『修道院の花嫁』(1946年)

2012年5月2日(水) フィルムセンター

戦争の影がないことが印象的だった。
もちろん設定には戦後的状況があふれているのだが、暗さがない。

再会した友人たちに、再会の感動もそこそこに
「一緒に牧場をやろう!」ともちかける熱血漢の宇佐美淳。
ちょっと松岡修造的な熱血天然ぶりで笑える。

『雷雨』で好演していた鈴木美智子が、
好き合っているが優柔不断の小林桂樹(やせている!)に
イライラしている女の子役で、やっぱりかわいい。

若原雅夫はヤミ商売で食っていて、はじめは宇佐美の誘いを断る。
若原がバターを高値で売っていることを知り、
「それじゃ貧乏人が買えんじゃないか!
おまえが経済をダメにしている!」
と怒る宇佐美(客席に笑いが起きていた)。

宇佐美は若原の外出中に勝手にバターを持ち去り、
路上で格安で売ろうとするが、
安すぎることを逆に怪しまれて全然売れない。
ヤケになって「タダでいい!」とか言ってるうちに
愚連隊的あんちゃんたちに絡まれるが意に介さず、
「牧場やらないか?」とかまだ言ってて、
ボコられた挙句にバターも取り上げられる。

さすがにシュンとしてる宇佐美のそばに浮浪児がやってきて
「北海道に連れてってよ」。
はじめて誘いに応じてくれたのは、子どもだった。
それをきっかけに、今まで渋っていた人々も続々と誘いに乗り、
最後に、宇佐美の恋人だったが宇佐美が戦死したと思い込んで
修道女になっていた女性も北海道行きに加わり、
みんなで北海道の地を踏んで大団円。

ぼけっと見られる娯楽作だったが、清水宏的おおらかさがあり、
結構好きだ。

冒頭のシーンが印象深い。
遠くから牛たちが人に連れられてゾロゾロ歩いている。
もうひとり男が出てきて、牛を連れた男とこぜり合いになっているらしいが、遠景なのでよくわからない。
ここのシーンはなんか好きだった。

浮浪児が出てくるシーンにはやはり戦争の影を感じるが、
それ以外のシーンにはそれを感じない。
この明るさは、GHQからの要請とかなんだろうか。

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