『どっこい生きてる』(1951年)

2012年2月6日 銀座シネパトス

歯のない飯田蝶子がニカッと無防備に笑うのがいい。

冒頭の、おそらく早朝の新大橋に職を求める人々が走ってくるシーンはかっこいい。
新大橋に都電が走っている!
そして、窓口に押しかける人々の迫力。

『人情紙風船』の河原崎長十郎が、終始貧乏神が取りついているかのようなしんきくさい顔をしていて、あまりのしんきくささにかえってコミカルになっている。
服のぼろぼろ具合も気合いが入っている。

ニコヨンをやっていて生活が本当にカツカツの河原崎一家だが、踏んだり蹴ったりで家まで追い出される。
どうしようもないので、妻と子ども2人は妻の親戚の家に行ってみることにして、その間に河原崎はなんとか生活体制を整えられれば…となる。

河原崎は早い段階で旋盤工の職にありつけるが、給料日にならないと金が入らないのではそれまでの生活ができないので、前借りを頼んでみる。
働く前から前借りを頼む河原崎に、雇い主は嫌な顔をする。

仕方なく、同じく貧乏だが、なんか河原崎一家よりは明るさがある木村功の家を訪ねてみると、木村が飯田蝶子に頼んでくれて、飯田蝶子がニコヨン仲間からなけなしの金を集め、どうにかなる。

木賃宿で、就職の前祝いということで河原崎は隣の男からしこたま焼酎を飲まされ、べろべろになって「昔は俺もオモチャ工場をやっていて、工員と女中を使って…」と昔の栄光をすごい言うタチの悪い人と化す。
そして爆睡。
お定まりのパターンで、河原崎が目を覚ますと、金は何者かにスラれている。

ショックを受けつつ新しい職場に行くも、いちどは決まっていた就職を破談にされ、さらにショック。
雇い主の女房が、日雇いの汚い身なりの河原崎をうさん臭がり、雇うのを渋ったのだった。

飯田蝶子に事情を話すとケチョンケチョンにこき下ろされ、河原崎はさらにへこむ。
宿で酒をすすめてきた諸悪の根源男が盗みの話を持ちかけ、にっちもさっちもいかないので引き受けるが、河原崎だけが捕まる。
そして捕まった先の警察で、やはりキセルをして捕まっていた妻子と再会。
…というなんともしょっぱい展開。

行くあてもなくトボトボ歩く親子。
いつもの木賃宿に向かう。
盗みの相棒の男から金を山分けされ、また盗みの話を持ちかけられるが、河原崎はもう乗らない。
盗みで得た金で子どもたちにたらふく食わせ、明日は遊園地に行こうと言う。
夫の突然の大盤振る舞いを不気味に思う妻。
予感が的中して、やはり一家心中を決意していた夫に妻は考え直してほしいと言うが、「この金も盗みで得た金だ」と言われると、それ以上何も言えなくなる。

遊園地で遊ぶ子ども。
ものすごく暗い顔で、ものすごくブランコをこぐ父に子どもたちがドン引きしているシーンがいちばん面白い。怖い。

息子が川で溺れ、それを助けることで一家心中の決意がぶっとび、やっぱりとりあえずニコヨンしかないけど、なんとか生きていこうということでおしまい。
よかった!!

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