『暴行切り裂きジャック』(1976年)

2011年10月14日(金)鑑賞

桂たまきの鬱屈。林ゆたかの気弱。
殺人を重ねるにつれ、二人の関係がくっきりと逆転していくのが面白い。
はじめ、男に君臨していた桂たまきがどんどん男に服従していき
(それは、屈辱的な服従というものではなく、
女の本能のようなものとして描かれる。
性的欲求不満が完全に満たされたあと、
本来のものが出てきたというような)
はじめは気弱そうな林ゆたかがどんどん自信にあふれた能動的な存在になっていく。

自分に対して関心が薄れたかに見える男をつなぎとめるように女が男の股間をまさぐると、硬いものに当たる。
「?」と女が男のズボンのファスナーを開けると、殺人に使っているバターナイフがそこから出てくる。
はじめ、桂たまきと林ゆたかが共有していたかに思えたものは、ただちに共有不可能なものとなる。
桂がそれを共有しようとすることは、桂の死を意味する。

タイトルロールの文字が二つに割れてから消える演出、
後半の殺人で女の胸にナイフでバツ印をつけるのは、
黒沢清の『CURE』を思い出す。

実は鏑木創によるものらしい音楽もいい。
『みな殺しの霊歌』を思い出させるスキャット。
ラストの看護婦寮での殺人シーンのみ、グニョーンとした(何と呼ぶのだろう?)音楽。

殺人の描写は、別にエグくはない。
それだけじゃ死なないだろ、みたいにあっさりしている。
そこを描くことには興味がない、とでも言うように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?