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不思議の国カナダはカナダ人にとってもミステリー

今日から、わたしたちのチームに新しいスタッフが入った。今まで学校で教育アシスタント(スペシャルニーズの生徒の世話係。介護士のようなイメージ)をしていた50代の男性で、今後クライアントのアクティビティの担当をするそうだ。最初その話を聞いたとき、週に1日か2日くらい来て言語訓練とか嚥下訓練をやってくれるのかと思っていたのだが、フルタイムで働くらしい。一人の重度発達障害者のために、3人のケアギバーに加えてアクティビティ専門のスタッフを雇える・・・一体これはどういうことなのだろうか?
アクティビティのために自宅外のスペースを借りて学校に通うような形でやりたいという。一体どこからそのような個別のプロジェクトのために資金が出るのか不思議だ。その場所の選定のために、今日はその新しいスタッフと一緒に町の中を見て回った。

そもそも、カナダだけではないのだが、重度身体障害児が成人になると学校を卒業してしまうことになるので、受け皿がなくなってしまう。医療的ケアも必要だし、障害が重いのでいくら成人年齢に達したとはいえ、一般的な授産所や職業訓練所には通えない。色々探してみたけれど、クライアントにふさわしいプログラムはなかった。なので、自分たちでやろうということなのだ。

ケアマネみたいな人はいるんだが、地域のコミュニティでどのようなリソースが使えるかといった情報提供はしてもらえないらしい。なので、なんか変な感じなのだが、自分たちで公民館などを回って安く借りれそうな場所を探す。公共のスペース以外にも教会なども部屋を貸してくれそうなので回ってみる。(しかしどこの教会も、今日は休業日だった・・・)
地域のスポーツセンターが一番有用で、障害者用の着替え室もあり、アクティビティのために貸してくれる部屋もあった。
さらに、町にリソースセンターという場所があって、スペシャルニーズのために様々なリソースを紹介してくれる場所らしい。それで行ってみたら
「ここでは、扱ってない。地域のヘルスセンター(エマージェンシー)でデイケアをやっているからそこがリソースだ」と言われた。
その時点でわたしは「あそこでやってるわけないだろ・・・」と思って車で待機することにした。ただでさえも体調が悪いクライアントをエマージェンシーのある施設に連れて行きたくない。

案の定、重心のためのデイケアやリソースに詳しい人は誰もいなかったそうだ。なんとまあ、オルガナイズされていないんだろう・・・この国は・・・と思いながら一日、町の案内ドライブする。

新スタッフは、自分たちで100%デイケアをやるんではなくて既存のリソースを使いたいという意見だ。私も賛成したいところだが、そのリソースがないのだ。だから、きみに白羽の矢が立ったのだよ・・・ないから自分たちでデイケアを立ち上げる。。。とりあえず、わたしはSTとPTに来てほしい。最近のクライアントは、唾液が多すぎて呼吸困難を起こしかける。唾液があふれる原因は、逆流性食道炎や腹部膨満、どうやら頸部の筋力低下だとわたしは思っている。そこらへんをアセスメントしてもらって、予防やリハビリを行っていきたい・・・関節拘縮も進んできているし。言語訓練よりも優先的にやらねばならないことがたくさんあるのだ。

話変わって、先日おかあさんが、
「不思議なことが起きたのよ。昨日GJ チューブが届いたのよ」
という。
GJチューブというのは、胃ろうと腸ろうチューブがくっついたデバイスで栄養や薬は腸に留置したチューブに注入し、胃からはガスや過剰に分泌された胃液を排出できるようなチューブが出ている。そのチューブを、数ヶ月に一度病院で入れ替える。入れ替え用のGJチューブはこちらで発注して交換時病院に持参することになっている。
ところが、3月に発注して以来、1ヶ月待っても届かず、発注した同僚が再三問い合わせてもメーカーから入ってこないの一点張りで埒が明かない。お母さんがFacebookコミュニティで聞いたら、他の障害児の親たちも困っているという。結局違うタイプのチューブを使っている親もいるということで、別のものを発注することに・・・

この辺の事情がよく分からない。日本だったら胃ろうのボタンは手術した医師が決めると思う。入れ替えも医師が行うからだ。腹部に開けた穴のサイズに合わせてチューブのサイズが決まるはずで、腸ろうもあるので患者の体格や腸の走行にマッチしたものを選ぶ必要がある。医師が決めなくて、こっちで勝手に決めていいのか・・・謎だ。しかも、よくよく聞いてみると最初のGJチューブは、どれが合うか分からなくてとりあえず購入したものを使ってみているらしい・・・そんな・・・そういうもん???なんかストマ(人工肛門)みたいだな・・・

それはさておき、ある日お母さんが、
「ちょっと聞いてよ!あのGJチューブ、ずっと前から採用中止になってたんだって!だから入荷しなかったのよ。誰も教えてくれなかった。ダイエティシャンが教えてくれるべきじゃない?」と怒り心頭だ。クライアントが使用している医材(シリンジやおむつ、ガーゼ、導尿カテーテルなど)は年間決められた数量は無料で健康保険関係の担当から入手できる。だから、お母さんや同僚は、定期的にそこに電話して必要なものを配布してもらう。(電話というのがまたカナダらしいのだが・・・)
ダイエティシャン(栄養士)は、クライアントの栄養剤やサプリメントの選定に関わっている。定期的に栄養状態を確認しているらしいのだが・・・
(ちなみに、クライアントは採血を年に1回程度しかしていないため、栄養状態の確認がどのように行われているかは、全く持って不明だ。というか、摂取カロリーが低い割に腹部がかなり出っ張っているため、肥満傾向だと思う)
で、話は戻るのだが、栄養チューブの種類や太さ、消化管の働き具合に合わせて栄養剤の形状(半固形か、リキッドか、薄めるかetc)が変わってくるから、ダイエティシャンがチューブの選定に責任を持っているらしい。

とりあえず、今まで使用していたGJチューブが保健局で採用中止になっていたのに、誰も教えてくれなかったので発注し続け、いつまで経っても入荷しなかった・・・という落ちだ。で、仕方なく別のメーカーのチューブを発注したところ、昨日になって
"3月に発注したチューブが届いた"ということだ。
実に5ヶ月経っている。しかも、採用中止になって入荷しなかったというのにどういうことなのか・・・
まさに「Mystery・・・」

なぜこのようなことが起きるのか、不思議だけど追求する気にもなれない。聞いたところで誰もわかってないのだ。カナダはほんとに謎の国。


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