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新人女優賞受賞、津田晴香(『まっぱだか』)の魅力とは?

 今日発表された、大阪の映画ファンによる映画まつり「おおさかシネマエスティバル2022」にて、昨年関西で先行公開された映画『まっぱだか』の主演、津田晴香さんが新人女優賞に選ばれた。今年5月に東京ではK's cinemaでの公開が決まっている『まっぱだか』で彼女がどんな演技をしたのか。

 それを語るまでに、まず兵庫出身の津田さんのそれまでの出演作を見ておきたい。津田さんの映画初出演作にしてW主演を果たしたのが、伝説の映画『みぽりん』(松本大樹監督)だった。歌下手な地下アイドルのセンターメンバー優花がボイスレッスンと称して、六甲の山小屋にボイストレーナー、みほに監禁され、なんとか脱出を試みるサバイバルホラー。津田さんが演じたのは優花で、歌の下手っぷり(監督曰く本当は歌ウマなのだそう)といい、みほに難題をふっかけられたときのこなしっぷりや疑心暗鬼の表情といい、見事なコメディエンヌぶりをみせつけた。


 その後、元町映画館で生まれた学生団体、映画チア部の短編映画『KOBE OF THE DEAD』に主演。松本大樹監督によるリモート短編『はるかのとびら』では、『みぽりん』メンバーが出演する中、タイトルどおり津田さんの明日を照らすようなラストで終わる。片山大輔さんによるエンディング曲も素晴らしく、コロナ渦に突入したばかりの2020年5月に心が温まる短編。本人役だったこともありそのときの彼女自身の覚悟のようなものが見えた。
 同時期に出演した元町映画館発のリモート短編『アワータイム』では、オンライン飲みの設定で、高校時代の同級生4人のうちのひとりとして登場。途中で乱入するゲスト(出演者には事前に誰か知らされていない)に対してのアドリブぶりや、機転の効いた場の回しっぷりに、これまた上手いなと思ったのだった。


 そして、『みぽりん』を元町映画館で公開時に、『一人のダンス』で関東から神戸に車中泊して連日舞台挨拶にたち続けた安楽涼監督に出会う。この出会いが、作品として結実したのが元町映画館のおよそ半径500mの範囲で撮影された映画『まっぱだか』だ。もともと、元町映画館の10周年を祝ってゆかりの監督が映画館へ短編をプレゼントするという企画に、脚本段階で長編になったという安楽涼監督と片山亨監督(安楽さん出演の『轟音』で監督デビュー)の二人が、津田さんと柳谷一成さんのW主演で撮った「当たり前」って何だろうと考えたくなる物語なのだ。

© 2021 元町映画館

津田さん演じるナツコは、俳優を目指しながらバーでバイトをしている女性。バーのマスターの彼氏はナツコにはいつも笑っていてほしいと言うが、笑顔を求められれば求められるほど、それが本当の自分ではないことに気づかされていく。そんなナツコが出会うのは、元カノのことが忘れられず、彼女の幻想を追いかけてしまう俊。友人の吉田に「お前、めんどくさいんや」とゲキを飛ばされても、過去から逃れられない。そんなどん詰まりのようなふたりが少しずつ、本当にすこしずつ化学反応を起こしていく。

安楽さん、片山さんの共同監督・脚本作品だが、とにかく安楽さんはとことん突き詰めていく作風。演者の鎧を引き剥がしていくとでも言おうか。本作でも、今までの演技が上手い津田さんのいわゆるテクニック面から、その素の魂を引っ張り出すような演出をしている。撮影日数も非常に少なく、タイトな撮影の中、ナツコの心の声が発露する時、俳優として大きな何かを得たのではないかと感じるのだ。

 素顔はとても感動屋で、人懐っこく、でも繊細な部分がある津田さん。今回の受賞が、5月の東京公開に向けて大きな後押しになることを祈っている。





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