『南の島に雪が降る』(1961年)

2012年5月7日(月) ラピュタ阿佐ヶ谷

敗戦間際、南方の島で、もともと役者だった加東大介は、兵士たちの慰安のために即席の劇団を組織する。

そこに集まってくる人々。
「東北の団十郎」と言われたと自称する伴淳。
軍の中では加東よりエラいけど、劇団の中では加東に従うと言う有島一郎(有島一郎はやたら良かった)、西村晃、桂小金治。
俳優を自称する渥美清。
(渥美が名乗る人物を知っていた加東は、渥美がうそをついているとすぐに気づくが、今それを追及しても…ということで、うそを知った上で渥美を受け入れたりする)

三木のり平は、芝居見物大好きおじさんで、女形を見ると誰彼構わず「うちの母ちゃんにそっくりだ!」と言うのが可笑しい。

劇団のオーディションシーンも見どころになっていて、うまい。
審査員をやっている織田政雄が時折本気で笑っているように見えた。

フランキー堺、小林桂樹らの、すでに全滅していると報道されたが実際には生き残っていて、しかし、もうその全滅報道を覆すことはできず、死ぬのを待つしかないという、戦争の理不尽さを凝縮したような部隊。
この部隊の存在が、作品に大きなアクセントを与えている。

加東たちの即席劇団のもとにピアノが届く。
ピアノを取り囲んで皆がワイワイしていると、ピアノの音を聞き、ボロボロの身なりのフランキー堺がやってくる。
フランキーはもともとピアノ弾きで、超絶技巧を見せる。
皆驚き、劇団に入らないかと誘う。
フランキーは、部隊のために食糧を取りに来ただけで、部隊のもとに帰らないと、と去ってゆく。

後日、同じ部隊の小林桂樹がやってきて、劇団の人々が「あのピアノ弾きは元気か?」と尋ねると、小林が淡々と、ひょうひょうと、「死んだよ」と告げる。
(この「死んだよ」の軽さはすごいと思った。努めて軽く、というのとも少し違うと思う。小林桂樹の演技者としてのすごさを知った)

ラストは、小林の部隊の瀕死の隊員が、小林たちに付き添われ、舞台を見に来る。
舞台では、紙吹雪の雪を降らせる。
隊員は、雪に感激して死んでゆく。
劇団の者たちは、死んだ隊員を雪を降らせた舞台の上に横たえる。

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