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私たちは歴史のレイヤーの上で生きている。北白川派初の時代劇『CHAIN』

 アメリカの大統領選挙でバイデン氏が勝利宣言をし、まだ確定とは言えないまでも、2020年は政治の面でも大変革した年として記憶に残るんだろうなという感触を噛み締めながら、この日がリアル上映の最終日となる京都ヒストリカ国際映画祭に足を運んだ。お目当は、ワールドプレミア上映される京都芸術大学(旧京都造形芸術大学)映画学科の教授、学生、プロが協働で映画制作を行う北白川派第8弾にして初の時代劇となる『CHAIN』(2021年秋全国公開予定)鑑賞だ。

 先日TIFFの監督協会新人賞受賞トークで、『超高速!参勤交代』シリーズの本木克英監督が、京都の撮影所で時代劇を撮影することを猛烈に後輩監督たちに勧めていたが、コロナ禍でロケ地確保が難しい時に、撮影所のスタジオセットで映画を撮るのは確かに利便性が良いかもしれないと妙に納得した。京都ヒストリカ国際映画祭も元々は、松竹や東映の京都撮影所で時代劇を作る人材育成を目的にしており、今回学生たちとの協働プロジェクトで時代劇を撮ることができたのは、撮影所の多大な協力があったという。幕末京都が舞台の『CHAIN』は、新撰組と、新撰組を離脱した伊東甲子太郎率いる御陵衛士が七条油小路で抗争を繰り広げた油小路の変をもとに、当時の町民や娼婦、蔭間と呼ばれる男娼、舞妓などの人生模様が重なっていく青春群像劇だ。しかもユニークなのは、現在の京都が時々映り込むこと。京都という街自体が歴史的建造物や名所、抗争の地など、歴史の様々なレイヤーが重なっている場所であり、それを映画的に表現するとこうなるのかと妙に納得した。

 上映後のシンポジウムでは、学生の志願者が脚本部としてフィクションの人物像をそれぞれ作り上げたというエピソードや、現在の京都の街を入れ込んだ理由をはじめ、熱烈ファンが多い幕末時代劇の細部に渡る部分の検証も行われた。幕末の抗争ものとなると、どうしても男たちの話になってしまうが、その中で和田光沙、辻凪子、土居志央梨が演じる、社会的な階級は低いが実にたくましく、男の本音を見抜いている女たちの京女らしい、たおやかだが根性が座った女性像が皆秀逸で、粋だった。2021年秋公開予定、楽しみにお待ちください!

©北白川派


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