お仕事日記 7話

 いぶきが、出前太郎、って人にお昼を頼んだみたい。中身はうどんではないらしいけど、何だろう?ここのえくんとじんばさんは、今日はお休みらしい。じんばさんは、家族の顔合わせに行くみたい。上手くいくといいな。

 …中身は、すぐ分かった。メロンパンを9個って、二人じゃ多いと思う。そういえば、前にメロンパン屋さんみたいなことをやりたいって言ってたね。いぶきとメロンパンの写真を撮って送った相手からスマホで連絡が来たみたいで、いぶきがすごく嬉しそう。しまはちょっと引いてたけど。いぶきがウキウキしてるってことは、きゅるっとした女の子と連絡してるのかも?

 二人がメロンパンを食べようとしたその時、無線が入ってきた。トランクルームに閉じ込められた死体を発見したって通報があったらしい。

 …事件が起きたトランクルームに到着した。ここからだと距離があって、二人の様子が分かりにくいな。見つかった遺体は、ここに住んでいた人?…でもしまが言うには、普通の人が暮らせる場所ではないらしい。ここの管理人さんに話を聞いたら、遺体があった部屋を借りていた人と遺体の人は別人で、遺体の人はここで10年暮らしていたことが分かったみたい。二人とも、この遺体が自殺だと判断するのに違和感があるらしい。ぼくも、少し気になるな。後から来た所轄の人たちに報告を済ませた後、ここを借りている人たちに話を聞くことになった。

 いぶきもしまも、住所と名前を聞き出すのに手こずってる。いぶきが話を聞いてるスゥちゃんとモアちゃんは、事件があった日に幽霊を見たらしい。これ、手がかりになるのかな?しまが話を聞いてるジュリさんは、名前以外何も教えてくれない。どうしてだろう?人が一人死んでいるんだから、真面目に答えてほしいな。

 さっきのメロンパンは、スゥちゃんとモアちゃんにあげたみたい。ある意味、タイミング良かったのかも。…いぶき、食べられなくて不満そうだな。彼は、ここに着いた時から何かの気配を感じていたらしい。人の気配みたいだけど、何だろう?

 二人は、遺体が発見された部屋の隣の部屋に入っていったみたい。…いぶきの言う通り、部屋の中に誰かがいた形跡があったらしい。彼の勘は、やっぱり鋭いな。二人が隠れていた人に話を聞こうとしたら、ジュリさんに止められた。この人が殺したって証拠があり過ぎるみたいだけど、もう少し穏やかに聞いたほうが良かったんじゃない?…ジュリさん、弁護士だったんだ。尋問の知識があるのもうなずけるね。少し不穏な空気になったけど、さっき出てきたクラタさんと彼女にも事件の話が聞けそうだ。

 クラタさんの話だと、遺体の人はケンさん、という名前で、ここに住みながらきんぴら、という猫を飼っていたらしい。しまはまだ、クラタさんを疑ってるみたい。可能性がなくなった訳じゃないから、しょうがないか。二人にも、まだ事件の真相はつかめていないみたいだ。

 …もう少し、彼の話を聞いてみることに。ケンさんは、ここでの生活に辛さを感じている様子だったらしい。他にも、事件の当日にきんぴらが犯人を引っ掻いたことが分かったみたいだ。こんなところに手がかりがあるなんて思わなかったな。

 所轄の人から、しまに電話がかかってきた。ケンさんの遺体が見つかった部屋を借りていた人は彼とは無関係で、ケンさんはその人の銀行口座と名義を使ってここに住んでいたことが分かったみたい。

 二人は、ケンさんが普通の方法ではここを借りられない指名手配犯だと目星を付けたらしい。でも、彼はどうして殺されたんだろう?

 無線が入ってきた。じんばさん、タクシーの無賃乗車って…どうしたのかな?今日はお休みだけど、指名手配犯を追いかけてるらしい。刑事の鑑、ってやつだね。指名手配犯が二人…彼らの間には、何か関係があるのかな?

 しまがスマホで連絡したら、じんばさんが追ってる犯人が指名手配された事件の情報が送られてきたみたい。10年前の強盗致傷事件で、二人組の犯人はまだ逮捕されていないらしい。この事件の犯人が、ケンさんと、今じんばさんが追ってるオオクマみたいだ。この二人には、接点があったんだね。

 鑑識の人に証拠品を見せてもらって、いぶきとしまには幽霊の正体が分かったみたい。その後、二人は管理室まで証拠集めに走っていった。…それニャ、って何?しまがこういうこと言うの、初めて聞いたな。

 …二人が戻ってきた。じんばさんとハサミを持ったオオクマが見つかったらしい。この間の休みが明けてから、メロンパンをもう一度頼んであげたり、しまが少しいぶきに優しくなった気がする。気のせいかな?…あの自転車、さっきの出前太郎さん?でも、今は急がないと!ぼくからも、ごめんなさい!

 …あっ、じんばさんいた!オオクマも、この近くにいるはず…いた!けど、すぐ逃げられた。

 じんばさんと三人でオオクマを追いかけてるけど、二人で同時に叫ばれるとあまりにも……うるさい!!しまとハモっちゃった、息が合ってきたのかな?

 出前太郎さん、大丈夫!?…大したことないみたいで良かった。名前、太郎さんじゃないんだ。それより、話を聞かないと。

 オオクマは、彼の自転車と出前太郎のジャンパーを盗んで逃げたらしい。彼と同じ格好の人が200人以上って…すごい人数だね。二人とも、どうする?…太郎さんの話を聞いて、しまが監視カメラでオオクマだけを見つける方法を思い付いたみたい。

 あっ、オオクマだ!今度は絶対逃がさないよ!ぼくは足止めと応援しか出来ないけど、三人とも頑張れ!オオクマは、じんばさんがぼくの無線で応援を呼ぶくらい強かった。隠し持ってた武器を出してきた時は驚いたけど、そんなずるい手を使うような相手に負ける二人じゃなかったし、思わず見とれちゃうくらいカッコよかった。ぼくも、相棒として誇らしいよ!

 無事にオオクマを逮捕して、所轄の刑事さんたちに引き渡した。彼を救う方法は、これしかなかったのかな?ところでじんばさん、顔合わせは?…今からでも、絶対行かなきゃダメだよ!後はぼくたちに任せて、いってらっしゃい!

 現場のトランクルームに戻ってきた。相変わらず遠いから、様子が分かりにくいな。四人とも、残ってくれてたらしい。スゥちゃんとモアちゃんは、家に泊めてくれる人を探してるみたい。でも、二人とジュリさんの話を聞いて、サポートセンターに行くことにしたらしい。クラタさんも、きんぴらを連れて家に戻ることにしたみたいだ。みんな危険な目に遭わずに済んで、ホントに良かった。

 …ん?変な音がし始めたと思ったら、ジュリさんたちがゲリラライブ、ってやつを始めたみたい。みんなでさっきとは別のメロンパンを食べながら、二人もスマホに向かって楽しそうにおしゃべりしてる。人の笑顔を見てると、ぼくもすごく嬉しい。こんな時間がずっと続けばいいな。

 …さっきまで楽しそうだった二人が、突然走ってきた。スマホの向こうで、何かあったのかな?二人の話の流れからすると、たいちょうの家に向かうみたい。急いで、確かめにいかないと!