『歌女おぼえ書』(1941年)

2012年5月11日(金) 神保町シアター

旅芸人の女がいる。
芸人の一座は路頭に迷い、先の見当がつかず、途方に暮れている。
偶然に宿で出会った茶問屋の主人が、女を自分の家に置いてやってもいい、と言う。
女は好意を受けて茶問屋に置いてもらうことにする。
仲間の男たちは、今後のめどがついたら必ず迎えに来る、と言う。

女は、行った先の茶問屋であからさまな差別を受ける。
子どもたちは、彼女がいるせいで学校でいろいろ言われる、と父親である茶問屋の主人に泣きつく。
人格者の主人は、そういうことには動じない。
主人の商売仲間の河村黎吉も、世間体が悪い、とかいろいろ言うが、主人は動じない。

しかし、主人は病に倒れ、あっさり死んでしまう。
東京の大学に行っていた長男の上原謙(若い!)が戻ってくる。
女は相変わらず家の者たちに邪魔者扱いされ、唯一守ってくれた主人も、もういない。 
上原にあいさつだけして茶問屋を去ろうとするが、上原に引き留められる。
女は、上原に妹弟の面倒を見ることを約束する。

上原は、やや唐突に女に「結婚しよう」と言う。
戸惑う女。
上原は東京の大学に戻る。

茶問屋は、上原が学問を修めて戻ってくるまで一時休業となる。
妹弟は、相変わらず女になつかない。
特に、年頃で友達の目を気にする妹が。
妹は河村黎吉に相談し、河村が妹弟を引き取ることになる。
女は「上原から預かっている」と引き留めるが、行ってしまう。
しかし、弟は「やっぱりうちがいいや!」とすぐ戻ってくる。
やがて妹も。
少しずつ打ち解けてゆく女と妹弟。

やがて、茶問屋の商標が欲しいという商人が現れる。
女は、商売再開のチャンスと、ほうぼうを駆け回り、
上原が戻る前に商売を再開し、うまくいく。

ある日、女は、河村の娘が上原のいいなずけであることを知る。
上原が戻る日がくる。
妹といいなずけの娘が迎えに行く。
女は、そわそわしながらも留守番する。
すると、旅芸人の仲間が来る。
しかも、女を迎えに来たわけではなく、金の無心に来ただけだった。
女は自棄になり、また旅芸人となる。

興行を打っていると、上原が女を探しに来る。
事情を知る女の同僚は気を利かせて、「今は結婚して○○にいる」と嘘を伝える。
蔭から上原を見つめる女。
同僚の嘘により、もう上原と会うことはないだろうと肩を落とす。

しかし、上原は同僚の言った○○の場所まで女を探しに来て、
そこで女が偶然に興行を打っていたものだから、二人は再会。
上原は「俺の女房はおまえだけだ」とプロポーズ。
いいなずけの存在を心配する女に、「彼女はもう結婚したよ」と上原。

晴れて二人は結婚。
最後もめでたい感じになるわけではなく、淡々と二人の結婚を字幕が伝えて終わる。
                                                                        

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