『知られぬ人』(1927年)

サーカス団。
団長の娘(ナノン)のジョーン・クロフォードに団員の男たちが思いを寄せる。
腕なし男も熱烈に彼女を愛する。
ナノンはどういうわけか男性嫌悪のケがあり、男が腕力を誇示して彼女をモノにしようとすることに強い嫌悪を感じている。
腕なし男には実は腕があるが、男の手を嫌う彼女に好かれようと、それを隠している。

団長が腕なし男に暴力を振るう。
怪力男が間に入り、腕なし男を助ける。
怪力男もナノンを愛している。
腕なし男は「彼女を抱き締めてやれ」と怪力男にけしかける。
ナノンの男性恐怖症を知らず、ストレートな愛情表現をする怪力男。
ナノンは逃げてしまう。
それを見てほくそ笑む腕なし男。

腕なし男は、腕を出しているところを団長に見られ、団長を殺す。
その後ろ姿をナノンに見られるが、顔は見られなかった。
腕なし男の親指は、爪が二つの奇形である。

腕なし男は、ナノンとの結婚を望むようになる。
しかし、結婚すれば実は腕があることはすぐにバレてしまい、さらに指の奇形を見られれば、団長殺しが彼のしわざであることもバレてしまう。

腕なし男は、腕を切断して本当の腕なしになることを決意する。
彼が手術と入院で留守にしている間、怪力男はナノンに熱心に愛をささやき、ついに彼女の男性恐怖症は克服される。
二人は結婚の約束をする。

腕なし男が退院する。
ナノンは無邪気に怪力男との結婚を告白する。
あまりのことに発狂したように笑い続ける腕なし男。
腕なし男の絶望を知らない二人は、その異様さに驚く。

怪力男は馬を使った新しい芸を考案する。
その芸をやっているときに機械を止めて怪力男を殺そうとする腕なし男。
しかし、死ぬのは馬に踏みつぶされた腕なし男のほうだった。
ナノンと怪力男が永遠の愛を誓い合うところで映画は終わる。

腕なし男には彼の手下のような小男がいる。
この男が、自分がおそらく一生獲得できない女を、その代理として腕なし男が獲得することを望む、という歪み。

腕なし男を演じるロン・チェイニーの狂気の笑いはすごい。
ジョーン・クロフォードの美しさ。

冒頭の、ロン・チェイニーとジョーン・クロフォードのナイフ投げのシーンはセクシー。
『橋の上の娘』の官能を思い出す。

腕なし男には本当は腕があり、それは奇形で、そして女への愛の成就の代償に腕を切断して本当に腕なしになった経緯は、腕なし男、手下の小男、医者の3人以外は誰も知らない。

愛の成就のために腕を切り落とす男。
しかし、その行為は報われない。
彼にはもともと奇形があった。
先天性の奇形を隠すために、後天的な事故によるものとして腕の切断を装う。
この奇形への強いコンプレックスが、おそらく男にはあった。
先天的な奇形を受け入れられない男は、自分には障害があるが、それは事故という外部の影響によるものである、ということにしたかった。
そして、美しい女が男性恐怖症であるということに、男はものすごいチャンスを感じた。
男にとって、その病の状況は治ってほしくないものであった。
そこのものすごい歪み。

しかし女は、健全そのものの男の存在によって、病を克服してしまう。
(メモはここで終わっている)

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