『米』(1957年)

2012年2月8日 銀座シネパトス

生活苦から法を犯してしまう望月優子(漁で他人の領域まで入ってしまう?)
それが警察にばれ、望月は出頭を命じられる。
刑務所に入るのは免れたいが、それには金が要る。
山形勲は、望月が借りている土地を返せと前々からうるさい。
土地を手放せば山形が金を出すと言っているが、望月に土地を手放すことはできない。

望月の娘の中村雅子は、漁で溺れた江原真一郎を助ける。
相棒の木村功は溺れ死ぬ。
江原は、助けてもらった礼に、漁で儲けた金を置いて立ち去る。
中村はその金を望月に使ってくれと渡すが、意固地になっている望月は受け取らない。

ウナギを手に、おどおどと警察を訪れる望月。
入り口でウナギをぶちまけてしまい、いたたまれなくなる。
結局警察には行かず、逃げてしまう。
再度出頭命令がきて、望月は自死する。
心がいじけたようになった人が、ささいなことが気持ちがくじけ、逃げに向かってしまう感じはうまいな、と思った。

若さがあり余っているのに、次男坊ゆえに働き口がなく、くすぶっている江原真一郎と木村功。
江原に好意を寄せる木村の妹のギラついた感じもけっこうよかった。
その妹をあわれみ、「どうせあいつはロクな結婚もできないだろうから、せめていちどだけでも抱いてやってくれないか」と頼む木村。

望月優子の夫の加藤嘉は、体を壊し、ほとんど寝たきり。

木村功たちは、川を越えた村に女漁りに行く。
帰郷している、かつての恋人で今は人妻の女と、木村は小舟の上でセックスする。
江原は、そこで中村を見て恋心を抱く。
意外に生々しい描写が多い。

今井正の初カラー作品とのこと。
色が淡い。
絵葉書のような美しい風景。
望月優子の、負のスパイラルから抜け出せなくなっている人間の表現がうまかった。

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