政府のコロナ対策 今見えている問題点

○2021年1月18日に始まった通常国会で与野党最大の争点とされていた、新型コロナ特別措置法と感染症法を改正する問題で自民党と立憲民主党は、二つの法律の政府案を修正することで合意しました。入院拒否などに懲役刑や罰金刑を課すとした当初案を削除す
ることになりました。この合意で二つの法律の改正案は2月3日にも成立する見込みということです。

○また、世界中で今やコロナ対策の中心となっているワクチン接種について、政府は医療従事者には2月下旬にも接種を始め、高齢者には3月下旬にも接種を始めるとしています。こうしてみると日本政府のコロナ対策は、新たにワクチン調整担当大臣になった河野太郎行政改革相の元気のいい発言も相まって、軌道に乗ってきたかのように見えます。しかし、冷静に見るとそうではありません。むしろ、コロナ感染対策を進める上での障害が見え始めた、というところではありませんか。

○コロナ対策の障害の第1はやはり、新型コロナ関連法令に罰則を設ける問題です。確かに自民党と立憲民主党の合意で、コロナ関連法令の改正案から刑事罰は排除されました。しかし。検査や入院を拒否する人や営業の時短を拒否する飲食店主らに上限50万円から30万円などの過料を課する“罰”は生きており、二つの法律の改正案の基本的性格は変わっていません。
1月29日の読売新聞朝刊に、罰則に反対する、分かりやすく、筋の通った論考が載っています。「感染防止へ強制力必要」として、罰則を推進する立場の西村康捻経済再生相と対峙して、「差別や偏見招く危険性」として、罰則反対を主張する日本医学会連合会長の門田守人氏のインタビューです。

○門田氏は、検査拒否や入院拒否に対する罰則について「これまでどれだけ実害が出たのか、罰則による感染防止効果の試算も示さず、『悪者をやっつけろ』と言った情緒的な理由で議論が進んでいる感が否めない」と述べ、罰則を作る科学的な根拠が示されないことが問題だとしています。さらに検査拒否や入院拒否の人たちについて「一人親所帯で自分が入院したら生活が成り立たないなど、その社会的背景に目を配るべきだ」としています。

○門田氏は△罰則を設けると、保健所の調査から逃げ回る人が増え、水面下で感染が拡大し、その状況の把握すらできなくなりかねない△民間病院には、コロナ医療に取り組むことが減収や倒産につながるのではないかという懸念が常につきまとう。公立病院とは事情が違うことなども指摘しています。病院の院長も務めた現場の人ならでの感覚からの見方です。

○新型コロナ特別措置法の改正案に、時短要請に応じない飲食店への罰則が設けられていることについて、門田氏は「このように分断し、仲間外れを作って、攻撃の目標にするというやり方は必ず失敗する。科学的根拠に基づいた政策で国民の納得と協力を得て、分断はでなく、団結でしか、この国難は乗り越えられない」と訴えています。

○コロナ対策の実効性を高めるとする罰則問題とも絡む問題ですが、営業の時短要請などに応じた事業者への支援の在り方も大きな問題です。コロナ関連法令の改正案には、時短要請に応じた事業者への支援が義務づけられていますが、その具体的ルールはこれから。大きな財源が必要ですが、当面、その財源は停止された「go toトラベル」の予算を組み替えればいいわけです。しかし菅首相は「しかるべき時期の事業再開に備えて3次補正予算案に計上している」として、野党側の撤回要求に応じませんでした。これからの議論ですが、この支援策の内容によって、菅内閣のコロナ対策の本気度が問われます。罰則では、日本は救われませんよ、菅首相!

○菅首相の施政方針演説では、△罰則問題と並んで、△ワクチンの接種、△病院の医療体制確立がコロナ対策の柱として挙げられていました。これまでのところ、あとの二つの問題は、まだ評価するほど取り組みが進んでいません。今更ながら、菅内閣のコロナ問題への取り組みの遅れを実感します。しかし、そうとばかりは言っていられません。国民の側も問題を理解し、政治が正しい方向に動いていくよう声を上げ、要求していこうではありませんか。##

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