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一度暴走したら止められない集団心理を見事に映し出した『許された子どもたち』

 週明けの5月25日、緊急事態宣言が全面解除された。いまだアベノマスクは届かず、10万円の申請用紙も来ない。多分多くの人がそうであり、自宅で仕事をできる人、勉強できる学生たち、そして仕事を今は外でできない人たちがステイホームし、極力外出を控える。関西のマスク着用率もいまだ100%近い状態で、映画館も営業をしたと言っても、その対策に相当気を遣い、そしてキャパシティ、営業時間を減らして、赤字覚悟の状態だ。スポーツジムに至っては、いまだいつ開くのかという感じ。それなのに、7月から旅行に行きましょうだとか、収束しただとか、「新たな日常」ってね。どうも釈然としない。東京がロードマップステップ1ということは、映画館はまだということ。映画館で新作が公開されるのは早くても6月6日でほぼ確定となってしまった。

 そんな今日、初めて自分がホストになってのズームインタビュー。『先生を流産させる会』以来、8年ぶりに自主制作の新作で現在に大きな問いを投げかけようとしている最新作『許された子どもたち』の内藤瑛亮監督だ。元教師だった内藤監督が、『先生を流産させる会』を作っていた頃から温めていたという本作。様々な少年少女によるいじめ殺人事件や、被害者家族だけでなく、加害者家族に着目し、いじめを考えるワークショップを重ねて、出演者に演じてもらうことで、いじめる側の心理に気づいてもらったという。

 くしくも、週末にSNSの誹謗中傷により、プロレスラー木村花さんが命を断つという悲劇が起こったばかり。何気ないディすりが、大きく膨らみ、一度暴走してしまうと止められない悪意のバケモノになっていく。この映画では、例えばいじめについて考える学級会のシーン、または、冒頭で主人公が同級生を強い殺意もなく、殺してしまうシーンなどから、無自覚な悪意が人の心に潜んでいるということを痛烈に映し出す。「うちの子に限って」と思ってしまう親の心理であったり、自分で自分を許してしまうことについて等、特にコロナ禍でギスギスした今、自分を省みる意味でも、公開された暁にはぜひ観ていただきたい作品。ちなみに、エンターテインメントとしても躍動感、突き抜け感があり、特に主人公(加害者)の母親役は、観る者を揺さぶるに違いない。

『許された子どもたち』

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