お仕事日記 8話

 たいちょうの家に到着した。警察車両がたくさん来ていて、空気がピリっとしてる。ぼくには事情は分からないけど、鑑識の人が指紋を採取してるってことは、何か事件があったことは間違いない。

 …二人が、小学生くらいのゆたかくん、そして若い女の子と一緒に戻ってきた。この二人を警護することになったらしい。しま、なんだか落ち込んでる?でも、いぶきとぼくが付いてるよ。

 …今日も、歌いながらゆたかくんをお見送り。彼は、今までとは別の学校に転校することになったみたい。彼も他の子も嬉しそうで、ぼくも嬉しくなるな。…あれから2ヶ月経ったけど、エトリの手がかりはまだ掴めていないらしい。

 二人とも、ゆたかくんとあの子を危険に晒した責任は自分にあるって言ってる。でも、ぼくはそんなことないと思う。悪いのは、ずるい手段を使ってきたエトリだよ。いぶき、「帰着」を知らなかったんだ。…いや、それまでしまのせいにするってどうなの?ぼくに虫が集るのはこの色に塗った人のせいだし、メロンパンの色はどっちでもいいよ!…とんだとばっちりだなぁ、もう。でもぼく、こんな二人が大好き。

 …あ、無線が入ってきた。人の遺体のようなものを発見したって通報があったらしい。

 山の中の遺体発見現場に到着した。しまは遺体を見るのに慣れてるみたいだけど、いぶきはそうじゃないらしい。人って、死ぬとこんなふうになるんだ…。なんだか、見ているだけで辛くなるな。検視官さんの話だと、両手とも中心3本の指が切られていて、十字架を身に付けていたらしい。ナイトクローラーの人たちが、警察の人と揉めてる。…後から来た捜査一課のかりやさん、二人にケンカを売るなんて大人気ないし、感じ悪いな。それに、声がうるさい。二人も、かなりイラっとしたんじゃないかな。

 数日前に見た遺体の司法解剖の結果を聞きに、UDIラボって所に行くことになった。かりやさんたちも一緒に付いてきたけど、二人に捜査をさせたくないみたい。…二人にはまだしも、ぼくにまでいちゃもん付けることないんじゃないの?二人も粘ったけど、結局置いて行かれた。でも、資料の入った鞄を置いて行くなんて、あの二人も案外抜けてるな。

 いぶきが被害者に関する資料を見てる間に、白いぬいぐるみを持った眼鏡のおじさんがメロンパンを買いに来た。ぼくたち、メロンパンを売りに来たわけじゃないよ…?このおじさん、しまの話を全然信じてくれない。ぼくって、そんなに警察車両に見えないんだ。

 手がかりになる話を聞きに、ガマさんっていういぶきの恩人さんの家に行くことに。何か分かったかな?

 …あ、戻って来た。ガマさんは、何か手がかりになりそうなことを思い出せなかったみたい。しまが言うには、脳血管型認知症と、その薬の影響らしい。彼には家族や、そばにいてくれる人はいないみたいだ。…彼は、今どんな気持ちでいるんだろう?

 まだ仕事の時間内だけど、官舎に立ち寄った。ゆたかくんは笑ってはいるけど、きっと不安なんだろうな。しまと作ったおもちゃを直しに、二人で中に入っていった。

 たいちょうが家にいない間にゆたかくんと一緒にいる女の子、ハムちゃんっていうんだ。…蚊帳の外な感じがするけど、しょうがないか。彼女は、ゆたかくんを巻き込んだ責任を感じてるみたいだ。いぶきはいつもの調子だけど、3人で住むことをきっと本気で考えてるんだと思う。この二人のためにも、必ずエトリを捕まえないと。

 もう一度、UDIラボに行くことになった。所長のかみくらさん、って人が、しまに連絡をくれたみたいだ。かりやさんと、なかどうさん、っていう解剖医の人が揉めに揉めて、大変だったらしい。手がかり、見つかるといいな。

 数日後、ガマさんの家に向かうことに。ぼくのいる所からは遠いけど、警察車両が何台か来ていて、物々しい空気を放っている。二人は、彼に話を聞きたいみたいだ。

 …二人が降りていった後、突入の合図で刑事さんたちが中に入っていった。しまが言うには、ガマさんは人を殺してしまったらしい。…どんな苦しみを抱えていたとしても、人を殺すことでは誰も救われないし、この事実を知った全員が悲しんでいると思う。ぼくたちに出来ることは、本当に何もなかったのかな?

 芝浦署に戻るまで、いぶきは抜け殻みたいになって呆然としていた。大事な人だって言ってたし、相当ショックだろうな。しまは何も言わないけど、彼も落ち込んでると思う。何か、ぼくに出来ることがあればいいんだけど…。