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左足ブレーキのすすめ

アメリカの人気ドラマ「Breaking Bad」の中で、主人公が息子に運転を教えるシーンがある。右足でアクセルを、左足でブレーキを踏もうとする息子に対し、主人公のウォルターはペダルは必ず片足で踏むように教える。「どうして?」と聞く息子に「ダメだからだ」と頭ごなしに否定する。このシーンだけ違和感がある。天才化学者の設定なのに、頭固いなあ。

もっと早く始めればよかったと本気で思っていることのひとつが、左足ブレーキである。

左足ブレーキに興味を持ったのにはいくつか理由があった。

まず、プロドライバーのペダルワーク映像を見ていると、みな普通に左足も使っている。ま、そうだわな、達人だからな。

また、高齢者の自動車事故のニュースを多く見かけるようになり、加害者が「アクセルとブレーキを踏み間違えた」とよく述べていることが気になっていた。これとそれをどうして踏み間違える。で、もしかして、同じ足で踏んでいるからではないかと思い始めたのだ。

そこで試しに左足ブレーキを練習してみたのだが、キュキュキュッずっこん、どうにもギクシャクしたブレーキングしかできず諦めてしまった。プロじゃないしな。レース出るわけでもないからな。

しばらくして、やはりこの技術、身につけるぞ、と決心したのは、運転の神様ポール・フレールが著書の中で左足ブレーキを勧めているのを知ったからだ。

当時はまだAT車が少なかったであろう『ハイスピードドライビング』の中でも触れられており、『はしる まがる とまる』(ともに二玄社刊)の中では、〜左足ブレーキの勧め〜として一章をさいている。ペダルが2つしかないAT車で左足を遊ばせておく理由はないのだ。咄嗟のブレーキを踏む場合でも、右足で踏み変えるのと、左足を使うのでは0.2秒ほど違うという。50km/hで走っている場合は、この間に2.8m進むわけで、事故と無事故を分け隔てるのに十分な距離になる。

一年ほどの試行期間を経て、もっぱらブレーキは左足で踏むようになったのだが、この技術、いいことずくめなのである。

まず、安心して運転することができる。見通しの悪い道、停車しているバスを追い越すとき、子供が飛び出してきそうな路地などは、常にブレーキに左足をのせている。もちろん前進しなければならないのでアクセルを優先させているが、瞬時にフルブレーキ可能なわけである。これを僕は「オレ自動ブレーキ」と呼んでいる。先進機能のような名前を付けるだけで性能がよくなった感じでいい気分である。
また高速のロングドライブで疲労感が少ない。クルーズコントロールと併用すれば右足をしばらく休めることも可能だ。
あとこれはマジメな話、自分の身体を自分で思うようにコントロールできるようにしておくのはジジイ化を防ぐ上でもっとも大切なことだと確信している。
安全でアンチエイジングなこの技術、運転をなさる方はぜひ早いうちに取り入れてみるといいと思う。
ただ、長年の習慣を変えるにはやはり訓練が必要なので、コツをお伝えしておくと、最初は左足の踵をフロアにつけてブレーキを踏むようにするといいです。浮かせた足の踏み込みの強弱は難しいのですが、踵をつけておくと安定して微妙な踏み加減をコントロールしやすいです。
停止した車でこの動作を練習してから、交通量の少ない道路や、慣れている道で試すようにします。慣れないうちは強い制動がかかることが多いので、後ろに車がいない時に練習します。
そのうち普通に左足でブレーキを踏めるようになります。ここで、右ブレーキ断ちを試みます。右足でブレーキを絶対踏まないと心に決めます。この時期が一番安らげなかったような気がします。
今ではほぼ左足で、バックの時などに体勢に応じて右で踏んでいます。
僕がこの技術を早く習得すればよかったと思っている利点以外の理由は、長年の習慣を変えるには長く時間がかかるからで、できれば教習所で教えてほしかった。



※試される方は、運転歴や技量と見合わせてご自身の判断でお願いします。事故をしてしまったじゃないか、などというクレームは受けかねます。


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