見出し画像

久々の生ピアノによるSILENT FILM LIVE はとてつもなく面白い冒険活劇『バグダッドの盗賊』

 雨続きの中の久々の晴天で、商店街も賑わう日曜。でも独自基準の大阪モデル初となる黄信号がともり、ようやく賑わいを取り戻しつつある映画館がまた休館にならないように、自分でできる予防策は変わらずきちんとしなければと思う。

 さて、昨年末から成田凌初主演作として劇場公開された、サイレント映画時代の活動弁士の悲喜こもごもを描いた劇映画『カツベン!』をご存知だろうか?サイレント映画を上映する際に弁士がセリフをのせるというのは、日本独自だったそうだが、楽士付きのサイレント映画上映は世界中で当時行われていたという。そんなサイレント映画の楽士として関西を中心に活躍されている鳥飼りょうさんが、元町映画館にて2月に1度ぐらいのペースで開催しているSILENT FILM LIVEが、今日の『バグダッドの盗賊』(1924)で第10回を迎えた。正確には、5月に上映予定だった第9回の『ピーターパン』が中止となったので、実開催数は9回なのだが、ともあれ、今回の『バグダッドの盗賊』は鳥飼さん自身が初演である上、ずっとやりたかった作品だったという。サイレント映画といえば、一般的に演奏付きで上映されるのは90分前後が多いのだが、この作品は2時間半の長尺なので、なかなか上映される機会がないそうだ。そんな鳥飼さん肝いりのこの作品、有名な「アラビアンナイト」をベースにした大冒険活劇。当時『三銃士』『ロビン・フッド』で人気アクションスターの座を射止めていたダグラス・フェアバンクスが、マッチョでちょっと能天気だけれど、王女に恋をしたことで変わっていく主人公の盗賊を鮮やかに演じる他、王女だけでなく、国をも手に入れようと目論む狡猾なモンゴル王役を日本人の上山草人が存在感たっぷりに演じている。上山さんは、本作で大ブレイクし、以降日本人以外のアジア系悪役を中心にサイレント時代はハリウッドで活躍、のちに帰国してからは、日本の映画界でも活躍したというハリウッド進出の黎明期俳優。

 この作品、興行的には成功しなかったそうだが、非常にお金がかかった作りになっていて、オールセットで宮殿から、後半は王女のハートを射止めるために、宝物を探すというかぐや姫のような展開で、巨大な大仏や、海中で遭遇するバケモノ、空をかける馬など、まあいろんなセットが登場し、CGなしの豪華美術や衣装を楽しめる。ツッコミどころ満載の活劇に、鳥飼さんのピアノが盛り上げてくれ、2時間半の間に譜面台が2回も落ちるほどの熱演。ラストのとんでもない展開は、笑いが起こるほどで、サイレント映画時代のエンタメ大作の面白さに、終わった後も「よかったねー」と興奮冷めやらずだった。もちろん密にならないように距離をとっての上映だったが、学校や公共のイベントでの演奏付き上映会が今は皆無になってしまったそうで、まずはやることに意義があるという。こんな大作なので、もっと大きな会場で楽しめるのが本当はいいのだけれど、今は我慢、我慢。また、鳥飼りょうさんによる演奏付きサイレント映画上映会を見つけたら、ぜひ参加してほしい。オススメです!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?