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(私たちの)土佐日記

キャンプがはじまる。
我らが愛しの阪神タイガースは一軍二軍ともに沖縄へ日程を移し、2023年・新生"ARE"岡田タイガースが始動。まことに楽しみな瞬間である。

そんな今日、2月1日、ふと想いを馳せるのは他でもない。去年まで二軍春季キャンプを支えてくれていた高知県安芸市の安芸市営球場、別名安芸タイガース球場のことだ。1965年から長きに渡り阪神タイガースのキャンプ地として親しまれてきたこの球場は、2011年に一軍の春季キャンプを、2022年にニ軍の春季キャンプを見送ることになる。昨秋の短い秋季合同キャンプを無事終わらせた同球場は今季、2月からペナントレースが決着するまで、そっと傍で見守る球場となった。



2016年

ここに一冊のアルバムがある。
安芸のキャンプ地で撮りためた写真をファイルしたものだ。表紙を飾っているのはこの年、2016年NPB新人王に輝いた高山俊選手。私の好きな推し選手でもある。💛

入団したての高山選手は初の春季キャンプを安芸で迎えた。が、すぐに一軍に呼ばれ沖縄へ。再び安芸の球場にもどってきたのはシーズン終了後の合同秋季キャンプだった。彼にとっては球団記録を更新する活躍をみせたルーキーイヤー、安芸へは凱旋といっていい。が、高山選手は爽やかだった。いかにも新人らしい立ち振る舞いや懸命な姿は、練習中も練習後もギャラリーたちの心を掴んだ。

まばゆいばかりの背番号9

練習のあと、ファンサービスの時間があった。

私も並んでサインを頂いた。あらかじめ買っておいた色紙に、丁寧で美しい文字が息づいてゆく。
ひときわ心を動かされたのはペンを持つ右手の、汗と赤みを帯びた指先。高校球児のような直向きな手だった。
真っ白な色紙を受け取るときも、ひとすじの生命を宿らせて返すときも、高山選手はしっかりと目を見て応えてくれた。それはこの日、最後までスタンドに残って、自分だけの居残り練習に付きあってくれたファンの一人ひとりを焼き付けようとする"まなざし"だった。


高山選手のほかにも、安芸キャンプでの思い出は多い。一緒に写真を撮ってくれた選手のスナップも増えた。

タイミングよく、14日に安芸を訪れることができた年は、プレゼントも持参した。


タイミングよく2月14日

印象的、というより超絶うれしかったのは永遠のミスタータイガース・掛布雅之元二軍監督とのひとときだ。本命とも義理とも違うチョコレートを渡すことができた。監督は「エエっ!!」と大袈裟にのけぞり、笑顔で受け取り、これは!ありがとうございます!!と、私の顔を見て言った。
私は舞い上がってしまった。
まさか自分の人生のなかで、あの掛布選手と、話せる時間が訪れるとは。

感無量であった。




ありがとう安芸

たくさんの、色鮮やかな思い出が詰まった安芸タイガース球場。
高台のグランドからは太平洋も一望できる。


人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香ににほひける

雅な歌人なら、土の香り と詠んでくれるだろうか。


沖縄でキャンプがはじまる。
これが私たちの土佐日記である。










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