国民とのギャップがそのまま出た総裁選

〇4人の候補で争われた自民党総裁選挙は、2021年9月29日投開票され、大方の予想通り、最初の選挙では当選に必要な過半数の票を獲得した候補がおらず、岸田文雄前政調会長と河野太郎行政改革相の決選投票となりました。その結果は257票対170票という意外なほどの大差で岸田氏が当選しました。

〇自民党総裁選の有権者の決め方はちょっと変わっています。最初の選挙では、自民党の衆参両院の議員が1人1票の有権者、合わせると382票となります。これに加えて全国の都道府県ごとに党員・党友による投票が行われ、その全体が議員全体と同数の382票とカウントされます。そしてその票は各候補のもとの得票数に応じて、ドント方式で配分されます。党員・党友を重視した方式と言えますが、この選挙ではすでに触れたように、有効投票数の過半数を獲得しないと当選になりません。

〇そこで1位、2位の決選投票となりますが、その有権者がガラリと変わるのです。自民党の衆参両院の議員は最初の選挙と同様、1人1票であることは変わりませんが、党員・党友は、各都道府県ごとに1票割り当てられるだけです。したがって、党員党友の選挙におけるウエイトは47÷382=0,123・・・と、議員と比べ、10分の1近くに激減してしまいます。

〇この、最初の選挙と2回目の選挙の有権者の違いはいくら考えても納得がいきませんが、この方式をとることで、分かることがあります。二人の候補の支持基盤が明瞭になることです。河野候補は最初の選挙で党員・党友については44%に当たる169票獲得し断然1位、議員票を合わせて   255票で、岸田氏と1票差で2位でした。これに対し岸田氏は、党員・党友票は110票にとどまったものの、146票の議員票を集め、最初から1位。決選投票は議員票優遇の方式がものを言い、議員票に強い岸田氏の圧勝となりました。

〇私は9月22日の中庸時評(note )で、自民党総裁選と総選挙の争点は全く同じー強権的・独善的な安倍・菅政治(民主主義ではない!)を評価し継続するかのか、それとも批判し決別するのか、だと断じました。しかし、総選挙は安倍・菅政治とどこまで決別するか問うものなのに対し、自民党総裁選はその逆の方向を目指すものになった感があります。

〇岸田、河野両氏とも安倍氏の直接の批判は避けましたが、河野氏は安倍氏らを一貫して批判してきた石破茂元幹事長と手を握ったことで、安倍批判を鮮明にしました。一方、岸田氏は安倍氏一辺倒の高市早苗候補と2,3位連合を組むなど、安倍氏の応援をあてにした選挙運動でした。そして議員と比較して党員・党友は一般の国民のセンスにより近いことなどを考え合わせると、議員票を集めた岸田氏が党員・党友票を集めた河野氏に大差をつけた選挙結果は、国民とのギャップがそのまま出たものと言えそうです。

〇岸田自民党は自民党内で圧勝したことが総選挙での勝利につながるとは言えません。「安倍氏の一人笑」などと噂されるん中で、岸田氏が総選挙に通じる、どのような政治姿勢、政策を打ち出してくるか注目されます。##

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