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笑止!笑止! 菅首相辞任の弁

〇2021年9月3日正午前のテレビのニュース速報で、菅首相が、告示が17日に迫った自民党総裁選に立候補せず、さらに来週6日にも行うとしていた自民党役員人事も取りやめるとこの日午前11時半から開いた自民党の役員会で表明した、と伝えました。政界から報道陣まで、これにはあっと驚いた人が多かったようです。菅首相批判の代表格と目されていた石破茂元幹事長まで、ニュース速報直前の民放のテレビで、「菅首相から幹事長就任の要請があれば受ける。菅首相を支える」(石破氏は、菅首相は総裁選にあくまで立候補し、当選すると信じてた。何たる間の悪さ!)などと発言していたくらいなのですから。

〇しかし、私はこの日の菅首相の辞意表明には驚きませんでした。考えてもみてください。今年に入ってから国政レベルの選挙で自民党(すなわち菅首相)は連戦連敗。菅首相の下では任期満了が迫っている衆院議員選挙は戦えない、という声が党内で高まっていたんですよ。選挙の敗北の極めつけが菅首相の地元の横浜市長選で、自民党候補が野党推薦候補に大敗しました。余談ですが、この選挙が投開票された8月22日の4日前もの18日発売の週刊文春8月26日号で「菅9・6『首相解任』―横浜市長選敗北で引導」と思い切った報道をしたのには、今更ながら驚かされます。「解任」と予測した9月6日と菅首相が実際に自分自身の解任を決めた9月3日とは、たった3日しかずれていません。しかも 事態展開のペースは早まっている!

〇さらに首相就任当時、60%を超えていた内閣支持率が「危険水域」と言われる30%を割り込む体たらくで、ここにきてやめない選択肢はむしろない、と言えます。追い詰められた菅首相は、自民党総裁選の日程が9月17日告示、29日投開票と決まっているのに対し、この日程を動かし、総裁選の前の9月中旬に衆議院選挙、それに勝利する(?)として、その余勢を駆って、自民党総裁選にも勝利するという筋書きを考えたと伝えられます。しかし、この奇策には党内で強い反発があり、9月3日、総裁選と衆院選の実施時期を逆にすることも含め、断念。
またこの奇策との絡みで、幹事長を5年間も続け、「長すぎる」「強権的」と批判のある二階幹事長を「切る」ことを目玉とする党役員人事を9月6日に実施することは残っており、9月3日の自民党役員会で、この人事の菅総裁への一任を求めることになっていました。

〇しかし次期総裁が決まる直前に重要な役員人事を決めるのは極めて異例で、菅首相でない総裁が決まれば、その新しい役員人事が短期間でご破算になりかねないとこれについても批判の声が出ていました。このため私は、菅首相の党役員人事一任取り付は相当難しく、それがこじれれば、9月3日は菅政権が続くかどうか、最初の関門の日になると見ていました。ところが事態は私の予測よりさらに1歩早く進み、菅首相は人事の一任取り付けどころか、自分の方から政権投げ出しを表明してしまったわけです。

〇というわけで、菅首相の辞意表明には驚きませんでしたが、驚いたというか、、びっくりしたのは、菅首相の辞任の弁です。菅首相は総裁選に立候補しない理由として、「コロナ対策に専念したいので立候補しない」というのです。「コロナ対策は大変なエネルギーがいるので、総裁選の選挙運動と両立しない」とも言いました。

〇しかしこれは、全く逆の話でありませんか。菅首相が、国民のためコロナ対策でお役に立ちたいので首相を続けさせてくれ、というのならわかります。それをコロナ対策に専念するから総裁選に出ない(首相を辞める)とは何たる言い草か。話が全く逆ではないか。菅さんが首相を辞めて、コロナ対策で役に立てる、専念できるようなことがあるのか。あきれてものが言えない。笑止千万、とはこういうことを言うのでしょうか。

〇誤解はないと思いますが、私は菅首相に首相を続けてくれと言っているのではありません。残念ながら、その逆です。菅首相を評価できないのは、前任の安倍元首相と同様、自分に都合が悪ければ真実を語ろうとしない、その姿勢です。そして「オリンピックは安心安全でで実施できる」などと根拠なく強弁する。
辞任の弁というのは、後世まで残るべき、政治家にとって極めて大事なものだと思います。個人的な思い出というのではなく、国民の側がその時代の意味を学びなおすとき、大きな手掛かりになるものではありませんか。信なくば立たず、という、政治家のあるべき姿を指摘した論語の言葉があります。私見では、さすがの菅さんも国民の信を失い、自民党内の信もなく、これでは政治ができないと思ったのではありませんか、真実は。
菅さん、辞任の弁については、本当のやめる気持ち、真実の気持ちを国民に吐露してほしかった。##

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