ゴースト&レディ観劇記@千秋楽配信
「四季劇場『秋』、新作の千秋楽だアッ!」
(たぶん五千人くらい同じこと言ってる)
ということで劇団四季ミュージカル『ゴースト&レディ』の千秋楽のライブ配信で観劇した。初見である。
配信はどうしても劇場と温度差があるのが否めないが、今回の配信はカメラを容赦なく切り替えて見せてくれたので映画を見るように楽しんだ。なので劇場で見るのとは全く違う感覚での感想になっていると思う。
カメラワークについては今まで見た四季の配信とは全然違い、「ここ!ここを見てほしい!」「こちらが見どころとなっております」という「四季の見て見てポイント」が細かくアップになっていた印象だ。二幕でアレックスがフローの手を取って「こんなに荒れてしまって……」と言うところで本当にボロボロのフローの手がアップで映されたのは配信ならではの見どころだと思う。あれは劇場だと見られないよなぁ。双眼鏡持っててもついつい表情見ちゃうもん。
そういったポイントが見られるのはありがたいが、四季の役者さんは身体中使ってお芝居をしてくれる方が多いのでパーツや表情を抜いてくれるのは嬉しいが動作や立ち姿が見えないのはやはり悔しい。それにアンサンブルの動きもずっと見ていたい。こればっかりは劇場で見なきゃなので配信を見たとしてやはり劇場にも足を運びたくなるなぁ、と思った。なので四季の偉い人……どうぞ躊躇なく円盤化していただいて……。
全体の感想としてまず思ったのが「ナンバーが多いな」ということである。特に第一幕はソングスルーなのか?と思わせるほど歌いっぱなしの印象。あと展開が早く感じたので「前半に詰め込んでくるなぁ」と思ったら後半もパンパンに詰まっていた。物語の基本の流れは『起承転結』だが、この物語は『起承転転転転転結』くらいエピソード満載だ。主役はグレイとフローの二人だがエピソードのボリュームは他のキャラクターも負けてないし、アンサンブルも丁寧に書きだされているからだと思う。だから物語が厚い。
その中で燦然と輝く「通りすがりインパクトキャラ」がヴィクトリア女王である。突然バァーン!と絢爛に現れて毅然とした佇まいでバァーン!と歌い、品のいい陽キャを振り撒いてさっさと帰っていく。豪華な幻のようだ。『JCS』のヘロデ王を彷彿とさせる。フローが活躍を褒められて感無量という表情だったのでこっちも嬉しかった。
あと大道具の移動を人力に頼っているところが多い。物語の舞台が戦場で凄惨なシーンが多い中、みんなで舞台を動かしているのが見えるのは温かみがあっていいなぁと思う。ゴスレはとにかく演出に仕掛けが多いしマジックやワイヤーアクションもある。そういう派手な仕掛けとのバランスも取れているように思う。それから視覚効果にプロジェクションマッピングを使っているのがうまいと思った。
ストーリーは結構ちゃんと恋愛要素が入っていたことに驚いた。自慢することでもないが私は恋愛の機微に驚くほど疎い。そんな私でもきちんと恋愛要素を掬い上げることができる程度には分かりやすく恋愛が詰まっている。とはいえ私はやはりグレイとデオンの因縁の決着、ジョンホールとフローのお互いの人生観の交錯に見応えがあった。お互いにデオンとグレイという後ろ盾をなくしたジョンホールとフローが剥き出しの本音をぶつけ合うクライマックスはとても胸にきた。
キャラクターについては開幕直後から世間でグレイのかっこよさが散々叫ばれていたし、友人が観劇後に「グレイかっこいい」しか呟かないbotと化していたので「そうか……そんなにカッコいいのか」とある程度気合いを入れて臨んだがなるほどグレイがカッコよかった。あんなキャラずるいわ男子も女子も好きなやつやん。
だが私は万が一ゴスレの恋愛ゲームが出るなら攻略対象は絶対デオンと言い切れるくらいデオンにはまった。もうホントかっこいい。生前の黒髪デオンもいい。いいところを挙げればキリがない。もう全部いい。ください(なにを?)。あと賛否あると思うが私はシャーロットも好きだ。ああいう自分をうまく使って強かに生きるキャラに弱い。シャーロットのパトロンが悪いファントムみたいな風貌なのも良かった。
グレイがシャーロットに出会うシーンでグレイが「俺、アンタの芝居欠かさず見ててェー」と言いながら髪の毛を触っているところでだいぶ笑った。オタクの解像度が高すぎるぜ萩原隆匡氏。なんでみんな推しの前で急に髪を整えるんだろうね。
フローがわりと史実に近いパワー型フローで良かった。「傷病者を受け入れるために倉庫を立て替えたいがお金がない」のところで「予算が足りない分は私が払います」と言うところが好きだ。フローとしては実家を頼りたくない気持ちもあっただろうなぁ、というのが垣間見えるのがいい。
アレックスとエイミーというミュージカルオリジナルキャラはフローの生き様を際立たせるのにとてもいい役割だったと思う。二人ともフローと育ちが似ているのにどんなに会話を重ねても全然気持ちが重ならない。そしてフローが一番辛い局面で退場していく。それでもラスト、息を引き取るフローのそばにいたということはずっと何らかの方法でフローを支えていたのだろうと思うと、戦い方もできることも人それぞれだよなぁとつくづく思う。そう思わせるのにちょうどいいキャラになっているのがうまい。
そしてボブは美味しい。すごく美味しい役ではなかろうか。癒しであり、コメディリリーフであり、愛である。素敵なキャラだぜ、ボブ!
ということで初の『ゴースト&レディ』は配信でとても楽しめた。目が溶けるほど泣くかと思ったが配信のため没入感が劇場ほどなかったおかげでそこまで泣かずに済んだ。でも泣いたんかい。
見逃し配信も楽しもうと思う。
ハムレット王の亡霊が、かつてのノルウェー国王フォーティンブラスを討ち果たした時の甲冑姿そのままじゃなかったことだけはちょっとひっかかっている(ハムレット強火オタ)。
(謝:この記事を書いた後、見逃し配信を見たらハムレットの親父さんはちゃんと甲冑着てました。見逃してたわごめん劇団四季。ありがとう劇団四季)