『豊丸の何回でも狂っちゃう』(1989年)

2011年1月7日(金)

さすらいの旅を続ける女と男。
豊丸と池島ゆたか。
かつて二人は普通の恋人同士だったが、女は極度の淫乱体質で、男一人の身体ではとうてい満足できなかった。
女は、女の身体を求める男たちを転々とする旅に出る。
女を愛する男は旅を共にする。

妻に先立たれた富豪の男やインポになった男は、女の激しいセックスに大いに満足する。
女の大きなあえぎ声を聞きながら、煙草をふかしてコトが終わるのを待つ男。
あるとき、ふと男は「おまえから淫乱を取れば何が残るのか」とつぶやき、女は激怒。
洗濯に来ていたコインランドリーを飛び出してしまう。

戻ってきた女は、黒人男性を連れてきた。
ホテルで、男を尻目に黒人男性と激しく交わる女。

男はホテルを出て街をさまよう。
男は、かつて女がインポを治した男の妻と遭遇する。
インポが治った夫は、以前にもまして女狂いが激しくなり、もう家にも寄りつかないという。
それでも愛しているから別れられないという妻の話を聞き、男は自分とセックスしないかと誘う。
ホテルでの、二人の丁寧なセックス。
男を探して街をさまよう女。

家に戻り、夫の帰りを待つ妻。
夫が呆然自失気味で帰ってくる。
赤い玉が出て、もう精液が出なくなったと叫ぶ夫に妻は微笑む。
夫は、山本竜二が演じている。

女と男は、相変わらず旅を続けている。
妻に先立たれた富豪から再度お呼びがかかる。
男は3Pを提案する。
驚き、そして微笑む女。
客の富豪と、女と男の3P。

列車に乗っている男と女。
女は、男の肩にもたれて眠っている。
無表情でうたを口ずさむ男のアップ。
妙に人工的で幻想的な月夜の画面。
エンドクレジット。


素晴らしかった。
池島ゆたかの見事な演技。
激しい感情吐露は一切なく、豊丸のエキセントリックさと好対照。
この人の抑えた演技が、何よりこの映画の肝だと思った。

インポ男のエピソード(イロキチガイの夫への見せしめに、わざとバレるように浮気した妻。すると、夫はインポに。今度は、インポになり元気がなくなった夫がふびんで、豊丸を頼んでしまう妻)もいいし、池島が豊丸を怒らせるコインランドリーのシーンのオフビートなノリもすごくよかった(この男女のものすごい会話を、たまたま居合わせたコインランドリーの客の女が興味津々に聞いている)。

キム・ギドクの『悪い男』、喜国雅彦の『月光の囁き』を思い出す。
『月光の囁き』の男女逆バージョンだと思った。
ラストの3Pのなんともいえない感じ。
悲壮感というか、ある種のさわやかさというか。

脚本もかなり完成度が高い。
すべてのエピソードをきちんと回収しているキレイなつくり。
エロの要件もきちんと満たしていて、ピンク映画としても文句なしなんじゃないか。
でも、男とインポ夫の妻がすぐにはやらない、というのがいい。
シーンの合間に挟まれる、かつて普通の恋人同士だった女と男のあいびき場所の森?みたいなところの幻想的なカットもよかった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?