『骨までしゃぶる』(1966年)

2012年5月7日(月) ラピュタ阿佐ヶ谷

貧しい農家の娘の桜町弘子が女郎屋に売られる。
女衒が汐路章。
女郎屋の主人が三島雅夫で、女将は三原葉子。
かつては女郎で、売れなくなってからは店のあれこれをやっている女が菅井きん。
先輩女郎に、宮園純子、久保菜穂子、沢淑子ら。
宮園純子、久保菜穂子はゾクッとするような美しさがあって、よかった。

宮園純子は、救世軍がまいていた廃娼運動のビラを隠し持ち、
桜町にこっそり渡す。
警察に逃げ込んで救世軍に保護され、足抜けを果たす宮園だが、
のちに久保の口から、再び娼婦に戻るしかなかった宮園の悲しいその後が語られる。

いいとこの奥さんだった久保は、夫の借金を背負って女郎になった。
桜町に希望を託し、脱出の機会をうかがえと教える久保だったが、
あるとき客によって殺されてしまう。
「あんないい姐さんをなんで!」と殺した客につかみかかる桜町だったが、
警察から動機を聞き、その客にも同情してしまう。
客の男は、貧しい中で女郎屋に行くことだけを楽しみに少しずつ金を貯めていたが、相手となった久保の態度は冷たく、ついカッとなってやってしまった、と。

桜町と恋仲になった夏八木勲は、桜町を身請けしたい一心で、
たまたま持っていた主人の金に手をつけそうになるが、
桜町はそれを律する。

よくある転落メロドラマになりそうな条件がゴロゴロ転がっているのに、
ヒロインが見事にそれをかわしていくのが小気味いい。

ラスト近く、警察で桜町と三島雅夫が対決する。
桜町が、かつて宮園からもらったしわくちゃの救世軍のビラの文句を暗記し、たどたどしくも、それによって三島を言い負かすところは感動する。
感動するけど一方で、組合運動の勝利的なストレートすぎるメッセージ性はどうなのか。
でも、映画としては成功していると思う。

ラストの、もみくちゃにされながらもなんとか逃げ切る爽快感もいい。
爽快感のためには、もみくちゃはとことん激しいもみくちゃでなければならないということ。

冒頭、桜町の水揚げの相手が、首にでかいこぶのある男なのがすごいと思った。
どんな客にも買われたら売らなければならない女郎という職業の過酷さがよく出ていると思い、ハッとした。

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