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【フランスの日本人】理想郷に住むフレスコ画家

ブルゴーニュ地方オータン市に住むフレスコ画家・修復家の高橋久雄さん。
上の写真はご自身所有のユルスリーヌ塔。フランスの文化財だ。
好きを追求し、時間をかけてじっくりと、誠実に丁寧に作品に向かい合い、道を究めてきた人生。

フレスコ画を勉強したいとフランスの美術大学の試験を受けて渡仏したのが30歳の時。

フレスコ修復士の資格を取り、ブルゴーニュ地方を中心にフランス各地のフレスコ画の修復を行う。
フランス文化庁の信頼は厚い。

フランスで活動すること30年。
オータン大聖堂の修復の際、市内の高台に建つユルスリーヌ塔に魅せられ、1997年に幸運も手伝いアトリエとして購入する。
61歳のこと。

以来26年、日本やフランスでフレスコ画を製作しながら、塔や敷地内の建物の修復、改装、フレスコ画製作を続けている。
現在87歳。夢実現の途中だ。

土台の部分はローマ時代の城壁。上の塔は12世紀に建立された。

フレスコ画一筋の人生。
丁寧に丁寧に人生を歩み作品を作ってこられた結果、理想郷を手に入れ、87歳の現在も夢がいっぱいで幸せな笑顔を輝かせていらっしゃる。

初対面のわたしと友人を素晴らしい笑顔で迎えてくださった。

訪問のきっかけはフランスに方違え中の友人。友人の知り合いの従兄さんというご縁だ。
友人のおかげで、思いがけない素晴らしい人に導かれてしまった。

入り口をあがる階段。
すべてが文化財なので、手すりをつけるにも許可が必要。
文化財専門の技術士が手すりをつけた。
敷地内にあるチャペル。前の持ち主は歯医者さんでここを住居として使っていたそう。
その前は女子修道院だったそうで、元の姿に戻すべく再改装されている最中。

自宅がローマ時代と12世紀の建物というのも素晴らしいことだけれど、敷地内からの眺めがまた素晴らしい。
庭もすみずみまで手入れされていて、良いエネルギーが満ちている。

高さ30mの塔。上のマリア像は1862年製作。
水が沁みてしまっていたので、台になまりを入れたり
全面的に修復が必要だったとか。

高橋さんのすごいところは、夢の実現に年月をかけているところ。
さらっと話されるので、簡単に夢を叶えていったように聞こえるけれど、塔を購入してから現在で26年。

根気よく文化財修復の許可を取り、少しずつ資金を用意し、人の力も借りて、さらにいろいろな人を巻き込んで、夢を実現されている。

チャペルの壁はコンクリートで覆われていたのをはがして元の壁に戻した。ロマネスク式の形に壁をくりぬき、将来的にステンドグラスをはめる予定。「もうすぐ入ります」とおっしゃるのですぐかと思ったら、2、3年以内にとのこと。

チャペルの内部は、前の持ち主のように住居とするのでなく、聖域として触フレスコ画を描く場所にすることを選んだ。

上の階。住居であった名残を消した。
これからどんな絵が描かれるのだろう。
地下に降りる階段。
高橋さんの故郷である埼玉県佐野の山と太陽。
フレスコ画は空気の通りが必要なので、
裏がコンクリートである天井は、早くも痛みがはじまってしまった。
壁の部分は、裏にコンクリートとの間に隙間を取っている。
十字架。
女子訪問修道院VisitationのV

高橋さんの「時間をかけて、じっくりと夢を実現する」リズムと精神を真似したい。

庭もすみずみまで手入れされ、好きがたくさん。
良いエネルギーが満ちている。

桜は早咲きと遅咲きが2本。

2本の桜の間にあるのは、亡くなったお兄さんが用意してくれた銀杏の木。
土のつかない枝だけの状態で持ってきて、根付かせた。

下は桜越しのユルスリーヌ塔。これが高橋さんのアトリエだ。すごい。
わたしも夢の実現に対して、時間をかけていこうと自信が湧いてきた。

ユルスリーヌ塔の内部に案内してくださる。
塔の地下はドーム型のチャペル。
「ワインを飲む場所にしょうと思ったんだけど、工芸展などをしたら人の役に立つと思って」と展示用ケースを並べた。

塔の地上部分は、ブルゴーニュの豪胆王フィリップ2世を称えるフレスコ画を製作中。壁と天井の面積を合わせると200㎡の広さ。

天井はフィリップのP。

正面には馬上のフィリップ豪胆王をイメージしたフレスコ画が描かれる予定。
下の写真は下絵を引き延ばした実寸大のモデル。

天井や壁の高い部分は、クレーンで上がって作業する。

フレスコ画の製作には、日本の大学から学生さんを受け入れている。
学生さんが暮らす場所も見せていただいた。
簡易キッチンがあって、寝泊りする場所があって、練習するテーブルがあって、充実した時間が過ごせそう。

練習用のフレスコ画。厚みがある。

芸術家の卵さんたちの暮らしがまぶしくて「わたしもここで生活してみたいです」と言ったら、「フレスコ画を描きにいらっしゃい」と言ってくださった。

友人がフランスにいる間に、もしかしたら再度うかがえるかもしれない。

このテーブルでフレスコを描く日がくるかも。

訪問記念にメダルをくださった。
訪問者のために造られたとのこと。

車の運転を控えていらっしゃるとのことで、徒歩でご自宅からアトリエまで歩いてきてくださっていた。ご自宅までお送りし、お持ちしたシャンパーニュをお渡しできたところで、ものすごくほっとした自分に気付いた。

数週間前に訪問の約束をしていたものの、昨日から電話が繋がらなくて、会えなくても仕方ないと思いつつの訪問だった。
奇跡の時間。

敷地内からしか見えない像。

高橋さんの好きを追求する生き方と、生きている姿そのものに感銘を受けた。
未来にワクワクされているのがわかる。

好きなことをして生きる人生の師匠。
また会いに行きます。

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