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世界の映画祭を好きな場所で観られる贅沢!「We Are One: A Global Film Festival」

 新型コロナ禍は、映画祭のあり方にも大きな問題提起をしたと言える。映画祭というのは、まさに世界中の映画人が集まり、交流する場所であり、フィルムメーカーやプロデューサーは新しい企画をプレゼンして投資を募る場所であり、配給会社は自国で配給する作品を選定するショーケース的な役割を果たす。さらに、全てがワールドプレミアというごく一部のトップレベルの映画祭を除いては、映画祭のプログラミングディレクターが足を運び、自身が担当する映画祭で海外プレミアで上映する作品を探すことも多い。日本だけでも地方の映画祭まで数えれば数限りなくなる映画祭、海外ともなると、行きたくてもいけないというのが正直なところだった。結局、海外の映画祭に足を運ばなければ観ることができない作品を観ることができるためには、日本の映画祭で上映されるか、配給がつく以外にはなかったのだ。

 そんな敷居の高い海外映画祭の敷居を、ちょっとNetflixを見ようかぐらいの気軽さまで下げ、しかも世界が新型コロナウィルスの深刻な影響を受けはじめてからほんの2ヶ月ほどで、世界の名だたる映画祭を含め、計21の国際映画祭が参加するオンライン上のデジタル映画祭が立ち上がったのには、本当に驚いた。なんという行動力!日本からは東京国際映画祭が参加。つい先日、東京国際映画祭シニア・プログラマーの矢田部吉彦さんがYoutubeライブでオファーの裏側を明かしていたが、オファー時には他にどの映画祭が参加するかわからず、蓋を開けて錚々たる映画祭が参加していることを知り、声をかけてもらったことに本当に感謝をしたという話や、プログラミングのために与えられたのが4日間だけで、通常の映画祭準備時同様に本当に大変だったというお話、そして深田晃司監督特集(ワールドプレミア作品『ヤルタ会議オンライン』『いなべ』『ジェファソンの東』)や湯浅政明監督の短編アニメーション『夢みるキカイ』、長編映画に大九明子監督の『勝手にふるえてろ』、松居大悟監督の『アイスと雨音』を選出した理由について明かしていた。

 トライベッカ映画祭の開催母体であるトライベッカ・エンタープライズと、YouTubeが企画主催する10日間のデジタル映画祭。今回参加したのは、アヌシー国際アニメーション映画祭、ベルリン国際映画祭、ロンドン映画祭、カンヌ映画祭、グアダラハラ国際映画祭、マカオ国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭、エルサレム国際映画祭、ムンバイ映画祭、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭、ロカルノ映画祭、マラケシュ国際映画祭、ニューヨーク映画祭、サン・セバスティアン国際映画祭、サラエヴォ映画祭、サンダンス映画祭、シドニー映画祭、東京国際映画祭、トロント国際映画祭、トライベッカ映画祭、ヴェネツィア映画祭。みなさん聞き覚えのある有名な映画祭ばかりだが、その中でまだキャリアの浅いマカオ国際映画祭が、アジア圏の映画祭の中で参加しているのは特筆すべきかもしれない。釜山国際映画祭や北京国際映画祭、香港国際映画祭など、韓国、中国、香港の主要映画祭が参加していないのは残念だが、ムンバイ映画祭からはインド映画を観ることができそうだ。

 5月29日(日本時間では5月30日深夜)から10日間、「We Are One: A Global Film Festival」のYoutubeチャンネルで毎日アップされていく作品は、各映画祭がキュレーションした短編集や長編、VR作品から、ジャッキー・チェン、チャン・ツィイー、ポン・ジュノ&ソン・ガンホ、オリヴィエ・アサイヤス&クレール・ドゥニ、ディエゴ・ルナ、フランシス・フ
ォード・コッポラ、スティーブン・ソダーバーグ、ギレルモ・デル・トロ、ジェーン・カンピオンらが登場するマスタークラス(1時間ほどのトークセッション)など、実に多彩。どれもアップされてから1週間無料配信される。医療関係者への寄付を募るのが目的の一つでもあるのだが、残念ながら「この国や地域では現在寄付することはできません」という表示。

 外国語の作品はもれなく英語字幕が付く(画面下、右側の四角いアイコンを押すと出る。中には設定から言語を選ぶ場合もある)他、英語の作品でも、聴覚障害者用に英語字幕が用意されている作品もあるので、まずは画面下のアイコンをチェックしてほしい。私の場合は、英語字幕があれば長編でも観られるが、さすがに字幕なしでは厳しい。ただしトークセッションのように映画についての話に限定されている場合は、7割ぐらい理解できるかなぁという感じで楽しんでいる。短編の中にはセリフのない作品や、セリフの少ない作品もあり、観ているだけでも楽しいメリハリの効いた作品が多いので、まずは短編をオススメしたい。

http://www.weareoneglobalfestival.com/

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