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介護現場の実感薄い、介護職9000円の賃金アップ

2月から介護職員の賃金アップへ

 厚生労働省の『福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金』※は、コロナ禍で働く福祉・介護職員を対象に、令和4年2月から9月までの間、収入を3%程度(月額9000円相当)引き上げるための措置を実施することを目的とする事業となっています。

 果たして本当に介護職員の給料は9000円上がっているのか?

 介護職に従事する知人に聞いてみることにしました。

実際に介護職員は給料アップしている?

 最初に結論を書いてしまうと、僕の周りの介護職員を含めた多くの介護職員が給料アップを実感している人は少ないということがわかりました。

 「給料はアップしたけど9000円は上がっていない」という声や、「ほとんどアップしていない」「非正規職員の給料を上げるために使っているのではないか」と疑問を抱いている人もいて、現場の人たちに正確な情報が伝わっていないようです。

 実際、僕のまわりでは、9000円が満額増えている介護職員はいませんでした。

 わずかにアップしただけで変化に気づかない人もいるのかもしれませんが…。

 2月からの制度なので事業所がまだ申請していないということもあるのでしょうか。

 介護職員の給料は、年々上昇傾向にあるのですが、実際現場で働く職員には実感を伴っていないように感じます。

 実際、介護職員の給料の調査結果※を見てみると、1年前と比べて1万5000円以上アップしています。

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■介護従事者等の平均給与額の状況(月給・常勤の者、職種別)
職種/令和2年2月/平成31年2月/差(令和2年-平成31年)

介護職員/315,850円/300,120円/15,730円

看護職員/379,610円/372,940円/6,670円

生活相談員・支援相談員/343,310円/332,980円/10,330円

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士又は機能訓練指導員/358,560円/349,190円/9,370円

介護支援専門員/57,850円/347,460円/10,390円

事務職員/311,120円/303,710円/7,410円

調理員/267,930円/261,180円/ 6,750円

管理栄養士・栄養士/319,680円/310,720円/8,960円

 調査では、介護職員の給与は、ほかの職種に比べてもっとも上がっているのです。

 とはいえ、元々介護職員の給与水準が低かったからという見方もできます。

 給与の内訳を見てみると、交通費や家族手当などの施設の裁量で決まる“手当”の増額が一番多いのは気になるところです。

 基本給を一番増やして欲しいのに、と思わざるを得ません。

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■介護職員の平均給与額の内訳(月給・常勤の者)
令和2年2月/平成31年2月/差(令和2年-平成31年)

平均給与額:315,850円/300,120円/15,730円

うち、基本給:182,260円/179,100円/3,160円

うち、手当:78,440円/70,350円/8,090円

うち、一時金(賞与等)/55,150円/50,660円/4,490円

 最近は、生活必需品やガソリン価格、社会保障費(税金)の値上がりもしているため、給料が上がっても実際に手元に残るお金は変わらなかったり、減ってしまたったりしていることも多いと思います。

 そんな背景もあり、今回の賃上げを実感している介護職員は少ないのかもしれません。

配分の仕方に疑問を感じている

 交付金は、標準的な職員配置の事業所で、福祉・介護職員1人あたり月額9000円となっていますが、介護職以外の職員にも充てることができます。

 どのように分配するかは、事業所に委ねられているため、一律9000円アップというわけではありません。

 配置基準より多くの職員を雇っている施設では9000円もらえないこともありますし、介護職以外の職員も含める場合は、当然、支給額は少なくなります。

 働いている介護施設によってもらえる額が変わってくるので、満額もらえる職員もいれば、雀の涙しかもらえない職員が出てくるというわけです。

 このような交付金の配分の仕方に対して、僕は疑問を感じています。

 あくまで僕の意見ですが、交付金は施設に支給するのではなく、給付金のような形で国から職員に直接渡るような仕組みだったらよかった…。

 同じ介護職なのに働く場所によって金額が変わってしまうのは、とても不公平なことだと考えています。

 これまでの賃金に関する処遇改善でも、実質、介護職員の賃金アップに繋がらなかったことはたびたびありました。

賃金アップにはインパクトが欲しい

 介護職員の給料アップの実感が薄い理由として、給料アップの額にインパクトがないということもあります。

 いきなり賃金を上げることは難しいとは思うのですが、上がり方が緩やかだと、物価も上昇しているため、なかなか生活が豊かになったと感じられないのです。

 コロナ禍で財政難であることはもちろんわかってはいるのですが、「介護職員一律○万円のベースアップ!」といったインパクトがあれば、「よし、今年は給料が上がるから頑張るぞ!」と、モチベーションにも繋がると思うのですが…。

給料アップは働くモチベーション

 「介護職員の賃上げにはインパクトが必要」と僕が考えるのは、せっかくの賃金アップ施策なのに、「9000円アップといっているが、ほとんど変わっていないじゃないか」と、がっかりして、逆にモチベーションが下がってしまう人もいるのではないかと思うのです。

 政府は今後も、徐々に賃上げをする予定とのことですが、次の賃上げはいつで、どのくらいの金額なのか、具体的なことは、現場には伝わってこないのが現状です。

 給料が低くて生活が立ち行かない場合、次の賃上げまで悠長に待つことができない人もいます。

 処遇改善が実施されたのにまったく給料が上がらず、退職した職員は何人かいました。

 離職防止のための賃上げですが、中途半端な賃金上げはかえって逆効果になることもあるのです。

老健の夜勤専従で働く僕の賃金アップ事情

 今回の賃上げに関しては、まだ実感できている介護職員は少ないけれど、政府は今後も中長期的な賃上げを検討していると明言しているのは、喜ばしいことです。

 実は昨年12月から介護現場に復職し、老健(介護老人保健施設)の夜勤専従で働いています。そこで僕も期待をしながら2月の給料明細を見てみると以前と比べて1円もアップしていませんでした。

 失望しながらも、今後の賃上げに期待せずにはいられません。

 夜勤で働きはじめて僕は、改めて介護の仕事は魅力的な仕事だと感じています。

 賃金アップが確実に実施され、給与面でも魅力を感じるようになれば、もっともっと介護職に就いたいと思う人が増えるのではないでしょうか。


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