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#4 The Queen's Gambit

アニャ・テイラー・ジョイ演じるチェスの天才少女、ベス・ハーモンの成長の物語。というと、成功者の綺麗でキラキラした人生を想像する人も多いと思いますが、彼女の物語はまるで違います。孤独、薬、地下、酒、タバコ、奔放な生活。彼女の人生のすぐそばには、いつも闇がありました。彼女はずっと暗い闇を生きていたように、私には見えました。

The Queen's Gambit / クイーンズ・ギャンビット

幼くして両親を亡くしたベスは、どこか怪しげな養護施設に入ります。そこで彼女が出会ったのは、生涯の友人とチェスの師でした。週に1回、地下で彼女のチェスの師である用務員のシャイベルさんと行うゲームに加えて、ベスは毎日のように頭の中でチェスの駒を動かし、驚く速さでその才能を開花させていきます。天井に浮かび上がるチェス盤と駒たちは、彼女の非凡さを十分すぎるほどに表しています。

少し前に、「ベスは暗い闇を生きていた」と言いましたが、それは決して彼女が不幸だったと言っている訳ではありません。寧ろ、類まれな才能に恵まれ、チェスプレイヤーという天職を得た彼女の人生は、幸せなものであったように思えます。ただ、彼女の才能は、あの暗い闇での生活があったからこそ花開いたもので、彼女が手にした栄光も、彼女の人生に暗い闇があったからこその栄光だったのではないかと思ったりもします。言ってしまえば、ベス自身が“闇属性”の人間だったのです。ベスの並外れた賢さや集中力、社会を斜めに見るような客観性などは、その“闇属性”故の能力だったのではないでしょうか。

"Chess isn't always competitive. Chess can also be … beautiful."
The Queen's Gambit

「女性はチェスをしない」時代に、誰よりもチェスを愛し、チェスに愛されたエリザベス・ハーモン。アニャの愁を帯びた雰囲気がベスの天才肌なキャラクターにマッチしていて、チェスだけでなく、個性的なヘアスタイルやファッション、メイクも楽しめる素敵なドラマです。

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