獣
獣という漢字は会意文字であるらしい。
会意文字とは複数の漢字が組み合わされてできた文字のことで、この場合は「いぬ」と「はじき弓」が出会ってできた。弓を用いて狩をしたときの獲物がすなわち「獣」。犬にすれば、出会いたくなかった相棒かもしれない。
ことさら犬が気の毒になるのは、獣を含んだ熟語にロクなものがないということだ。4字熟語にも、ことわざにも良いものが見当たらない。こればかりにはふだん猫派の自分も
犬よ!
と叫んでしまう。
なんといっても犬は人に寄り添い、人とともに生きたではないか。太古のむかしから、そしてたぶんこの先もずっと。
その点、羊はあざとい。
羊はその全身をくまなく人の生活に役立ててきた。肉も毛も捧げるその献身ぶりは「獣」に属さないのではないか、と疑うくらい従順で、人は漢字界で羊に報いた。義、翔、群、着、美 ・・
話を獣にもどそう。
唯一と言っていいかもしれぬ良き獣がある。
せっかくだから椎名林檎を歌いながら紹介したい。
さあ 貪れ 笑い飛ばすのさ
誰も通れぬ程
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