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重度発達障害児にYes, Noを教える専門家をSuperviseする

私のクライアントは、話すことができない。幼いときにてんかん重積状態となって昏睡状態になったのち動くことも話すこともできなくなったそう。その頃まだ1歳ぐらいだったのでまだ言葉の獲得にも至っておらず、知的障害も合併する病気なので知能レベルは2−3歳児だという。

今まで2年間ケアギバーとしてお世話してきたが、お母さんのプライオリティは発作のコントロール、クライアントが快適に過ごすことであり、知的発達面に関してはあまり熱心ではなかった。諦めているという感じに近い。
でも、将来のことを考えたとき、家族以外の他者とコミュケーションをとれた方がいいし、いくら重度の障害があるといっても発達していく可能性はある。

昨年からケアチームに入ったコミュニティサポートワーカーが、聴力障害や発達障害児のケアを長年やってきたということで、コミュニケーションスキルの向上をサポートしてくれる団体を紹介してくれた。さっそくSpeech- Language Pathologistが来てアセスメント。助言とツールの導入をしてくれたのだが、四肢麻痺に近い状態で首しか動かせず、不随意運動も多いということでボタンやスイッチの導入は諦めた。もともと、視線で選択したり要求したりすることがなんとなくできるので、Yes, Noのカードを使って意思表示できるようにトレーニングすることにした。これは、一筋縄ではいかない。

ところが、実際の指導は私たちがやらなければならない。
まず、Yes, Noの概念を知らないようなのでそこからゆっくり始めていく。
てんかん治療薬の副作用で眠気が強い時があるのと、発作後の意識レベルの低下などがあり、疲労がなく意識がクリアーな時間帯にトレーニングをするのが理想だ。
それは、午前中なのだが、私の勤務は遅番なので、午後は昼寝、夕方は日中のアクティビティによる疲労でぼんやりしている。コミュニケーション面のトレーニングは、専門家である同僚が担当することになった。だけど、その同僚がさっぱりトレーニングをやらないため、半年間何もせずに過ぎた。
何度か「やらなくていいの?」と確認したが、
「第一段階はクリアしているから大丈夫」
との返事。
彼の行動を見ていると、ゴミ捨てや掃除とかの雑用ばっかり熱心で、教育の専門家のはずだが一向にトレーニングをやる気配がない。
2度目のアセスメントがあり、ツールの評価が行われ、Cerebral Visual Impairment(CVI)がある可能性が示唆された。新しいツールが送られてきた。
やっぱり、トレーニングを始めないので、だんだん疑問が湧いてきた。
カレッジ卒業後、たくさんのコースを取ってcertificateを持っていて、経験も豊富だというけれど嘘じゃないの?例えば、2、3日やっただけでも経験があるという人もいる。あるいは、経歴は嘘じゃないけれどどうやっていいのかわからないとか、根気がなくてできない、ちょっと集中力に欠けているとか?カナダの"専門家"は、結構いいかんげんなことがある。

とういうことで、私は”専門家”のSuperviseをしなければならないことに気がついた。なので、彼とトレーニング時間、方針について再確認を行った。

・クライアントの意識がクリアーなとき
・根気良く継続する(数年かかる可能性がある)
・やり方を統一する
・気が散らないように、一対一でやる
君がイニシアチブを取るのだよ(看護師は、薬剤の準備や身体面のケアがメイン)
・集中できる時間は短いから(15分程度)、短時間でさっと行う

そして、これらのことを確認した上で、毎日行っているかどうかチェックする。
ところが、彼は、毎日はやっていない。
「今日は、時間がなかった」
「体調が悪くてできなかった」
などと、できなかった言い訳をしてくる。
実質週2回程度しか行っていないのではないか?
一体なんのために、あなたは時給36ドルで雇われているのか。
ゴミ捨てなんか後でいいから、私に「今やんな!」って言われないとできないのだろうか。医療や身体的ケアに関しては、ハッスルするんだが。

この専門家に、仕事の優先順位を教えてあげなければならないのだろうか・・・たぶんそうだ。今は確信に近い。
別の同僚は、毎日の掃除や物品の交換などを全てリストに挙げ、スケジュール通りにこなすことにこだわっていた。家庭なので掃除や洗濯は、汚れたら行うというレベルでいいのだが、もしかしたら具体的に作業としてリストアップしなければ永遠にやらないというのがカナダ流なのだろうか。

文化が多様なので、そういうことがおおありかもしれない。
Aさんがきれいだと思ってもBさんは汚いと思う。
Bさんがやらなくてもいいと思ってもCさんはやらなければならないと思う。
継続性、集中力、結果の確認とかは、特に言われなくても日本人はやってきていた気がする。

週2回程度の訓練では、あまり意味がない。結果、私もフォローのために夕方の短時間にYes, No訓練を行うことになる。答えを引き出すのに有効なYes.NoQuestionも探さなければならない。絶飲食なので
「食べたい?」「おいしい?」などのQuestionも使えない。
この訓練の準備を行うだけでも、学位を取れるぐらい勉強が必要な気がする。


Superviseか。
めんどくさい。
なんで、新人でもないおっさんの監督しなきゃならないんだろう。
仕事増やすなや。



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