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カナダのダークサイドーRoyal BC Museumに考古学とFirst Nationの展示がなかった

昨日初めてVictoria にあるRoyal BC Museumに行ってきました。VictoriaはBC州の首都で、Museumは国会議事堂の隣りにあり、とても規模が大きいものです。

日本で言えば、上野の東京国立博物館ぐらい大きいと思います。
それで、全部を見て回るのに数時間かかると見て、年間パスを購入しました。

Websiteによると、自然史、恐竜、近代史、そしてFirst Nationに企画展という大盛りだくさん。Museum Shopも2か所もあります。

自然史と恐竜はさほど興味がなかったので、考古学の展示を探しましたが、いくら見ても見つけられません。ガードマンに聞いたら今は閉鎖中とのこと。案内図をよくよく見ると、博物館の大部分が閉鎖中でした。
Websaiteには、一部展示が閉鎖中としか書いておらず、博物館のチケット売り場にも展示の半分以上が閉鎖中であるとは書かれていませんでした。

「えー、年パス買って損したー」とまず思いました。


年パスは、付属のIMAX Theatreの見放題も含めて大人で110ドルもするからです。

いくら、閉鎖中でも少しぐらい展示あるだろうと思い、入口のチケット係の人に聞きましたが「今はやってない。Late this year に一部再開すると思うが、いつ再開するかもわからない。いつから閉鎖しているのかもわからない」との返答でした。えー、そんな長期間閉館しているのか!先史時代の展示と言えば、国の博物館にとっては最も重要なものではないのですか???

フロアをウロウロしている係員に聞いてみても
「たぶん、6月に一部再開する。」
との返答。
「First Nationじゃなくて、Ancient historyたとえば、土器や石器などもないのですか?」
考古資料だったら何回も来て見てみたいですが、動物の剥製の展示とか、China townの復元展示とかはそこまで何回も見なくてもいいです・・・正直。

いつから閉鎖してるのかもわからないし、いつ再開するのかも誰にもわからないようです。
おまけに、UBCにある人類史博物館も閉鎖中なのです。
これでは、カナダの古代史や先住民の歴史を学ぶ場がないことになります。

さすがに、変だなと気がつきました。
ニュースを検索してみると、博物館の移転計画があったけれども大金がかかることや先住民への収蔵物の返還が進行中との記事がありました。

そうなんです。
やっぱりこれか・・・

収蔵資料は、先住民のものだから先住民に返還する必要がある。
だから、征服者であるカナダ政府は展示できないのです。

博物館の老朽化もそうでしょうけど、各地から集めた先住民の遺物を返還するのに展示の大規模な変更があるようなのです。
過去に先住民の国から違法に取り上げたものとか、植民地主義的な展示とかがあったのかもしれません。

そういう事情なら、この問題は全然進展しないのかもしれないなと思いました。
そもそも、私は考古遺物と先住民の遺物とは一緒にされるべきではないと思うのですが、カナダではそこが分離できないのでしょう。
アジアやシベリアなどからアメリカ大陸に渡ってきた人たちは、いっぺんに移動してきたわけではなく、あちこち経由してカナダ国内でも数百年、数千年かけて移動したわけでその間に集団間で言語や文化の違いが生まれていきました。ですから、1万年前の遺跡と現在のFirst Nationが直接つながっているかどうかは不明です。

しかし、ここカナダでは先史時代の住民を自分たちのルーツととらえるかどうかというと、あきらかに白人のルーツではない。たぶん先住民の一部のルーツです。だから、考古遺物は先住民に帰属するのでしょう。

この点は、日本の事情とは大きく異なります。日本の博物館が、当たり前のように旧石器時代から始まって縄文時代、弥生時代、古墳時代と時系列に展示するのは、日本人が列島の古代人をいわゆる和人とアイヌの共通の祖先として認識しているからです。

日本でも、アイヌの遺骨を博物館や大学などの研究施設から返還する動きが出ています。アイヌの人骨は、多くは明治時代に墓地から発掘され研究に使われ大学に保管されたままになっていました。この問題も、完全には解決されてはいません。

遺骨や副葬品を、アイヌに返還すると言っても簡単なことではありません。引き取り先であるムラや子孫がもうほとんど残っていないのです。また、遺物を展示する場合は収蔵保管施設が必要です。ただ返せばいいという単純なものではない。カナダも同様だと思います。

北米における旧石器時代人の移動やその後の文化のなりたちは非常に興味ぶかい分野です。日本列島の旧石器時代文化との比較もしたいですし、カナダのFirst Nationの文化も学びたい。しかし、BC州の首都圏でそれを行うのは、しばらくは困難でしょう。

今回の博物館の件は大変残念な出来事でした。
でも、また一つ勉強になりました。
戦争と侵略、先住民の文化とテリトリー、植民地、古代遺物の帰属問題、異文化理解と博物館。人骨の調査と人間の尊厳。

私も、千葉県の縄文時代の遺跡を発掘していて、人骨を掘り当てたこともありますし、北海道では縄文時代の集落遺跡から骨壺と思われる遺物、その上層からアイヌ期1600年頃の遺跡を発掘したことがあります。ちなみに、日本では発掘調査で得られた遺物は「拾得物」扱いとなります。

なお、Royal BC museumには、料金が発生しないエリアにおいて、トーテムポールの展示があり、ロビーではNirst Nationの言語の音声資料の公開が行われていました。

現在公開されているのは、黄色と水色の部分だけ。一部、企画展の自然写真展あり

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