『踊子』(1957年)

2012年4月29日(日) フィルムセンター

横移動のカメラが美しい。

淡島千景演じる年増の踊り子と船越英二演じるダンスホールの楽団員のカップル。
ダンスホールの仕事は、いい年して続けるようなものでもなく、二人の間にはうらぶれた空気が漂う。

田舎から淡島の妹の京マチ子が上京してくる。
バスの車掌(確か)を辞めて東京に出てきた京を、振付師の田中春男は「いい体だ」と見初める。
田中とすぐに肉体関係になった京は、すぐにセンターの踊り子のポジションをつかむ。
一方、京にポジションを奪われた踊り子はダンスホールを去る。
仲間が京を見ながら「あんたもあの子みたいにできればねえ…」とつぶやく。
優しい淡島は、去ってゆく踊り子にお菓子を買って送る。

淡島の留守中、京は船越ともデキる。
京は手癖が悪く、アパートでも指輪がなくなり、京のしわざとにらんだ船越が京のひきだしから指輪を探し出し、アパートの管理人室にこっそり戻したりする。

京は妊娠する。
父親は田中だか船越だか、よくわからない。
京と船越との関係を知った淡島はショックを受けるが、優しすぎる淡島は自分が身を引こうとまでする。

京は子を産み、ダンスホールを辞めて芸者になる。
淡島は京の代わりに子を育てる。
淡島は、もともと子が欲しかった。
ときたま京がひょっこり戻ってきて、今度は芸者を辞めて妾になると言う。

淡島と船越は東京を離れ、田舎で暮らす決心をする。

時は流れ、保育園のようなところで船越がピアノを弾き、淡島が子どもたちの世話をしている。
京がこっそり訪ねてくる。
妾はとっくにやめたという京を、淡島は温かく迎える。
淡島は子どもに会うかと聞くが、京は固辞して去ってゆく。
おしまい。

浅草が舞台。
淡島の役回りは、姉であり、母であり、周りのすべてを優しく包み込むような、淡島千景お得意のポジション。
京マチ子の豊満な肉体。

印象的なカメラの横移動は、『港の日本娘』でも、『歌女おぼえ書』でも見られた。

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