お前たち2人で土屋にダブルチームでつけ。」

牧「!?」

神「監督、どういった狙いですか?混成チームでプレスはなかなか厳しいのでは?それに、南や和泉ではなく土屋をダブルチームというのは。」

高頭「うん。やつらの得点力を馬鹿にならんが、やはり脅威なのは土屋のゲームメイクだ。大阪の頭脳は間違いなくあいつだ。後半、うちはオフェンスに力を入れて一気に逆転を図るが、その分大阪にもスキを与えることになる。そこで、土屋を混乱させたい。大阪のオフェンスの起点となる土屋が、予想外のプレスとダブルチームでパスが出せなくなり、さらにうちに点を取られまくって追いつかれそうになれば、さすがに土屋も焦るだろう。彼に操られることで普段以上の力を発揮している豊玉のスコアラー達も焦り始めるだろう。」

牧「なるほど。プレスは不完全でも、司令塔である土屋のメンタルを潰しにいくために最初だけ試すということですね。」

高頭「そういうことだ。」

〜〜

キュッ!キュッ!

牧と神、土屋のパスコースを塞ぐ

三井、流川、仙道も、土屋からのパスをカットできるように懸命に動く

ダムッ、ダムッ、

土屋「、、、」

矢嶋「あかん!もう5秒経つぞ※!何とかせえ土屋!」

※オフェンスは8秒以内にバックコートからフロントコートへボールを運ばなければならない。

ダムッ、ダムッ、

土屋「、、、」

岩田「あかん、もうだめや、、」

スッ、、

ダム!

牧「な!?」

神「に!?」

パシッ

土屋、残り2秒で牧の股下を通し、和泉へパス

ダムダムッ

三井「しまった!」

スパッ

和泉、一気にボールを運びそのまま得点

高頭「な、なんということだ!」

仙道「、、すげえパス、、」

赤木「大阪の5番、あの予想外の展開から、たったあれだけの狭いパスコースに味方が入ってくるのを冷静に待って、よりによって牧の股下を通しやがった!」

土屋「止めれるっちゅーなら、止めてみい。」

牧「、、なんだと?」

普段からのチームメイトである神とダブルチームをしかけたにもかかわらず、よりによって自分の股下を通されたことは、牧にとって屈辱だった

牧「、、上等だ。」

深津「あれ、うちもやられたやつだピニョン。」

一之倉「そうだ。まさか俺たちのディフェンスをあんな形で破られるとは。まさに針の穴を通すようなパスだ。」

高頭(くそっ、土屋め、そう簡単に揺らぐようなやつではなかった。)
「プレスはやめだ!ダブルチームも解いて、マンツーでいくんだ!」

神奈川ディフェンス マンツー
土屋ー神
和泉ー三井
南 ー牧
岸本ー仙道
淀川ー流川

神奈川の奇策は失敗に終わった。

しかし、神奈川の猛攻を止めるには至らなかった。

住吉「またや!また流川や!」

パサッ

松下「今度は牧がそのまま突っ込んできた!」

パサッ

ダムダムッ

パシッ

守口「次は神や!」

南「そろそろお前に来る思たで。」

神「!」

岸本「いいぞ南!びたーっと張り付いとったらそいつは打たれへん!」

牧「、、甘く見られたな、神。」

トンッ

南「!?」

ビッ

スパッ

和泉「ステップバック!?」

茨木「いやいや、今最初から3Pラインより外やったで!?」

神「よし!」

清田「かーっかっかっか!見たか!神さんはなあ、フロントコート全部がシュートエリアなんだよ!」

牧(、、まあそれは言いすぎだが、神は神奈川、いや、全国一のシューターで、神奈川の得点王。そして、インターハイ準優勝海南の「次期キャプテン」だからな。そう止められるもんじゃない。)

三井(こいつ、年下のくせになんて度胸してやがんだ、、あれだけタイトにマークされてなお自ら3Pをあんな離れたところから打つって、イカれてんだろ!)

魚住「神を止められるのは、お前とそこの身体能力バカぐらいだな。」

池上「まあな。」

花道「誰がバカだとお!?このボスザル!」

ゴスッ!

赤木「座って見てろたわけが!」

花道「ぐう、殴らなくてもいいのに泣」

池上「神はどこからでも打ってくる。タイトにつけば打ってこないなんて思ってるようでは神を止めることはできない。どこから狙われても止めてやるっていう『しつこさ』が大事なんだ。」

神奈川46-47大阪

花形「1点差だ!とらえたぞ!」

土屋(まずいな、、神奈川の得点力がうちを完全に上回っとる、、せやけどそんなにうちと神奈川に実力差はないはずや。何か弱点があるはずや、、)

淀川が2点返すも、

ビッ

パシッ

岸本「三井や!」

和泉(あかん!牧のペネトレイトでどうしてもスキを作らされる!)

三井、3Pを放つ

三井(チッ、これは入らねえ!)

ガンッ

岸本「外れた!うおっ!?」

仙道、スクリーンアウトで岸本のリバウンドを阻止

バチン!

花道「!?」

淀川「なっ!?」

流川、リバウンド

淀川「た、高え!」

ダンッ

ビッ

パサッ

流川、着地後すぐさまゴール下を決める

三井「流川、すまねえ。」

流川「うす。」

安西「ほお、いいリバウンドですねえ。」

花道「、、」

土屋「南!」

ビッ

パシッ

南、牧から距離を取りすぐさま3Pの姿勢

牧「打たすか!」

牧、信じられないスピードで南に詰め寄る

南「!?」

南のシュートフォームが乱れる

ガンッ

バシッ

ゴリ「まただ!」

流川、リバウンド

花道「ぐぬぬぬ、、」

安西「彼は君のプレイを見てさらに成長しましたね。」

湘北勢「!?」

ゴリ「それは、流川が桜木からリバウンドを学んだと!?」

花道「!?」

安西「ほおっほっほっ。」

〜〜

全日本ジュニア合宿※にて

※インターハイ終了後、晴子からリハビリ中の花道への手紙で、流川が全日本ジュニアの合宿に参加していたことが明かされている。

牧「よう、流川。」

流川「!、、うす。」

牧「湘北からはお前1人か。」

流川「そうですけど。」

牧「そうか。『桜木』はどうだ?ケガは?」

流川「、、知らねえっす。」

牧「はは、お前ら仲悪いからな笑、だが、国体メンバーに『桜木』が入れなかったのは残念だ。赤木も魚住も引退するなんて言うから、インサイドプレーヤーは1人でも多く欲しかった。"リバウンド王"もあながちハッタリじゃないらしいからな笑、まあ、神奈川からこの合宿に来てるのは俺と神とお前だけみたいだな、よろしく頼むぜ。」

流川「、、うす、、」


河田兄「お、湘北の流川だな。よろしく!」

流川「!、、うす。」

河田兄「湘北からはお前だけか。負けたうちからは4人来てるのに、何か変な感じだ。」

流川「、、」

野辺「おいおい、湘北の流川じゃねえか。お前にダンクかまされた時に手首痛めたんだぞ!」

流川「、、そーすか、、」

河田兄「"そんなことより"、『赤坊主』はどうした?あのケガじゃあしばらく復帰は難しいのか?」

流川「!、、」

野辺「あの『赤坊主』、ありゃ変なやつだが"大したやつ"だった。"リバウンド"に自信のあった俺が、途中から"リバウンド"取れなくなったからな、まだまだ練習しないとって思ったぜ。で、あいつはどーなんだ?大丈夫なのか?」

流川「、、知らねーっす。」

河田兄「知らねえってなんだよ笑、チームメイトに興味がねえのか?笑、さては、孤高のナルシストだべ?沢北みたいな!」

深津「あいつはもっとおしゃべりだピョン。」

松本「おーい、監督が呼んでるぞ!」

深津「わかったピョン。流川君、よろしくピョン。」

流川「、、うす、、」


諸星「お、流川君。」

流川「!、、うす。」

諸星「インターハイで対戦してから、こんなにすぐまた会うことになるとは。うちもあの後海南に負けて、ベスト4を逃した。君にとっても、牧は宿敵だろ?この合宿で、あいつにギャフンと言わせてやろうぜ!」

流川「うす。」

諸星「しかし、あの時『赤坊主』が出られなかったのは不運だったな。うちはインサイドに高さがないのが課題だった。赤木君だけでなく彼もいたら、"リバウンド"はうちはほとんど取れなかっただろう。」

流川「!?、、」

諸星「まあ、それ以上に、山王とあたった直後にうちとあたったことが1番の不運だったけどな(ニヤリ)。まあとにかくよろしく!」

流川「、、うす、、」

諸星「あ、それと、名朋の森重に気をつけろ。お前と同じ1年で、この合宿の参加者で1番デカいやつだ。ケガしないように、一応な。」

流川「、、うす。」


御子柴「お!流川じゃねえか!合宿じゃ世話になったな!」

流川「!、、うす。」

御子柴「赤木はいねえのか?」

流川「キャプテンは引退したっす。受験とかなんとか。」

御子柴「まじか!?もったいない、、うちは今Cの育成中でな。インターハイで対戦した名朋の1年Cにやられちまったから。赤木にアドバイス聞こうと思ってたんだが、、」

流川「そーすか。」

御子柴「そう言えば、この前の週刊バスケットボール見たけどよ、山王を倒したんだってな!凄えぜまったく。だけど、うちと合宿した時、あんな『赤頭』いなかったよな?なんでいなかったんだよ!」

流川「!?、、あいつ素人なんで、、」

御子柴「素人!?素人なのか?山王の野辺相手に"リバウンド"も結構取ってたって記事に書いてたぞ!結構注目の選手だったみたいだし、、」

流川「、、そーすか、、」

御子柴「まあ何にせよ、合宿のよしみみだ、よろしくな!」

流川「、、うす、、」


名朋のおっちゃん「お!これはこれは山王王朝を倒した、えーっと、湘北?の、えーっと、何君やっけ?」

流川「!、、流川楓っす。」

おっちゃん「おー、流川君。山王を倒して1年でこの合宿に参加するっちゅーのはえらいことやな!そこでちょっと紹介しとこうと思って。おーいヒロシぃ!」

森重「なんだおっちゃん?」

流川(!、、こいつか、でけえ、、)

おっちゃん「彼は流川君だ。この前のインターハイ、山王戦見たろ?半分ぐらい寝とったけど。その山王に勝った湘北の1年エースだ。」

森重「ふーん。よろしく。」

流川「うす。」

森重「あいつは?『赤い』の。」

流川「!?」

おっちゃん「お前なあ、『赤い』のしか覚えとらんのか。たしかに"リバウンド"でチームにいいリズムを作っとったけど、お前はそんなんもわからんとただ目立ってたから覚えとるだけだろーが。そろそろ見て学ぶことも覚えたらどうだ?」

森重「だって、あの『赤い』やつ"面白そう"だったから。」

流川「くっ、、」

おっちゃん「まあこんなやつだ。まだなーんもわかっとらん1年坊主だけど、インターハイでちっと注目されるぐらいには存在感のあるやつだ。仲良くしてやってくれ。よろしくな。」

流川「、、うす、、」


流川はこれまで感じたことのない気持ちになっていた。

花道の活躍がチームとしてプラスに働いている場面が増えてきていたのは流川も実感していた。

嫌いではあるが、それとなく花道を認めている自分がいることにも気づいていた。

しかし、他人から言われるのは別だった。

全国レベルの選手達が、自分のこと以上にこぞって花道の話をする。

しかも、チームとしてではなく個人として、花道の「リバウンド」は既に全国屈指のレベルだと認識されていたのである。

花道が話題に上がるのは、赤い坊主頭で異常なほどの身体能力、もの珍しさもあったのだろう。

自分だって、ちやほやされるためにバスケをやっているんじゃない。

しかし、何にせよ、下に見ていたはずの花道の方が注目されていたことに、なんとも言えない嫉妬を感じていた。

他のチームからも警戒されている同期の森重までもが、自分より、ここにいない花道に興味があるなんて、想像もしていなかった。

流川「何でだ、、あのどあほうが、、」

流川はそれから、リバウンドの練習を繰り返した。

赤木のいない湘北で、流川のリバウンドの練習相手はいなかったが、その分できるだけ合宿中に全国区のインサイドプレーヤー相手にリバウンド勝負をしかけた。

田上「うおっ!?こいつ!」

流川(取ってやる!)


野辺「させるか!」

流川(取ってやる!!)


森重「っし〜〜」

流川(くそ、、取れねえ、、)

オフェンスの鬼流川が、泥臭く190cm超のCにぶつかっていく姿は、鬼気迫るものがあった。

合宿から帰ってからは、流川は翔陽戦以降のビデオを繰り返し見た。

屈辱に耐えかねて、何度も見るのを辞めかけたが、それでも流川は花道のリバウンドを観察した。

自分よりもデカくポジションも違う赤木よりも、同じFで体格の近い花道のプレーを見た方がいいと知っていたからである。

そして、流川は才能を開花させた。

〜〜

ビッ

仙道「おっと、しまった。」

仙道、すかさずスクリーンアウト

ガンッ

ブワッ!

仙道(!、流川!)

流川(そこで見てやがれどあほう!!)

花道「!?」

バチンッ!

ガスッ!

和泉「リ、リバウンドしてそのままダンクしよった!!なんちゅーやつや!」

観客「おおおおお!!逆転だあ!!」

神奈川50-49大阪

流川、花道の方へ視線をやる

流川「てめえにできて、俺にできないことなんかねえ。」

花道「ぐっ、、!」

洋平「お、おい、どうしたんだ流川、、」

晴子「る、流川君、、」

花道「じっ、じっ、上等だコラァああああ!!」

ガシッ

ゴリに抑えられるも暴れる花道

彩子「こら!桜木花道!背中悪化するわよ!」

花道「ぐぬぬぬ、、」

安西「君が彼を成長させたんですよ。」

花道「、、オヤジ、、」

安西「また差が開いたね、桜木君。今はケガを完治させて、確実に早くコートに戻ってくることだ。かつての三井君のようになってはいけない。三井君は既に一流の選手だったが、君はまだ未熟な秘密兵器のまま。復帰が延びれば延びるほど、彼に追いつける可能性は低くなる。彼に抜け駆けされたくなかったら、まずはケガを完治させなさい。わかったね?」

花道「、、おう。」

晴子「桜木君、今は焦らないで。治ったら、思いっきりバスケットを楽しめばいいんだから!」

花道「ハルコさん、、!」

岸本(淀川にリバウンドで勝ち続けてるナガ、、ルカワもすげーが、ルカワがリバウンドを取りに行く時、この仙道が必ず俺を止めに入る、、今も、自分でミスを自覚してすぐにフォローしよった。こいつ、エースでありながらサポートも完璧や、、くっそ、、あの記事も、あのチビの言うとったことも、あながちハッタリやなかった、、なんちゅーことや、くそっ、このままやられてたまるか!!)

ダムッダムッ

土屋「、、、」

スッ

淀川、パスを要求

ビッ

パシッ

流川、淀川をマークするが、

ビッ

パシッ

淀川、瞬時の判断で和泉へ

三井「させるか!」

三井のディフェンスを受け、和泉は岸本へパス

速いパス展開に、仙道が一瞬遅れる

岸本「やられてばっかでたまるか!」

しかし、仙道が追いつき、ブロックへ

岸本「ってんだ!!」

岸本、ダブルクラッチ

仙道「なに!?」

牧「こいつ!?」

三井「まじか!?」

パサッ

岸本、仙道を指差す

岸本「大阪が勝つんや!!」

土屋「!!」

南「岸本、、」

和泉(ニヤ)

淀川「ふん」(ニヤ)

仙道(ニコッ)「いいや、俺たちが勝つ!」

花道「けっ!チョンマゲめ、調子に乗りやがって。」

安西「彼のプレーは大きいですよ。」

花道「なに?」

安西「1つは、神奈川の猛攻に飲まれそうになっていたところで点を取り返したこと。特に前半活躍した仙道君のブロックをかわしたのは大きい。もう1つは、大阪の速いパス回しを受けてきっちり点を決めたこと。もしかすると、これがきっかけで、、」

田岡「福田。」

福田「?」

田岡「あの大阪の8番をよく見ておくんだ。言動まで真似をしてもらっては困るが、ヤツはちょうどお前の少し先を行っているプレーヤーだ。ポジションも体格も、オフェンス重視のスコアラーという点もお前とよく似ているが、ボールを持ってもまわりがよく見えていて攻め手が多い。」

岸本「土屋ァ!よこせ!」

ビッ

パシッ

岸本「くらえ!」

仙道、ブロックに飛ぶ

岸本「、、と見せて、パスや!」

仙道「なに!?」

淀川、岸本のアシストで得点

淀川「お前が俺にパスするとはな笑」

岸本「だまっとれ!しゃーなしや!」

田岡「あの辺の判断が、試合の最初から最後まで点を取り続けられるスコアラーになれるかどうかだ。当然ディフェンスも学ぶ点はある。魚住のいなくなった陵南のインサイドはお前にかかっているんだ。よく学べよ、福田。」

福田「、、」(ふるふる)

田岡「、、まあ、ゴール下での粘り強さはお前の方が上だが、、」

福田「!、、はい。」

田岡(、、ふう、、まったく、こいつは1回褒めないとアドバイスを素直に聞けないところが難点だな、、)

諸星「大阪も耐えてるけど、神奈川の猛攻は止まらないな。牧が4人のスコアラーを上手く使ってる。」

神、再び3Pを決める

神奈川53-53大阪

南「はぁっ、はぁっ、、」

岸本「南、大丈夫か?」

南「、、あぁ、、点を、、とらな、、」

南は相当疲れていた。

南のスタミナは、走りっぱなしの豊玉式ラン&ガンでもフル出場できるほどタフだが、前半は牧にマークされながら大阪の得点43点のうち16点を取るほど、いつも以上に走り回っていたため、既に限界寸前だった。

ピーッ!

審判「大阪、タイムアウト!」

南「!?」

土屋が、監督にタイムアウトを取るように要求していた

大栄監督「ええ判断や土屋。俺もちょうどタイムアウトを取ろうと思ってたとこや。」

南「はぁっ、はぁっ、、」

大栄監督「なるべくゆっくり呼吸するんや南。一旦下げるから、しっかり休むんや。」

南「!?、、俺は、、まだ、、点を、、とれる、、」

土屋「強がんな南。ヘロヘロやで。」

南「はぁっ、はぁっ、だまれ、、」

土屋「無理もないで。お前は今日誰よりも走っとるからな。それに、お前を一旦下げるんは別の意味もある。」

南「!?」

大栄監督「お前も気づいたか?神奈川の"弱点"に!」

大阪勢「!?」


高頭「いい感じだ。」

牧「はい。ですがすみません、土屋を動揺させるのは失敗しました。」

高頭「いやいや、あれは私のミスだ。彼は想像以上に鋼のメンタルを持っていたようだ。」

神「大阪は南がかなりキツそうでしたね。タイムアウトを取ったということは、交代した場合の攻め方を考えてるんでしょうか?」

高頭「それもあるだろうな。うちの作戦がいつまで続くかもわからない。だが、向こうの出方を見る前に今の調子のいい作戦を変える必要はない。うちにもまだタイムアウトが1回残ってるしな。変わらず暴れてきなさい。」

神奈川勢「はい!」


ビーッ!

土屋「ようやく君とマンツーや。」

仙道「!?」

ダムダムッ!

牧、ペネトレイト

牧「!?」

牧を淀川、茨木、岸本が囲む

牧「いいのか?俺に3人もつけて。」

牧、神に目をやる

牧「!?」

神には和泉がかなりタイトについている

牧、三井と流川に目をやるが、淀川と茨木がうまくパスコースを塞ぐ

ダッ!

仙道、ヘルプに向かう

牧「仙道!」

ビッ

バンッ!

牧「なに!?」

土屋、スティール

土屋「速攻!!」

ブンッ

岸本「もろたで!!」

岸本、そのまま得点

牧「なるほど、、」

〜〜

大栄監督「お前も気づいたか?神奈川の"弱点"に。」

土屋「はい。後半開始前に監督が『神奈川は4チームの寄せ集めで連携が取りにくい。』って言ってはったのを思い出しました。」

土屋「さっきうちは速いパス回しで神奈川ディフェンスを引き剥がした。もともと仲はようなかったけど、合宿でかなり連携を取れるようになったからです。対して神奈川は4チームの寄せ集め。神奈川はこれまで海南1校だけで国体メンバーを出してたのに急に混成チームにしたもんやから、うちほどは連携が取れてへん。湘北なんかはぽっと出やから、まだメンバーのことをチームメイトでさえ掴みきれてへんのやと思います。」

土屋「せやから、いっそのことエース2人とシューター2人を配置して自由に動いてもらって、牧のペネトレイトから4人の誰かにパスしてシュート、っていう単純な形にした。その方が、個の力を重視した今年の神奈川に合ってるっちゅーわけです。牧と神だけでも厄介やから、たしかにうちはこの戦法にやられて追いつかれた。」

土屋「せやけど、神とのコンビネーションが抜群な牧も、本来はまわりを活かすよりも自ら点を取りに行くタイプの選手。一気に逆転するための単純なオフェンス重視のこの作戦の欠点は、ディフェンスの連携が取りにくいことと、牧のペネトレイトを潰せば手詰まりになる、っちゅーことです。Cがおらへんから、じっくり攻めるオーソドックスなハーフコートバスケはしにくい。」

大栄監督「その通りや。やからこそ、得意な個の力を引き出させないように、牧が突っ込んできたら牧を囲む。神は普段からのチームメイトやから、それでもパスが通るかもしれへん。せやから、和泉、神を自由にさすな。」

和泉「わかりました。」

岸本「仙道はどうする。」

大栄監督「!?」

岸本「あいつは、うちがそないな作戦立てても何とかしてきよる気がする、、やつは、ただのエースやない。」

大栄監督「、、お前がそこまで言うとはな。前半のインパクトで警戒を外せなかったが、たしかに後半になってやつはまだそれほど点を取りにきてへん。神奈川の作戦の弱点を理解した上で、点を取るフリをしながらサポートに徹しとるんや。牧と神を止めても、あいつのせいで流川や三井にもボールが渡るかもしれへん。」

土屋「、、僕がマークします。」

岸本「、、」

土屋「岸本、すまんな。お前があいつをマークしたい気持ちはわかる。せやけど、、」

岸本「ふん、お前がマークしたいんならせえや。その代わり、やられんなよ。」

土屋「、、ああ。」

大栄監督「茨木、南の代わりにお前が入れ。淀川と2人で三井と流川へのパスコースを塞げ。岸本は牧がそのまま突っ込んで点を取りに来ないように注意や。」

岸本・淀川・茨木「はい!」

大栄監督「、、と、いうことや、南。牧を封じるのは茨木の方が向いとる。せやから一旦安め。ただし、様子を見ながらまた出てもらうで。お前の得点力とシュートレンジは必要やからな。」

南「、、はい。」

大栄監督「オフェンスではハイテンポでパスを回せ。連携の乱れた神奈川ではおそらく追いつけん。フィニッシュは岸本、お前や。」

岸本「任せえ。」

〜〜

ダムダムッ!

牧「厄介だな、、」

スッ

三井がパスコースに一瞬入るが、

パンッ

茨木、牧から三井へのパスをギリギリはたく

三井「くそっ!」

仙道「、、あんたが考えたんですか?」

土屋「!?、、監督と同意見やっただけや。」

仙道「はは、そうですか、、こりゃしんどい笑」

安西「豊玉の彼があそこで得点につなげていたからこそ、大阪は自身の強みと、神奈川の弱点に気がつけた。そういう意味で、彼のプレーは大きかったね。」

花道「ぬぬ、チョンマゲめ、、」

赤木「先生、これはうちが海南にしかけたボックスワンに少し似てますね。」

安西「そうだね。仙道君だけは放っておけないと見て追加でマークがついてるけど、基本的には牧君のペネトレイトと神君の3Pを防いでいる。ただし、うちの場合は他の選手に点を取られることを捨てていた。そうするしかないと思ったからだ。大阪は、三井君と流川君の警戒も外せないと判断して、疲れていたスコアラーを下げてゾーンディフェンスにも慣れている彼らにパスコースを塞ぐことまで任せた。相当難しいことをしている。」

高頭「そんな『奇策』、長くは通じないぞ。」

だが、大阪の無謀なディフェンスは意外にも功を奏し、神奈川のオフェンスは次も止められた。

牧「まずいな、、」

牧は珍しく、ほんの少しだけ動揺していた。

土屋に股抜きパスを通されたことが、今になって牧のメンタルに影響していた。

牧ほどの選手だからこそ、大きくパフォーマンスを落とすことはなかったが、大栄メンバーを主軸とした大阪の気迫溢れるディフェンスが神奈川のオフェンスをギリギリ止めることができる程度に、ボディブローのようにじわじわ効いてきていた。

宮城「またあいつだ、くそ!これ以上取られたらマズイぞ!」

速いパス回しからの岸本のシュートを、神奈川は止められなくなってきていた。

ここでも、インサイドを固めるCがいない神奈川の弱さが浮き彫りになってきた。

土屋「どないした?お前おとなしいやんけ。」

仙道「!、はは、あんたのせいですよ笑」

ピーッ

土屋「!?」

審判「選手交代です。」

高頭「お前の役割は、わかってるな?」

清田「わかってますって!」

神「信長!」

流川「清田!?」

牧(さすが監督、助かるぜ。)

三井「もう、終わりか、、」

木暮「三井!」

三井「!?」

木暮「お疲れ!よくやった!」

赤木、微笑みうなずく

花道、腕を前に出してぐっ!

桜木軍団、グーサイン

彩子と晴子、両手を上げる

堀田「みっちゃーーん!!」

三井「お前ら、、」

安西「いい活躍でした。きっと勝敗に影響してきますよ。」(ニコッ)

三井「!!先生っ!」

宮城「三井サン。」

三井「?」

宮城「あいつ、あんなにタイトにディフェンスしてるけど、次ファウルしたら4ファウルですよ。」

三井「、、そうだな。」

宮城「3Pはもちろんだけど、今日の三井サンの1番の功績はあれかもしれない。」

高頭「その通りだ。よくやったぞ三井。」

三井「!ありがとうございます。」


清田「っしゃああ!!!」

桜木「けっ、キツネにくわえてここで野猿だと?まったく気に入らねえメンバーだ!」

仙道(ニコッ)

土屋「なんや?えらい笑て。ツインシューターやなくなって、より神を止めやすくなったんちゃうか?」

仙道「さあ、どうでしょうね。」

ビッ

パシッ

ビッ

パシッ

牧と清田、パスを出し合いながらゆっくりフロントコートの方へ

ダッ!

牧、ボールを受け取った瞬間走り出す

同時に清田も逆方向へ走り出す

茨木、清田に気を取られる

淀川「剛っ!よそ見すな!」

ダムッ!

牧、そのスキに一歩中へ

清田、パスをもらう姿勢

茨木「パスか!」

ダムダムッ!

淀川「ちゃう!」

牧、そのままシュート体制

岸本「無理やり打って入る思うなよ牧!」

ドンッ

ビッ

パサッ

岸本「なんやとお!?」

ビーッ

審判「バスケットカウント、ワンスロー!」

清田「さすが牧さん!」

牧「ナイスだ、清田。」

牧、フリースローを難なく決める

大阪オフェンス

和泉「うお!?」

清田、和泉をタイトにマーク

清田「通すかよ。」

キュッキュッ

和泉(こいつしつこいな、、反射神経がよすぎる!)

清田「清田独特の野性のカンだけじゃなく、1年にしてインターハイ準優勝に貢献した経験を手に入れた俺に死角はねえ!」

土屋、和泉を使えないため直接岸本へパス

岸本、シュート

バンッ

仙道、ブロック

岸本「ちっ!」

続く神奈川オフェンス、清田はその身体能力を活かして動きまくり、大阪ディフェンスをかきまわす

和泉「目障りなやつやな、、」

淀川「和泉!お前が気にしてどうする!!」

ビッ

パシッ

和泉「あっ!」

神、3P

パサッ

清田「ナイス神さん!!」

神「おう!信長が入って打ちやすくなったよ!」

土屋「なるほど、さすがは海南のバックコート陣や。連携がハンパやない。それで笑っとったんかい。」

仙道「まあ、そんなとこです笑」

次は大阪も取り返すも、

清田「おらおら!」

淀川「気にしたら負けや!」

ダダッ!

牧「来た!」

ビッ

パシッ

オフボールの清田のスピードについていける大阪ディフェンスはおらず、牧を囲む3人の合間を縫って、牧から清田へパスが通る

清田「来たあ!ルーキーセンセーショ、、おわっ!?」

土屋、清田がダンクに飛び上がるのを完全に読んでおり、ブロック

高頭「コラ清田ァ!お前はでしゃばらずに撹乱に徹しろって言っただろうがァ!!」

田岡「おい!大声で作戦言う馬鹿がいるか!」

高頭「あっ」

神奈川ベンチ(シーン)

パシッ

土屋「!?」

流川「ナイスパス。」

ドカァ!

土屋がブロックしたこぼれ球を流川がキャッチし、ダンク

清田「あーーー!!」

花道「あーーー!!」

赤木「大阪も運が悪かったな、せっかくブロックしたのに、よりによって流川の方にボールが転がるとは。」

ビーッ

審判「選手交代です。赤14番に代わって赤9番。」

清田「あーーーーー!!」

高頭「すまん清田、作戦言っちゃったから。」

清田「そんなあ!」

高砂「いやそもそもお前のミスだぞ!」

清田「くっそ〜!おい流川!俺のおかげで点取れたんだぞ!感謝しろよな!」

流川「、、どあほうはよくしゃべる、、」

牧「まったく、、それより花形、大丈夫か?」

花形「ああ、しっかり休ませてもらったよ。同じ手は食わないよう気をつける。」

花道「今度はメガネか。」

木暮(?、ああ、花形ね。)

赤木「うーん。前半を見るに相手との相性はあまりよくなさそうだったが、なぜ高砂を使わないんだ?」

高砂は、準決勝の愛知との試合で、牧、仙道とともに森重をファウルトラブルに追い込むという重要な役割を果たしていた。

その点、神奈川の決勝進出に大きく貢献したが、その代償として打撲と捻挫を負っていた。

高砂「頼むぞ、花形、、」

大栄監督「ゾーンを解け!マンツーであたるんや!」

仙道「案外あっさりディフェンス戻したんですね。」

土屋「当然や。あれはちょっと無理せなできひんからな。1回破られたらおしまいや。監督に言われるまでもあらへん。」

仙道(判断が早いな、、もう少し続いてたら、花形さんが入ったことで流川が信長君の役割をできたかもしれないのに。)

土屋「俺は牧につく。またな、ツンツン君。」

仙道「はは笑、あんたのことは牧さんに任せますよ笑」

仙道(やりにくい相手だった、、点の取り合いならもう少し挑みやすかったけど、お互いサポートの時間帯だったからな。彦一の言ってた通り、しんどい相手だ。)

それからは、お互い一進一退を繰り返し、点差は変わらず

神奈川65-67大阪

そんな時、大阪がまだ気づいていなかったある問題が顕在化した

バチッ

ビーッ!

審判「青7番!」

和泉「なんやて!?」

茨木「おい、和泉は今ファウルいくつや?」

大栄マネージャー「、、4つです、、」

茨木「まじか!?」

和泉「そんなはずは!」

土屋「やめ!和泉!」

和泉「くっ、、」

大栄監督「しまった、、じわじわとファウルを重ねさせられていた、、」

土屋「和泉、今のファウルはしゃーない。神を止めるにはあれぐらいアグレッシブに行かなあかんかった。」

和泉「、、ああ、でもすまん、、気にすべきは三井に取らされたファウルやった、、」

和泉は大栄のスコアラーであり、土屋に次ぐオールラウンダーでもあった

ディフェンスも上手いが、オフェンスではGもFもでき、自ら点を取ることもまわりを活かすことも、時には3Pを決めることもできる優秀なプレーヤーであった

宮城「やったな、三井サン。」

三井「ああ。」

スタッ

南、立ち上がる

大栄監督「待て。」

南「何でや!和泉がおらんなったら得点力が落ちる!シュートレンジも!」

大栄監督「お前がディフェンスで神に気を取られれば、点を取りたくてもまたバテてしまうぞ。」

南「関係あらへん!今点取らなヤバい!」

大栄監督「土屋を信じろ。」

南「!?」

ピーッ

和泉は守口と交代した

茨木「守口、厳しくあたれよ。」

守口「はい、剛さん。」

が、

パシッ

トンッ

ビッ

パサッ

守口「なっ!?」

神、またしてもステップバックからの3P

三井「ど、どうなってんだ、、バケモンか!?」

淀川(守口はディフェンスのスペシャリストや。せやけど、あれだけ高い打点からステップバックで打たれたら、守口の身長では止めようがあらへん、、)

高砂「よし!これで逆転したぞ!」

ダムッ!

土屋、中へ突っ込もうとする

牧「通さん!」

ビッ

守口へパス

ダッ!

牧「なに!?」

守口、すかさず土屋へボールを返す

パシッ

ダンッ

花形「自ら!?」

パサッ

意表をつくレイアップだった

土屋「、、」

南「土屋、、」

大栄監督「土屋は、お前らに憧れとったんや。」

南「!?」

〜〜

土屋、中3の夏

大阪府の大会で、土屋のいた東大阪中は既に3回戦で敗退しており、土屋は引退後1人で府予選を観戦しに来ていた。

豊玉中79-西成中47

観客「やっぱ豊玉は中学からラン&ガンなんやな、得点力がずば抜けてる!」

観客「中高一貫やけど、高校とは別で練習してるらしいで。でも、北野監督のラン&ガンに憧れて入ってくる生徒が多いから、中学もオフェンス重視になってるらしい。」

観客「へえ、私立やから体育館いくつもあんのか、羨ましいなあ。」

ビッ

パサッ

岸本「っしゃあ!!」

岩田「ナイシュ岸本!」

岸本「走れえ!最後まで点取りまくるで!」

矢嶋「おう!」

ビッ

スパッ

観客「すげえ!また3Pや!中学生やのに、なんて得点感覚してんねん!」

観客「あいつだけは豊玉に負けてへんぞ!」

南「点取り返すで!」

岸本「くそっ!南にやられんな!」

土屋(す、すごい、、なんてアグレッシブなプレーや、、かっこええで!)

ビーッ

審判「試合終了!」

豊玉中93-59西成中

岸本「っしゃああ!!ベスト4確定や!!」

南「、、」

岸本「せやけど南、個人成績ではお前に負けた。さすがや。」

南「、、嬉しないわ!くそっ!」

岸本「南、高校は豊玉に来れんねやろ?」

南「、、ああ、オカンに頼み込んだ。うちは貧乏やから私立には行かれへんって言われとったけど、説得した。北野さんのもとでバスケがしたい、絶対に全国で得点王になる!って言ったら、何とか許してもろたで。」

岸本「っしゃあ!!お前も豊玉に来たら、うちは強なるで!!」

土屋(あの西成のエースまで豊玉に、、)

帰宅後、

土屋「オカン。」

土屋母「何やの?」

土屋「俺、高校、豊玉行きたい。」

土屋母「はあ!?あんた何言うてるん!?あんなガラ悪いとこ行かせるわけないやん!」

土屋「今日すげえ試合を見たんや!たしかにロン毛のガラ悪そうなやつやったけど、そいつを中心に豊玉は点を取りまくっとった!あのまま行けば豊玉は全中に出るやろう。せやけど、西成にもとんでもないやつがおった。あの豊玉の誰よりも点取るやつ!」

土屋母「ほな豊玉やなくてもええやないの。」

土屋「ちゃうねん!そのエースまで高校は豊玉に行くって!何か知らんけどクールなやつやった。俺は今はあんな風にシュート決めまくることはできひんけど、ああなりたいねん!豊玉行って、あいつらに教わりたいねん!」

土屋母「はあ、、あんたねえ、バスケに打ち込むんは母さんも賛成やけど、将来を棒にふってまでやってもええとは思ってへんねん。豊玉なんか行ってみい、ろくな大人にならへんで!」

土屋「オカン!決めつけはようないで!」

土屋母「なんが決めつけや!この前も未成年の犯罪がー言うてニュースやっとったけど、豊玉の生徒っちゅー噂やで。」

土屋「単なる噂やんか!ほんでバスケ部に関係あるとは限らへん!」

土屋母「とにかくアカン!」

土屋「、、」

土屋は、当時大阪府ベスト4とベスト8の間をうろうろしていた大栄学園に入学した。

大栄は文武両道を掲げており、土屋がバスケに打ち込む条件として、土屋母が課したのが大栄への進学であった。

当然、土屋はバスケ部に入部した。

全国に出たことはないとは言え、大阪の高校数を考えればベスト8でもレベルは高かった。

その上土屋は中堅レベルの中学出身で、まだ新入生。

高校生のプレーは、特別すごく見えた。

土屋(なんや、ここもめちゃ強いやんけ!)

しかし、土屋はすぐに現実を突きつけられた。

大栄監督「新入生も入部したところで、早速練習試合を組んできた。相手は、、豊玉だ。」

土屋(!いきなり来たで豊玉!こんなラッキーなことあらへん!勉強なるで!)

試合当日

大栄38-67豊玉

大栄キャプテン「と、止めろお!」

豊玉キャプテン「止めれるわけないやろ!」

土屋(嘘やろ、、こない差があるもんなんか?、、)

ピーッ

北野「行ってきい。」

南「はい!」

土屋「!あいつは!?」

南は、3連続でシュートを決めた。

その後は、マークが厳しくなり思うように点を取れなくなったが、同じ1年にもかかわらず、自分とは違い一流のチームの中で遜色なくプレーできていた南に、土屋は驚きを隠せなかった。

ビーッ

大栄70-129豊玉

両校「お疲れ様でした!」

土屋「あのっ!」

南「?」

岸本「お、なんやこいつ。」

土屋「君たちを去年の夏から見さしてもろてた。俺も同じ1年なんやけど、君らみたいに点を取れるようになりたいねん。ええと、どんな練習したらええんやろか?」

南「、、、」

岸本「お前、見る目あるやん!俺らはなあ、」

南「岸本。」

岸本「?」

南「敵に練習方法なんか教えへん。行くで。」

岸本「ハッハッ、それもそやな!ほなな!」

土屋「あ、、」

最初は、相手にされてないのかと思い腹が立った。

しかし、南の考えは理解できた。

勝ちに貪欲であるが故の答えだった。

理解できると、あのエースが自分を敵として認めてくれたことに喜んだ。

そして、同じ1年なのに、そんなことで喜んでいる自分にまた腹が立った。

自分が豊玉に入っていれば、仲間として彼らの得点力の源を学ぶことができ、共に上を目指すことができたのに。

土屋は、同期の豊玉メンバーへの憧れと劣等感を、自力で得点力を身につけることで払拭しようと猛練習した。

身長が高く、Fとしてインサイドでの得点が期待された土屋は、1年かけて順調に成長していった。

しかし、南たちに負けないスコアラーを目指していた土屋の自己中心的なプレーはチームを乱していた。

大栄監督「土屋。」

土屋「、、なんすか?」

大栄監督「お前は勘違いしとる。」

土屋「!?」

大栄監督「お前のためにチームがあるんちゃうねん。チームのためにお前がおんねや!」

土屋「!!」

大栄監督「、、まあ、俺の大学時代の監督がそう言っとったわ。俺も当時はふーんとしか思とらんかった。けどな、監督やっとるとよーうわかんねん。」

土屋「、、でも、、俺は、、点を取りたい、、豊玉みたいに点を取りたいんです、、」

大栄監督「そうやな、、たしかに点を取ることは大事や。豊玉には北野監督ゆう方がいはってな、さっき言った俺の大学時代の監督の同期らしい。北野監督は大阪では有名な方で、あの監督の下に大阪中のスコアラーが集まる。ラン&ガンのノウハウも、うちなんかよりぎょうさん持っとる。そこに関しては、俺の実力不足や、すまん。」

土屋「、、」

大栄監督「せやけど、自己中心的なプレーはあかん。お前が焦って点を取っても、チームとしての総得点は上がったか?お前が目指したんはそういうことちゃうやろ?お前の得点で、チームがより多く点を取らな意味ないねん。せやろ?」

土屋「!!」

大栄監督「俺から見とって、お前はゲームメイクのセンスがずば抜けとる。自分が点取れるようにどうしたらええか、ようわかってG陣に要求しとる。お前が点を取るには理にかなったことを言うとるんやけど、そればっかりではいずれみんなお前の言うことを聞かんくなるで。どうや土屋、お前PGやってみいひんか?」

土屋「PG!?やったことないですよ?」

大栄監督「まあものは試しや。その身長はもったいないが、逆にGとしてはかなり強みにもなる。お前がまわりを活かして点を取るんや。そして、『ここぞという時に、お前が点を取ったらええ。活かすからこそ、お前の得点が効いてくるんや。』」

土屋は、監督の指導の下PGとしての練習を始めた。

効果はすぐに表れた。

関大附属キャプテン「くそっ、何か戦いにくい相手やな、、」

ビッ

パシッ

ビッ

パサッ

大栄キャプテン「ナイシュ和泉!ナイスアシスト土屋!」

土屋・和泉「うす!」

ガンッ

関大附属キャプテン「リバン!」

バンッ

淀川「っし!」

大栄キャプテン「ナイスリバン!ヨド!」

淀川「うす!」

ビーッ

関大附属67-71大栄

大栄キャプテン「っしゃあ!勝ったで!!」

練習試合ではあったが、大栄は当時大阪No.2だった関大附属に勝利した。

土屋は、自ら学び、深く考えようとする姿勢が誰よりもあった。

それにより、どうすればまわりが活きるか、どうすれば自分のチームの得点を上げて相手のチームの得点を抑えられるか、戦術を考え操る頭脳が培われていた。

その上、それまでの土屋の自己中心的なプレーそれ自体はチームにとってよくなかったが、同期の和泉や淀川たち有力な選手が彼に負けじと実力を伸ばしており、土屋がPGを務めるようになってから、彼らのプレーが生きるようになっていった。

その年の夏と冬、大栄は大阪府ベスト4に留まったが、豊玉にはしかと大栄の土屋という存在が心に刻まれた。

岸本「南、あの土屋ってやつ、知ってたか?」

南「いや、知らん。あんなパスのうまいやつ、俺の記憶にはおらん。厄介なやつやで。」

その後、北野監督解雇の知らせが大栄に届いた。

大栄監督「豊玉には悪いが、チャンスや。次の夏、必ずうちが大阪で1位を取る。豊玉を倒すのに必要なことは何やと思う?土屋。」

土屋「ペースダウンやと思います。」

大栄監督「その通りや。残念やけど、得点力で勝負しようとしてもまだ難しいやろう。せやから、あのハイペースをくじいてロースコアゲームに持ち込む。そのために大事なことは?」

土屋「ボールのキープとディフェンスですね。」

大栄監督「そういうことや。」

土屋が高3の夏、大阪府予選、控え室前の通路にて、

淀川「見ろ、豊玉や。」

岸本「何見とんねや?お前ら大栄か?今年も軽くひねったるで。」

和泉「なんやと!?」

土屋「よせ、和泉。」

岸本「お前は、、土屋やな?またしょーもない作戦立ててちょこまか動くんやろが、何したって無駄やで。」

土屋(昔よりガラ悪なっとる、、北野監督がおらんようなったらこないなってしまうんか?オカンの言うとったこともあながち間違いやなかったかもしれへん、、)

南「土屋。」

土屋「!」

南「勝負したるから、ぶつかって来い。点取り合戦や。」

土屋「!」

土屋、拳に力が入る。

目標にしていた南が、点取り勝負を仕掛けてきた。

勝負したい気持ちが一瞬にして高まり、「臨むところや!」と口から出かけたその時、

『お前のためにチームがあるんちゃうねん。チームのためにお前がおんねや!』

あの言葉を思い出した。

土屋、我に返る。

土屋「まあ、楽しみにしときや。」

南「!?」

岸本「あ?調子乗っとんちゃうぞ!!」

金平「おい!お前ら何してる!」

金平、岸本を止める

岸本「ちっ、何やねん。明後日見とれよ!」

土屋「、、」

南「、、」

〜〜

大栄監督「土屋は、お前らみたいなスコアラーになりたがっとった。それを止めたのは俺や。責任も感じとるが、あいつにとって、チームにとって最善の選択をしたと信じとる。」

南「!!」

『俺も同じ1年なんやけど、君らみたいに点を取れるようになりたいねん。どんな練習したらええんやろか?』

南(あの時の!?あいつが土屋、、!?)

大栄監督「でもな、あいつも、やっぱり心のどこかで、点を取りまくるとこもお前らに見てほしいって思とると思うねん。特に今年、初めて全国に出て博多に敗けてから、全国制覇するにはやっぱ得点力がいる言うて、ケガ治してからはまた個人練習を増やしよった。さらに上を目指すなら、当然やわな。南よ、もう少し見てやってくれ。」

南「、、土屋、、」

牧(土屋の目が変わった、、次は何をしかけてくる?)

ダムダムッ!

牧「なに!?」

土屋、牧をドリブルで抜き去る

清田「牧さんが抜かれた!?」

スッ

淀川、パスを受ける構え

花形、淀川を牽制

キュッ!

ビッ!

花形「また自ら!?」

パサッ

淀川「いいぞ土屋!その調子や!」

和泉「昔の土屋を見てるみたいや。」

岸本「、、」

岸本、土屋の変わりように驚き、言葉を失う

牧「面白い!止めてやるぞ!」

宮城「牧も本気のディフェンスだ、抜けっこない!」

土屋「、、」

ダムッ、ダムッ

ビッ

茨木へパス

ビッ

守口へ

ビッ

淀川へ

神「くそっ、パス回しが速いな、、あ!」

ビッ

パシッ

『ここぞという時に、お前が点を取ったらええ。活かすからこそ、お前の得点が効いてくるんや。』

フワッ

ガスッ!

全員「!?」

岸本「な!?土屋が、ダンク!?」

南「、、はは、アホか。俺らはダンクなんかせーへんわ笑」

土屋「これで3連続や!勝負したるから止めてみい神奈川ァ!!」

牧「おいおい、キャラどうなってやがる?笑」

ダムダムッ

花形「また自ら来るのか!?」

ダンッ!

花形、仙道、ブロックに飛ぶ

ビッ!

仙道「!?」

パシッ

土屋、岸本にパス

岸本「、、」

南「岸本!はよ打て!」

岸本「はっ!?」

バンッ!

流川、岸本のボールを奪う

岸本「しもたあ!!」

ダダダッ!

淀川、茨木、守口が先回りして戻る

牧「くそ、戻りが速い、流川!一旦戻せ!」

キュッ!

フワッ

牧「なっ!?」

流川、フェイダウェイ

パサッ

流川「止めたぜ。」

流川、土屋の方を振り向き言い放った

土屋「!?」

南「ナガ、、ルカワ!」

土屋「、、ははっ、おもろいで自分!」

岸本「す、すまn」

ピーッ

岸本「!」

審判「選手交代!」

南「ええもん見してもろたわ、土屋。」

土屋「!?」

和泉「お前が点取り出して、俺らが戻ったからには、もう神奈川に抜かせへんで。」

土屋「、、その通りや。」

岸本「、、」

残り6分

神奈川70-73大阪

土屋「ほな、行こーや。」

マッチアップ 大阪オフェンス

土屋ー牧
和泉ー神
南 ー流川
岸本ー仙道
淀川ー花形

牧「来るぞ!」

ビッ

土屋、和泉へパス

南と岸本、パスを受ける体勢

流川・仙道(どっちだ!?)

ビッ

和泉、自らミドルショット

流川「ちっ!」

仙道(くそっ、やられたか、、)

が、

神「くっ!!」

神の指先がボールに触れる

ガンッ

バチンッ

流川、リバウンド

流川、カウンター速攻のために前を走る牧へボールを投げようとするが、

バンッ

南、ボールをはたく

流川「野郎っ!」

神がボールを追いかけるも、和泉がボールを拾い岸本へ

ビッ

パサッ

淀川「ナイスや岸本ぉ!」

岸本(土屋の異常な気迫にビビってさっきは大事な1本を逃してもうた。もう1本も落とせへんのや!!)

花形(くそっ、ブロックに行けない!どうしても淀川にポジションを取られてしまう!どうすればっ!)

牧「次の1本、確実に取るぞ!!」

マッチアップ 神奈川オフェンス

牧 ー土屋
神 ー和泉
仙道ー岸本
流川ー南
花形ー淀川

ダムダムッ

牧、土屋を抜く

牧(神も仙道も流川もタイトなマークがついてるな、、既に神奈川の連携の弱さがバレて、動きが読まれてる。かと言って、俺がこのまま突っ込むと淀川がファウルしてでも止めて来やがる。ここは花形に頼りたいが、、)

ビッ

花形「、、」

淀川「来い。」

花形、フェイクを入れる

が、淀川は完全に読み切っていた

花形「くそっ!」

ビッ

花形、無理な体制からヤケクソのシュートを放つが、

ガンッ

外れる

南、リバウンドに向かう流川を体を張って阻止

淀川「もろた!」

花形「くそっ!!」

〜〜

藤真「みんな、よく聞いてくれ。俺たちは湘北に負けて、決勝トーナメントを逃した。こんなはずじゃなかった、なんて甘いことは言ってられない。すぐに反省会をしたいと思う。まず、湘北を甘く見すぎていた。これが最大の要因だ。俺の責任もある、すまない。・・・」

藤真「・・・次に、インサイドだ。俺たちは高さで県下No.1。インサイドには絶対の自信を持っていたはずだ。それなのに、赤木と桜木にやられてしまった。赤木は全国でも通用する一流のCだ。あいつや魚住への対策はまた考えるとして、問題はあの桜木だ。たしかにとんでもないジャンプ力と、素人とは思えないスクリーンアウトを仕掛けてくる。だとしても、これだけ高さがあってあんなにリバウンドを取られるのはおかしい。」

花形「すまない。俺としたことが、あの凄まじいジャンプ力と気迫にやられてしまった。」

藤真「そこなんだ。俺たちの慢心はここにも影響していたんだ。たしかに桜木のリバウンド力は大したものだし、今後の成長次第ではとんでもないリバウンダーになるかもしれないが、この前の試合のレベルならまだ全国にも普通にいる。俺たちは全国でも太刀打ちできる高さと実力を持ってるはずだ。もっと攻め気でボールを取りに行っていい。もっと泥臭く体を張ってもいいんだ。あの桜木のようにな。そうしたら、花形、高さも技術もあるお前が、負けるはずはないんだ。」

〜〜

ダンッ!

花形「自らとーる!!」

全員「!?」

バチン!

花形、自ら打って外れたボールを自らリバウンド

淀川「はぁ!?」

長谷川「は、花形、、?」

藤真「はは笑、いいぞ!」

ビッ

牧、既にインサイドに走っており、花形からのパスを受けレイアップを決める

神奈川72-75

淀川(な、なんやねん「自らとーる!」って!急にキャラ変しよって、わけわからんでこのメガネ、、)

木暮「今、あいつ『自らとーる!』って言ったよな、、?」

赤木「あ、ああ、、」

花道「コラァメガネ!オレの必殺技を勝手にパクってんじゃねえぞ!」

花形(は、恥ずかしい、、)

続く大阪オフェンスは和泉が、神奈川オフェンスは流川が得点

南「ナガレ、、ルカワ。」

流川「!?」

南「沢北はどうやった?」

流川「!」

南「チームとしては勝っても、さすがに個人としてはまだ敵わへんかったやろ。そのままあいつはアメリカに行ってしもた。目標を失ったんちゃうか?」

流川「、、てめーにゃ関係ねえ。」

南「俺は眼中にねえってか?」

流川「!?」

南「日本一の選手争いに、俺も名乗り出たる。覚悟しとけ。」

ビッ

パシッ

土屋からのパスが通る

南が入れたフェイクは大小合わせて3つ、、

流川(読めてんだよ!)

、、ではなかった

流川「!?」

ダムッ!

南、4つ目のフェイクで流川を抜き去りミドルを決める

続く神奈川オフェンス

仙道「、、」

仙道、花形にアイコンタクト

花形「!」

ダムッ、ダムッ

スッ

仙道、静かに岸本のマークを外す

牧「!」

ビッ

仙道にパス

ダムダムッ!

仙道、クロスオーバーで岸本を抜き去る

岸本「くそっ!!」

淀川「あかん!」

淀川、仙道を止めに外へ一歩

ガッ!

淀川「!?」

花形、ベストポジションを確保

仙道、花形へパス

花形「オラァッ!」

ガスッ

花形、ダンク

長谷川「いいぞ花形!」

仙道「ナイスです!」

花形「いやいや、さすがだ仙道。」

ダダッ!

花形「!?」

パシッ

ダムダムダムッ!

南、猛スピードでドリブル

ダダダッ!

流川、猛スピードで何とか追いつく

キュッ!!

流川「!?」

ビッ

スパッ

南、3Pラインの手前で急ブレーキをかけ、シュートを決める

岸本「ええぞ南!!」

残り3分10秒

神奈川76-82大阪

赤木「まずい、、残り3分で6点差か、、」

ダムッダムッ

牧(ペースを上げたいところだが、ここからは1本も落とせん、、)

チラッ

キュッキュッ

神は和泉の気迫のディフェンスで封じられている

魚住「大阪の7番、4ファウルだってのに、なんてディフェンスだ。」

牧(まったく、、4ファウルからの際どいディフェンス、どこぞの2mを思い出すぜ、、!?)

流川(パスくれパスくれパスくれパスくれパスくれパスくれパスくれパスくれパスくれパスくれ!)

南(流川が目でパスを要求しとる!)

土屋(流川は1人で突っ込むと見た。牧がパス出したら俺と南で、、)

スッ

パシッ

土屋・南「!?」

流川「な!?」

仙道がボールをもらいに土屋の後ろに来ていた

ダムダムッ

岸本(パスか!?)

淀川(シュートか!?)

ダンッ!

岸本「くそっ!シュートやった!」

淀川、ブロックに飛ぶ

スッ

フワッ

パサッ

仙道、ダブルクラッチでブロックをかわし得点

藤真「さすがだ、仙道。」

長谷川「!?」

藤真「あいつは、流川へのパスが大阪に読まれてるのに気づいて、わざわざあんな外まで出てきてボールをもらいに行った。流川がパスをもらい点を取りに行こうとしてるのが見て取れた南は、流川がボールを受け取ったらその瞬間からかなりプレッシャーをかけただろう。おそらく土屋もそれを読んでいた。流川の1on1力なら、それでも何とか抜いて得点できた可能性もあるが、南の調子がここに来て上がってきてるから確信は持てない。そこで仙道は、自分がボールをもらいに行けば牧は流川ではなく自分にパスを出すと判断したんだ。もしあそこで牧が流川にパスを出していたら、仙道の行動は大阪のインサイドのディフェンスを放っておくことになっていたが、そうならないとやつは確信していた。1本も落とせないこの状況で、牧なら少しでも可能性のある方を選ぶと信じていたんだ。」

ダムダムッ

南、またしても猛スピードでドリブル

ダダダッ

流川もついて行く

キュッ!

南、急ブレーキ

流川(こいつっ!また!)

キュッ!

流川も止まる

スッ

南、またも3Pの体勢

ピタッ

流川「!?」

南、一瞬止まる

ピタッ

流川もギリギリで止まる

南「!?」

ビッ

ガンッ

南(あえて待ってから打つことで、ファウルさせてフリースロー3本取るつもりが、、読まれたか、、)

バチンッ

淀川、リバウンド

パンッ

淀川「!?」

花形、下からボールをはたく

キュッ!

牧、すぐさまボールを拾いドリブル

土屋と和泉、すぐに戻り追いつく

ダンッ

牧、レイアップに飛ぶ

土屋・和泉「止める!!」

ビッ

土屋「な!?」

和泉「に!?」

パシッ

ビッ

スパッ

美しい弧を描いた神の3Pが決まった

清田「ナイス神さんっ!!後半だけで5本目!!」

土屋(このおっさん、、全力で一直線に走ってきたのに、、どこに目ついとんねん、、)

神奈川81-82大阪

残り2分10秒

高頭「死守だ!!ここを凌いで、次で必ず逆転するんだ!!」

田岡「焦るなよ!徹底して守って、落ち着いて決めるんだ!!」

ビッ

パシッ

ビッ

パシッ

大阪は得意の速いパス回しで神奈川ディフェンスを撹乱

牧(誰で決めに来る!?)

神(誰、、)

花形(誰だ!?)

流川「、、」

仙道「!」

ダムッ!

仙道、南のドライブを読み、止めに入る

スッ

仙道「!?」

南、土屋へパス

パシッ

ビッ

パサッ

高頭「くそおっ!」

田岡「土屋め、、!」

神奈川81-84大阪

高頭「くっ!」

田岡「まずい!」

神奈川に不穏な空気が流れた、、

花道「何やられてんだセンドー!!」

全員「!!?」

仙道「、、桜木!?」

花道「てめーは俺が倒す!!それまでは負けてんじゃねえぞ!!」

福田「桜木、、」

岸本「あのバカ!!自分誰と比べてんねん!」

花道「じい!!さっさと逆転しやがれ!!てめえがやられたら、てめえらに負けた湘北が弱えみてえになるだろうが!!」

牧「!」

清田「うるせーぞ赤毛ザル!!誰が言ってやがんだ!!」

花道「ルカワ!!カリメロにやられてるようじゃ張り合いがねえぞキツネ野郎!!」

流川「、、」

南(、、カリメロ?、ピヨ)

花道「しっかりしやがれ!!!」

静まり返る会場

仙道「、、まったく、言ってくれるぜ笑」

牧「生意気な笑、すぐ取り返してやるからそこで見てろ。」

流川「、、どあほうが!」

宮城「花道、、よく言ってくれたぜ。」

三井「まったく身の程知らずな野郎だが、今のあいつらには必要な声だったな。」

野辺「あいつは相変わらずだな笑」

深津「品がないピニョン。でも、、」

河田兄「赤坊主の言う通りだ。あいつの檄は、大きいぞ。」

土屋「、、桜木か、、」

牧「確実に1本だ!!死ぬ気で行くぞお前ら!!」

神・花形「おう!」

流川(勝つ!!)

仙道「さあ、行こーか!」

キュッキュッ

和泉(こいつ、動きが激しくなった!何としてもついていかんと!)

神(フリーになる!)

ガッ!

淀川「自由にはさせへんでメガネ!」

花形「お前もメガネかけてるだろ!」

ダムッ、ダムッ、

土屋(抜かせへん、、相手が牧であろうと!!)

ダムダムッ!

清田「ぬ、抜けねえ!」

ビッ

パシッ

神、牧からのパスを受け取る

神「!」

牧、神に対し目で指示を出す

キュキュッ!

和泉(これ以上打たせへん!!)

スッ

ビッ

和泉「!?」

パシッ

ダムダムッ!

仙道、神からのパスを受けドライブ

岸本、仙道を止めに行くが、

ダムダムッ!

ガクッ!

岸本「おわっ!」

仙道、岸本をアンクルブレイク

岸本「くっ、そおお!!」

仙道(このまま決めても1点ビハインド、、次決められたら本当に厳しい、、!?)

(パスくれ!!)

ダンッ!

淀川「止める!」

花形「止めさせねえ!」

ブンッ!

パシッ

淀川「なに!?」

南「しまったああ!!」

ビッ

流川、3P

パサッ

宮城「追いついた!!」

神奈川ベンチ「うおお!!」

神奈川84-84大阪

残り1分20秒

高頭「死守しろ!!」

田岡「死守だ!!」

赤木・魚住「シシューっ!!」

ダムッ、ダムッ、

土屋「はあっ、はあっ、、」

バンッ!

土屋「!?」

牧、土屋のボールをはたく

和泉「ヤバい!!」

ダダッ!

ダムダムッ、ダムッ、

土屋「はあっ、はあっ、あぶな、、」

土屋、ボールに追いつき何とかスティールを免れた

田岡「高頭、タイムアウトは?」

高頭「使いません。今は土屋が1番バテてる。南と和泉がいない間、点を取りに行ったことで体力を消耗したんでしょう。それに、今のあいつらは、私たちが声をかけてやる必要はないですよ。やってくれる目をしてる。」

田岡「よくわかってるじゃないか、高頭よ。」

大栄監督(土屋が限界だ、、神奈川はタイムアウトを取ってくれへんやろな、、何とか持ちこたえてくれ!!)

土屋(やば、、頭働かん、、足も、、)

ダダダッ!

パシッ

土屋(和泉!!)

和泉、土屋から直接ボールをもらいに行き、そのままドリブル

ダムダムッ

和泉「ヨド!」

ビッ

パシッ

花形「止める!」

ピタッ

花形(フェイク!?)

バチッ!

ビッ

パサッ

ピーッ!

審判「赤9番、バスケットカウントワンスロー!」

花形「なっ!?」

高頭・田岡「なに!?」

和泉「ナイスやヨド!」

淀川「っしゃああ!!」

ダムダムッ

ビッ

スパッ

南「でかした淀川!」

神奈川84-87大阪

藤真「取り返せっ!!勝つのは『俺たち』だ!!」

牧「!」

南「!」

牧「その通りだ!!」

ダムダムッ

土屋「はあっ、はあっ、くそ、抜かれた!」

ダムダム!

和泉「そのまま来るぞ!!」

バチンッ

牧「なに!?」

岸本、決死の飛び込みで牧からスティール

流川と南、ボールを追う

南(くそっ、流川!)

流川、走力の差で南に競り勝つ

キュッ

スッ

神、パスを受ける構え

和泉(読んでる!)

キュッ!

ダムダムッ!

和泉(フェイク!?)

ダッ!!

南(速えっ!!)

ビッ

スパッ

神奈川勢「うおお!流川!!」

晴子「流川くんっ!!」

岸本「くそおっ!」

神奈川86-87大阪

残り18秒

ダムッダムッ

土屋「はあっはあっはあっ、」

ダッ!

和泉、再びボールをもらいに行くが

ガッ

神(渡させない!)

ビッ

土屋、そのスキに南へパス

土屋(南、頼む!!お前なら、、)

パシッ

ダムッ!!

流川「!?」

南のフェイクなしの鋭いドライブに、流川、一歩遅れる

南(決めて、守って、勝ちだ!!)

南「うっ!!」

ビッ

南、シュートの瞬間、汗が目に入る

ガンッ!

大阪勢「ああっ!!」

バンッ!

花形、リバウンド

残り5秒

ブンッ!

ダダダッ!

パシッ

流川、ボールを受け取る

ダムダムッ!

南・和泉・岸本、全力で追いかける

土屋(頼む!!止めてくれ!!)

南、流川に追いつく

流川の目指す先はリング

神奈川、これを決めれば勝利!!

大阪、これを止めれば勝利!!

ビッ

パシッ

仙道「!?」

南「!?」

岸本「!?」

土屋「あぁ、、」

ダンッ!!

ガスッ!!

ビーーッ!!

審判「試合終了!」


神奈川勢「優勝だああああ!!!!!」

神奈川88-87大阪

牧「勝ったぞお!!!」

高砂「牧っ!よくやったぞ!!!」

清田「っしゃあああ!!!やりましたね牧さん!!!神さん!!!」

神「ああ!やったよ信長!!」

花形「勝った、、勝ったぞ!!」

藤真「花形!!」

花形「!?」

藤真「やったな!!」

長谷川「さすがだぜ、お前ら!」

花形「!、、おう、、」(涙を拭う)

宮城「やったあ!!優勝だ!!おい流川!!もっと笑えよ流川!!」

三井「そうだぞ!!無愛想なやつだな!!俺たちは『全国制覇』したんだ!!」

流川「、、うす。」

仙道「、、」

彦一「仙道さん!!やりましたね!!全国優勝でっせ!!勝負を決めた『最後のダンク』、かっこええですわ!!ワイは、ワイはっ、ううっ、嬉しゅうて、嬉しゅうてっ!!」

仙道「はは、彦一、サンキュー。何とかなったよ笑」

福田「仙道、、」

仙道「!、、福田。」

福田「、、やったな。」(ふるふる)

仙道「、、ああ、ありがとう。でも、帰ったらみんなライバルだ、福田、頼りにしてるよ。」

福田「!!、、おう。」

高頭「よくやったぞお前たち!!神奈川が全国制覇だ!!」

神奈川勢「うおおお!!」

田岡(この田岡茂一、コーチとしてではあるが、長い監督人生で、ようやく優勝に立ち会うことができた、、次は何としても陵南を、、!)


土屋「はあっ、はあっ、はあっ、、ふぅ、、負けたか、」

南「、、」

和泉「、、」

淀川「、、」

大阪ベンチ「、、」

岸本「、、くっそおおおおお!!!!!」

南「、、岸本、、」

岸本「俺のせいや、、決めれたはずのシュートをみすみす、、ナガレカワに取られてしもた、、南も和泉も交代して、土屋が見たことない目つきで点取り出して、俺はびっくりしてもうて、、俺は何をしとんや!!アホがっ!!」

土屋「、、はは、、」

岸本「、、笑えよ、、俺のせいで負けたんや、、俺が決めとったら、同点で延長やった、、」

土屋「、、お前、謝れんのんかい、、」

岸本「はあ!?てめえ何つった!?」

土屋「はは、そっちのがお前らしいわ笑」

岸本「!?」

和泉「俺も4ファウルで交代してもうてる。負けたんはお前のせいだけやない。」

淀川「俺も、流川にリバウンド取られすぎた。」

南「俺は汗でシュート外してもうた、、流川は、俺に片目潰されても、両目閉じてフリースロー決めたっちゅうんに、、キャプテン失格や、、」

土屋「俺ももう足動かへん、、そんなもんや。チームってのは、誰かだけのせいやない。神奈川の方がちょっとだけ強かった、それだけや。」

パチパチパチパチッ

大阪勢「!?」

大栄監督「よう頑張った、お前ら。俺はお前らに拍手を送ることしかできひん。すまんな、勝たせてやれんくて。でも、みんな、ほんまよう頑張ってくれた。ありがとう、いい試合やった!」

土屋「!、、くっ、、」

土屋は、涙した


仙道「流川。」

流川「、、」

仙道「最後、なんで俺にパスした?」

流川「、、」

仙道「お前なら、最後点取れたんじゃないのか?相手も追いついてたけど、お前のスピードなら、全力で走れば何とか振り切れたはずだ。らしくねーんじゃないのか?」

流川「、、おめーに勝つためだ。」

仙道「!」

『1対1はオフェンスの選択肢の一つにすぎねえ。それがわからねえうちは、おめーには負ける気がしねえ。』

スタスタ、

仙道(ニコッ)

仙道「そうかい。そりゃ楽しみだな。」

安西「流川君はまた1つ成長したね。」

花道「あ!?」

安西「最後、彼は自分でも決めれたかもしれないところを、あえてフリーの仙道君にパスした。流川君を止めるために全員が流川君を追っていたから、より確実な方を選んだんだ。さっき仙道君が牧君からボールをもらいに行ってそのままシュートを決めた時、流川君はパスをもらおうというのが前面に出すぎて、流川君にボールが渡っていたら大阪に完全に動きを読まれていた。その時、牧君と仙道君は、動きを読まれた流川君の1on1よりも確実な方法で得点したね。流川君はあれからたった2分ちょっとで、誰にも指摘されることなく自分のミスを修正して、最後の最後でより確実な方を自ら選んだ。リバウンドと、チームを勝たせるための冷静な判断力を身につけた流川君は、手強いよ?桜木君。」

花道「フン!あんなキツネ野郎、オレが復帰したらすぐに倒してやらあ!」

安西「流川君が『日本一の高校生』になるのは、あと1年もかからないかもしれないね。」

花道「!?」

晴子「!、、流川君、、」

花道(日本一の高校生、、)

安西「、、『彼』が戻ってくれば、わからないけど。」

〜〜

Judge (審判)
"Mike Out, Eiji In!!"
(選手交代!マイク→エイジ!)

Teammates (チームメイト)
"Fooo!! Eiji, go for it!!"
(フー!頑張れエイジ!)

キュッキュッ!

ダムダムッ!

バチッ!

ダダッ!

ガッ!

ビッ!

パシッ!

ダムダムッ!

キュッ!

ビッ!

パサッ

Teammates (チームメイト)
"Excellent!! You got your first points in this tournament! Yeah!!"
(いいぞ!公式戦初得点だぜ!)

沢北「イ、イエア!」
(髪の毛とヒゲ伸ばし中)

〜〜

決勝戦 個人別得点

神奈川 計:88点
仙道  19点 前半20分 後半20分
流川  18点 前半  0分 後半20分
神   15点 前半  0分 後半20分
牧   12点 前半20分 後半20分
三井  10点 前半20分 後半  7分
花形    8点 前半20分 後半11分
藤真    6点 前半14分 後半  0分
宮城    0点 前半  6分 後半  0分
清田    0点 前半  0分 後半  2分
高砂  出場なし
長谷川 出場なし
福田  出場なし

大阪  計:87点
南   27点 前半20分 後半11分
和泉  17点 前半20分 後半17分
岸本  15点 前半  0分 後半20分
土屋  11点 前半20分 後半20分
淀川    8点 前半20分 後半20分
板倉    7点 前半14分 後半  0分
茨木    2点 前半  6分 後半  9分
守口    0点 前半  0分 後半  3分
矢嶋  出場なし
岩田  出場なし
住吉  出場なし
松下  出場なし


第51回 国民体育大会
バスケットボール 少年男子の部

MVP 牧

ベスト5
土屋・牧・南・仙道・河田兄

得点王 南
リバウンド1位 森重
ブロック1位 河田兄
アシスト1位 土屋
スティール1位 深津
フリースロー成功率1位 牧
3P成功数1位 神


岸本「オカンとの約束、果たしたな、南。」

南「!?」

岸本「全国で得点王、なったやんけ。豊玉に来るための約束、お前は守ったんや。」

南は、涙した。


閉会式後、

南「いい試合やった。湘北に負けてから、神奈川の奴らには二度と負けへんつもりやったけど、最後まくられてしもた。」

牧「ああ、本当にいい試合だった。俺からあんなに点を取るやつはなかなかいないぜ。さて、冬はどっちがでてくるんだろうな?」

南・土屋「うちに決まっとる!」

岸本「あ?ぽっと出のお前らに2度も負けるか!アホが!」

土屋「まったく、こないなやつのおるとこには負けへん。、、」

岸本「なんやと!?」

土屋「、、」

南・岸本「?」

土屋「、、それより牧、人のこと心配する前に、自分とこの心配した方がええんちゃうか?今日戦ってようわかった、神奈川が4チームの混成で来た理由が。湘北も、イケメン君とメガネのとこも、ツンツン君のとこも、正直手強いやろ?」

清田「へっ!神奈川でうちが負けることはねえ!かーっかっかっ!!」

岸本「何やねんこいつ、試合中もうるさいし、あの赤頭みたいなんが海南にもおるんかい!」

清田「だ、誰があの赤毛ザルなんかに!!」

ゴスッ

牧「調子に乗るな!」

清田「うぅっ、、」


南「流川。」

流川「!」

南「お前んとこのCは引退したらしいな。」

流川「、、」

南「高校のうちにお前に会うのはこれが最後かもしれへん。冬の選抜に出れるんは1校や。湘北が上がってこれるかわからんからな。」

流川「、、てめーんとこもヤバいんじゃねえか?」

南「うちは大栄をぶっ倒して選抜に出てやる。とにかく、大学で待ってるで。勝負はお預けや。」

流川「、、フン、俺の勝ちだ。」

藤真「南。」

南「!」

藤真「悪かったな、試合前につっかかったりして。」

南「ああ、いや、それより、1年前のこと、ほんまにすまんかった。わざとやなかったんやけど、、」

藤真「ああ、わかってるよ。まさかあの後エースキラーになるなんて思わなかったけどな笑、今じゃすっかり勲章だ。」

藤真、縫い目を見せる

南「うわ、、すまんて!」

藤真「はは、でも、俺はもうエースとまでは、、うちは監督がいないから、俺が監督兼任してて、練習量も減っちゃったから。今はPGとしてみんなを支える方が多い。お前の方がエースだよ。」

南「そうか、大変なんやな、、大学でまた戦おう。」

藤真「バカ言うな!俺がエースの座から降りたからって、うちは負けるつもりはない!海南にも湘北にも陵南にも、俺たちは負けない!」

南「はは、そうか笑、じゃあ俺たちも大栄なんかに負けてられへんな!」


スタスタ

土屋「ん?」

仙道「お疲れ様でした。」

土屋「おう、お疲れ。あのままずっと牧とマッチアップしてたから、お前とはあれっきりやったな。」

仙道「オレは助かりましたよ、あんたはやりにくい笑」

土屋「はは、悲しいこと言うなて笑、でも、何か知らんけど、お前のプレーは、俺と似たものを感じるんよなあ。」

仙道「そうですか笑、神奈川のマネージャー、うちの部員で大阪出身でね、そいつもあんたのことオレに似てるって言ってましたよ。」

土屋「ほお、そうかい笑、でも、たぶん根本はちゃうんやろなあって思うわ。お前感覚派やろ?」

仙道「?そうなんですかね笑、あんたは?」

土屋「俺は、死ぬほど練習して、死ぬほど考える論理派や。お前はなんか、天性のセンスを持っとる感じがする。岸本がムカつくんも納得や笑」

仙道「はは笑、勝手に嫌われてんのか、悲しいな笑、、にしても、冬はお互い大変ですね、強力な仲間も、明日からライバルですから。」

土屋「ああ、俺、冬出えへんねん。」

仙道「え!?」

土屋「うちはオカンが勉強にうるさくてな、まあまあええ大学行かな許してもらわれへんねん。バスケばっかやっとったら、この前の模試の結果悪くてな。引退して受験勉強や。」

仙道「、、そうですか、、」

土屋「、、言うなよ、豊玉の奴らには。」

仙道「?」

土屋「わざわざ敵に早めに弱点教えるわけにはいかへんからな。」

(南『敵に練習方法なんか教えへん』)

仙道「はは、そうですか笑、言いませんよ、別に知り合いいないですし。」

土屋「お前が言わんでも、お前んとこのマネージャーがしゃべりよるかもしれへん。おしゃべりやろ?あいつ。」

仙道「ああ笑、チェックさせないようにしときます笑」

土屋「ほな、行くわ。頑張れよ、仙道くん。」

仙道「、、はい、土屋さん。」


木暮「おい、赤木、、」

池上「魚住、お前、、」

赤木・魚住、ふるふる

木暮・池上「バスケやりたすぎて震えてるぞ?」

赤木・魚住「黙れ!いい試合を見て、気持ちが高ぶってるだけだ!」

スタッ

晴子「桜木君!」

彩子「あら、桜木花道、もう帰るの?もう少し待ったらリョータたちこっち来ると思うわよ?」

花道「フン、冬はもう近いんだ。天才に残された時間は短え。」

晴子「無理はだめよう!」

花道「ハルコさん、、大丈夫、無理はしないッス。リハビリ王ですから!」

洋平「花道、送ってやるよ。」

花道「お、サンキュー!」

高宮「何言ってんだ!お前のバイクは俺たちが乗ってくるので精一杯だったんだぞ!花道が乗ったら誰か降りなきゃ行けねえじゃねえか!」

大楠「じゃあお前が降りろデブ!」

野間「お先ぃ!」

高宮「おい待て!」

花道「ハッハッハ!」

赤木「まったく、バカばっかりだ!」


3日後

大栄学園高校体育館

土屋「みんな、お疲れ様でした。今日をもって、俺は、、引退します、、」

和泉「、、」

淀川「、、」

茨木「、、」

その他大栄メンバー「、、」

土屋「俺は、、高2に上がる頃まで、ずっと豊玉に行きたい思とった、、大栄には、家の方針でしゃーなし入った。点を取りまくるスコアラーに憧れて、1年間自己中なプレーばかりしとった。嫌なヤツやったと思う。すまんかった。」

和泉・淀川・茨木、涙を拭う

土屋「せやけど、監督に教えてもろた。『お前のためにチームがあるんやない、チームのためにお前がいるんや』って。PGの適性も、監督に見出してもろて、今の俺がある。今思えば、豊玉に行っても俺はチームの『その他大勢』やったかもしれへん。そんな俺を、キャプテンとして大阪県予選優勝、インターハイベスト4、国体準優勝まで連れてってくれた監督とみんなに、ほんまに感謝を伝えたい。俺は大栄に来てよかった。最後まで一緒に戦えんくてごめんやけど、、ほんまにっ、、ありがとう、ございました!」

大栄監督「、、お前が全国に連れてってくれたんや。こちらこそありがとう。大学受験も、高校受験とおんなじように、きっとお前にとってよりよい選択になると思う。一発で合格しろよ!浪人するぐらいなら、冬までバスケしてもらわな困るからな!」

土屋「、、はい!」


それから1ヶ月も経たないうちに、各都道府県で冬の選抜予選が行われ始めた

神奈川

彩子「下馬評通りのベスト4になったわね。」

Aブロック 海南大附属
Bブロック 湘北
Cブロック 陵南
Dブロック 翔陽

宮城「決勝トーナメント、初戦は海南だ。国体では心強かった牧や神も、明日は敵だ。高砂も怪我を治してる頃だろう。ウチはダンナがいなくなってインサイドは弱くなったけど、大丈夫だよな、花道?」

桜木「当然!この天才桜木が戻った湘北が海南ごときに負けるわけがねえ!」

宮城「三井サン、バンバン外から狙ってもらいますよ。」

三井「誰に指図してんだ?言われなくても決めてやるよ。」

宮城「ヤス、お前の力、海南に見せつけてやるんだ。」

安田「おう!リョータ!」

宮城(、、こいつには何も言わない方がよさそうだな。)

流川(、、勝つ!)

晴子「みなさん、頑張って!」

冬の選抜は、各都道府県から出場できるチームは1校のみ

結果は、、

第4位 陵南 0勝3敗

天才仙道と、目覚ましい成長を遂げた福田の連携は相手チームを苦しめたが、やはり魚住の穴は大きかった

仙道「全国は、遠いな、、」

福田(ふるふる)

田岡「菅平ぁ!魚住の穴はお前が埋めるんだ!来年の夏までに鍛え上げるから覚悟しろぉ!!」

菅平「ひぃ、、」

第3位 湘北 1勝2敗

流川は、既に県内には止められる選手はほとんどいないほどに存在感を発揮していた

また、スタミナがかなり回復し、調子の波も安定してきた三井の活躍も目覚ましく、大きく貢献した

このWエースの活躍は、総合すると仙道&福田を上回っていた

しかし、陵南同様、赤木の穴はやはり大きく、特に、湘北は急に強くなった若いチームであるため、宮城のキャプテンとしての負担が非常に重くなっており、動きが今ひとつとなってしまった

花道は復帰から3週間で試合に出始め、リバウンドやゴリ直伝ハエたたきで活躍するも、復帰直後にポジションをPFからCにコンバートされたため、慣れない部分も多かった

また、木暮がいないことで、スタメンとしてSGに安田が、シックスマンに角田が入ることとなったが、やはり力不足な部分があり、海南や翔陽には勝てなかった

宮城「はあっ、はあっ、ちくしょう、、」

三井「これまでか、、」

流川「、、」

花道「ちっくしょおおお!!!」

しかし、夏のインターハイの山王戦での活躍と、秋の国体優勝メンバーのスタメンであったこと、冬の選抜神奈川県予選での活躍から、三井は何とか関東リーグの名門大学の推薦を勝ち取ることができた

三井「やったぞ!赤木、木暮!見たか!」

赤木「木暮、うっとうしいから三井を調子乗らせるようなこと言うなよ、、」

木暮「いいじゃないか、めでたいことなんだから!」

安西「三井君。」

三井「!」

安西(ニコッ)

三井(グッ!)

そして、優勝は、

ビーッ

海南70-62翔陽

清田「っしゃああ!!またまた全国だ!!」

神「よし!」

高砂「ちょっとヒヤッとしたけどな笑」

花形「くそっ!」

長谷川「、、」

藤真「牧。最後までお前に敵わなかったな。まったく嫌になるぜ笑」

牧「藤真。お前がいたからこそ今の俺がいる。大学でまた会おう。」

翔陽はプライドを捨て、挑戦者として1から鍛え直した

インサイドは高さにあぐらをかかずアグレッシブに動いた

そして、来年に備えて早めに慣れさせるため、選手兼監督を伊藤に引き継ぎ、藤真はスタメンとして出場した

しかし、インターハイ準優勝と国体優勝を経験した海南の壁は高かった

海南、全国へ!


大阪

ビーッ

和泉「はあっ、はあっ、っしゃああ!!」

淀川「はあっ、はあっ、ギリギリ、耐えたで、、はは笑」

板倉「、、こんなことが、、」

岸本「、、くそっ!なんでや、、あいつはもうおらへんのに、、!」

南「、、」

大栄監督「ようやった!土屋がいなくなって体制は変わったが、1か月ちょっとでうまいこと対応してくれた。これでまた、全国に挑戦できるで!」

大栄メンバー「はい!」

大栄監督「ヨド、キャプテン代理、よう務めてくれた!全国の舞台でも頼むで。」

淀川「はい!」

大栄監督「スミ、お前も、土屋の穴をよう埋めてくれた!今回の勝利の立役者は、お前や。」

住吉「ありがとうございます!実は、土屋さんが、こんなものを、、」

和泉「これは!?」

南「!?」

岸本「、、どうかしたか?、、」

南「、、大栄のミーティングが聞こえてきた。土屋が何か残していったって、、」

岸本「!?」

〜〜

土屋「スミ。」

住吉「はい?」

土屋「俺が引退して、これからPGでスタメン出場するのはお前になるやろう。次期キャプテンでもあるし、お前にこれを渡しとく。」

住吉「!これは!」

土屋「俺が毎日つけとったバスケノートの抜粋をコピーしたもんや。特にPGにコンバートされてからのを多めにピックアップした。」

住吉「す、すげえ!」

土屋「、、みんなには言うな。『引退したくせにうっとおしいOB面すんな!』って言われるからな笑、俺もほんまは、スミはスミのプレーをしたらええ思ってるし、正直渡すか今朝まで悩んどった。せやけど、冬の選抜予選がすぐ目の前まで来とる。お前以外のスタメンはみんな俺のゲームメイクで練習してきたし、守口以外の3人は3年や。急にスタメンで入ってやっていくんもしんどいんちゃうかな、って思ってな。書いてるとおりにせえ言うてるんちゃうし、困った時に見てもろたら。」

住吉「あ、ありがとうございます!!大切にします!!」

〜〜

住吉「言うなって言われてたんですけど、予選を勝ち抜けたのはこれのおかげなんです。」

和泉「なるほどな、、やけにやりやすい思たで笑」

淀川「まあでも、完璧やないにせよ、あいつのプレーを模倣できるんも、お前の実力や。ようやったで、スミ!」

住吉「ありがとうございます!!」

南「、、あいつ、あんなもん残していきよったんや、、」

大栄監督「その下に置いとるんは何や?」

住吉「あ、これも土屋さんからもらったものです!今日1番役に立ちました!『これでマスター!豊玉攻略法!!』」

岸本「しばいたろかあいつ!!引退したくせに、なんちゅー嫌なやつや!!」

南(、、最後までしてやられたな、、くそ、何が俺らに憧れとるや、、はよ大学決めて待っとれ、、次会うたら、その時は、、)

大栄62-61豊玉

大栄、全国へ!


全国から、各都道府県で1番強いチームが集まり、ついに冬の選抜全国大会が行われた

が、優勝校は大栄でも海南でもなかった

あの男が、文字通り「壁」となって立ちはだかったからである

中村「優勝おめでとう!今の気持ちを聞かせてくれるかな?」

町田「決勝戦で河田兄弟の上からダンクを決めた時の気持ちはどんな感じ?」

相田弥生「身長はもう2mを越してるわよね?これだけの成績を残してる上に、高校1年生でその体格だと、NBAなんかも目指してるのかしら?」

森重「、、エヌビーエーって、なんだ?」





〜エピローグ〜

翌年2月

土屋(278、278、、※)

※土屋の受験番号。2(ツー)7(チー)8(や)。

278

土屋(あった!!あぶな、英語リスニング全然聞き取られへんかったけど、何とか受かったで!これでオカンを安心させられる。)

「よう。」

土屋「!?、、お前は!」

花形「国体じゃ世話になったな。お前、受かったみたいだな。」

土屋「誰かと思えば、神奈川のメガネやんけ。俺は受かったで。お前は?」

花形「受かってなきゃ声かけないさ。」(まあ、俺なら受かって当然だけどな(ニヤリ)※)

※公式の裏設定で、花形は翔陽の期末テストで学年1位をとっている

土屋「伊達にメガネをかけてないっちゅーわけや笑、ん?」

花形「お、あいつらもここ受けてたのか!」

土屋(、、デカいなあいつ、、このメガネぐらいある。見たことあるような気もするけど、もしかしてバスケ部か?)

木暮「やった!俺たち受かったぞ!!」

赤木「当然だ!」

土屋「、、はは笑、おもろなってきたで!」

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