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行定勲監督が最新作『劇場』で挑む、映画館とオンライン同時公開

 このコロナ禍でいち早くリモート作品を作り、積極的に発信を続けてきた行定勲監督。有村架純や高良健吾など豪華キャストのリモート共演が話題になった『きょうのできごと a day in the home』は4月24日にリリース。それから1ヶ月も立たぬ5月17日にはリモート作品第二弾『いまだったら言える気がする』をリリース。中井貴一×二階堂ふみという芝居巧者の魅力を存分に引き出し、ハットさせられた。そしてリモート作品第三弾はHuluにて独占配信と、最終的にはビジネスとしても成立させているのだ。

 行定監督といえばもう一つ、印象深いトークを見た。SSFF & ASIAトークセッションの第一弾で、映画祭のニューノーマルを探るという非常に興味深い企画に、熊本復興映画祭を立ち上げた行定監督もリモート登壇。その時に、この『劇場』公開が延期になり落ち込んでいたが、その落ち込みを払拭するためにも映画を作るしかないという気持ちで、自分のために作ったということを語られていた。面白かったのが、最初のリモート短編はなんの予告もなく、突然公開したことで、改めて今までどれだけ自分たちが映画の宣伝で観客に事前刷り込みをし、映画館に足を運んでもらっていたか。前評判に左右されて映画を選択する自分たちへの皮肉を込めて語っていたことだ。さらに、私が映画祭で「オススメは?」と聞かれた時、「時間の空いた時に、見れる作品を見てもらうだけで、思わぬ出会いがありますよ」と答えるのだが、行定監督も映画館も「ようわからんけど、この映画館でかかっているなら」と偶然観てしまった作品ほど、あとあと印象に残るものと、映画館はそんな新しい出会いを提供するところにも価値があるというのに大きく納得!

 今回とも関係する映画館での上映と配信についても、持論を展開していた。マーティン・スコセッシを例にとり、Netflixでやりたいことを、エッジを丸めることなくできているし、配信が先だからといって、それはやはり映画館で見るべき作品で、実際に映画館に足を運んで多くの人が観るのだと。さらに、配信は世界中が相手になることに注目し、「国内で2億円で映画を作ったら、100万人の動員が目標になるが、これからは、配信で多様性がキープできるようになる。誰にも理解できないような変な作品と、スターが出演するウェルメードな作品が同等になる。だからこそ、映画館は特別な場所になる」と、オンライン配信と映画館での上映に次の可能性を見出しておられた。7月17日に公開される『劇場』は、Amazon Prime Videoにてオンライン配信が同時リリースと、日本のメジャー映画では初の試みになるのかもしれないが、公開延期からコロナ禍で映画館が臨時休館の中の自身の体験、世間の動き、海外での動きも睨み、導き出した映画と映画館が生き残る「行定流、明日への一手」なのではないか。うれしいことに、シネコンではなくちょっとアングラな匂いのするお気に入りミニシアター、シネ・ヌーヴォでも公開されるので、私は劇場でしっぽりと楽しもうと思っている。


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