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ドラベ症候群の発作の実際

夜勤をやっていると高確率でてんかん発作に遭遇します。
ドラベ症候群は、薬で発作のコントロールができない難治性てんかんです。1歳までに発症し、痙攣の回数は1日数十回数百回にも及ぶらしい。成人前に命を落とす人も多いそうです。
私のクライアントは、19歳になりました。サバイバーです。

成長とともに発作の回数が減って、思春期に入る頃から発作は主に夜間起きるようになったようです。近年は発作は週に1,2回のペースだったのですが、最近多いです。毎日のように起きます。発作のトリガーは、人によって様々だそうですが、私のクライアントの場合「熱」です。ですから、体を温めすぎないように気を使います。

今日は2回も発作が起きてしまいました。
日中から相当眠そうにしていたので、なんだかいつもと違うと思っていたのですが、20時すぎに1回目。音も立てず、声もあげずに眼球反転。拳を振り上げて硬直しています。これが、Tonic-Clonic Seizure、強直間代発作です。
就寝後はベビー用モニターで観察していて、発作が起きたら時計を見て時間を計りながら様子を見に行きます。プロトコルでは、5分続いたらミダゾラムという鎮静剤を鼻腔に散布することになっています。今日1回目のseizureは、15秒ほどで終わりました。呼吸も停止せずSPO2正常。脈だけ150を超えました。
今晩は、発作がおきそうな気がしていました。
クライアントは慢性的な尿路感染症(UTI)があります。発熱はないのですが、何らかの感染症があると調子が悪くなります。おまけに、ここ数日喉にたんや唾液が溜まってゴロゴロしている。風邪を引いたかもしれない。なにしろ、また新型コロナが増えてきているのです。夜勤のナースが2人コロナにかかってしまったそう。うちの息子もコロナ検査はnegativeでしたが、39℃の熱が出ました。
クライアントは、短い発作後一旦深い眠りに落ちて、やれやれと思った矢先、今度は腕が怪しい動きをしています。Twichingと表現していますが、これもわたしは発作だと思っています。ここの家庭では、Seizureといえば、T/Cのことのみ指すのです。手足のピクつきはミオクロニーと言われる四肢の不随意運動で、クライアントはしょっちゅうあります。パルスオキシメータのアラームが鳴らないので呼吸は大丈夫そうですが、ピクつきから大発作が起きそうなのでお部屋に駆けつけます。意識があるかどうか、視線を合わせようとすると、
「バシ!」腕を叩かれて懐中電灯代わりにしていたスマホを叩き落されてしまいました。その音に驚いたのか、さらに腕を大きく揺らしています。やはり呼吸はしています。顔を覗き込むと、今度は顔をパンチされてしまいました。もともと自分の意思ではほとんど四肢を動かすことができないため、もちろんわざとではない。もし、意識消失していたらミダゾラムの準備をしなければなりません。クライアントは喋れませんから、意識障害があるのかどうか、判断が難しい。腕のピクつきは、日中も起きることがあり、クライアントのお母さんはピクつきぐらいでは発作とはいいません。とりあえず、呼吸はしてるしピクピクしてるだけだな、と思った矢先またT/Cという大発作が。1分続いて、落ち着きました。発作時SPO2がガクンと下がることがあるので、パルスオキシメーターをチラ見しながらまた発作が起きないか見守ります。ミダゾラムを投与するとなるとプライミングをしなければならないんです。また、SPO2が下がったら酸素も投与します。発作が落ち着いたらサクションもしたほうが良いようです。

プライミング:こちらの家庭では、ミダゾラムのバイアルからシリンジに吸い上げて鼻腔に散布するためのアダプターのようなものをつけて投与します。このクライアントの場合、T/Cが1分以上続くことはほとんどないため私自身一度も投与したことはありません。

ミダゾラム投与後は、大体発作は治まって眠ってしまうそうですが、それでも発作が止まらない場合は、もう一回ミダゾラム、30分以上続いたらフェノバルビタールという手順になっています。

今回は、投薬も酸素も使用しないで済みました。2回目の発作後は、数分間ハイテンションになって笑ったあと、眠りました。発作の後泣いたり、ゲラゲラ笑ったり、とても機嫌が良くなったり様々です。

日付変わって、夜勤のナースに交代です。彼女は、スロバキア人。誠実そうな感じのいい人です。英語が堪能で素晴らしい。
朝(なぜか準夜のあとの早番でした)引き継ぎした際には、深夜2回発作があったとのこと。1分以内でした。一晩に4回か・・・
口の中は白っぽいもので汚れているし、鼻も詰まっている。痰も粘ちょうなので風邪か何かに感染したような気がします。

発作の翌日は、けろっとしていていつもと変わりなくかわいい女の子です。ただ、SPO2が下がった場合や発作持続時間が長かった場合は、翌日たん絡みになって呼吸状態が悪くなってしまうことがあります。意識消失している間、誤嚥しているんでしょうね。

クライアントは、新型コロナにかかった後から、疲れやすくrefluxも多くなりました。去年までは、1日中外出もできたのに、今は3時間も外にいると体調が悪くなります。唾液分泌量も増えて、すぐゴロゴロしてSATが低下。新型コロナはすぐに回復したのに、なんとも残念な後遺症です。肺炎を起こしてしまうと、発作が必然的に増えますから誤嚥しないように気を使います。サクションはありますが、お母さんはあまりサクションは好みません。唾液を自分で嚥下してほしいからです。こういうところが、病院と家庭との違いでしょうか。


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