『港の日本娘』(1933年)

2012年5月5日(土) 神保町シアター

柳下美恵さんの伴奏つき上映。
この前に観た『警察官』の黒田京子さんの伴奏の、
前に出てくる感じに比べ、柳下美恵さんの演奏は、
映画への集中を妨げることなく、さりげなく寄り添う感じ。
この演奏も、とてもよかった。

『警察官』が男の友情ものであったのに対し、
『港の日本娘』は女の友情もの。

冒頭のシーンがほんとうに美しい。
港から巨大客船が出発する。
リボンを投げて見送る人々。
いつまでも見ていたくなる。

セーラー服の女学生たちの後ろ姿。
ぽつんと2人で歩く女学生の後ろ姿。
「気付けばいつも2人きりになってしまう」という字幕が美しい。
サラサラと書いたような字体もきれい。

及川道子演ずる砂子が、ヘンリー(江川宇礼雄)と恋に落ちる。
砂子の親友・ドラ(井上雪子)は少し寂しさを感じつつ、2人の仲を祝福する。

ヘンリーには悪い仲間がいる。
悪女のシェリダン耀子(沢蘭子)は、ヘンリーを誘惑する。
教会でいちゃつき、ふざけ合うヘンリーとシェリダン(教会がチャチ!)。
砂子はなぜか拳銃を持っていて、シェリダンを撃ってしまう。

そこから砂子の淪落人生が始まる。
横浜にはいられなくなり、神戸で夜の女として生きる砂子。

砂子の夜の女の風情が美しい。
首に巻かれたスカーフ、派手な振袖、アクセサリー。
砂子にはヒモ(齋藤達雄)ができる。

砂子は横浜が恋しくなり、戻る。
横浜では、ドラとヘンリーが結婚していた。
ショックを受けつつも悪ぶる砂子。
ドラとヘンリーは砂子の淪落ぶりを悲しみ、
まともな生活に戻ってほしいと願う。
何度も砂子を説得に行くヘンリー。
ドラは、砂子とヘンリーの愛の再燃を懸念する。

転がる毛糸のもとをたどってゆくと、
踊る砂子とヘンリーの足元に絡まる毛糸にいきつく。

砂子の隣の部屋に住む女が、なんとシェリダン耀子で、
もう砂子に過去の恨みはないらしく、
「私のようになったらおしまいよ」と言う。

いちどはヒモを捨てる砂子だが、ヒモを伴って横浜を船で去る。
それを見送るドラとヘンリーの後ろ姿で終わり。


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