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中小ものづくり経営支援の道標「日本経営管理標準」JMS

はじめに

中部産業連盟の創立75周年を迎える今年は、JMS推進機構にとってもその萌芽から25年ということになります。

創立50周年、産業界の有識者により期待する事業についてご意見を頂いた未来事業審議会において、「“グローバルスタンダード”に対して、中部独自の“ものづくり”をベースに蓄積された“経営管理技術”を確立すべし」、との提案を受け、その後関係各位のご尽力に支えられ、今日に至りました。
「四半世紀」という歳月の重みを実感します。

この間、ものづくりを巡る国内外の状況は様々に変化し、経営上の問題点や課題も加速度的に変わってきています。
1990年代の「失われた10年」を挽回しようという気概を持って立ち上げた当初も数多くの問題を抱えていましたが、当時からは想像することすら出来ないようなテーマが現在の我々を取り巻いています。まさにVUCA時代の経営の舵取りに、唯一絶対の正解はないことを知りつつ、最適解を求めて勝ち抜かなければならないのです。

JMSの活動内容の歴史については、昨年11月にまとめた冊子を上梓していますので、そちらに譲り、ここでは現在進行しているJMSワーキングの活動についてご紹介したいと思います。
冊子はご希望の方に無償頒布しておりますので、文末の問い合わせ先からご用命ください。

JMSワーキング第3期

日本経営管理標準JMSは「我が国のものづくりが実践の中で身につけたマネジメントの暗黙知を形式知化し、そこを起点にたゆまぬ改善によりスパイラルアップさせよう」という思想の上に成り立っています。

現在は、変わらぬその理念のもと、「従業員の成長と幸福追求により、中長期的な会社の発展を図る中小製造業経営者」を支援するべく活動しています。

支援の指針として、中小ものづくりのための新たな経営標準「JMSフレームワーク」(図表1)を考案しました。

図表1 JMSフレームワーク

フレームワークに照らして経営者自らの日常行動をオモテ化し、重点志向でターゲットを定め、自身の行動変革に歩を進めます。
このJMSフレームに紐付いた「見える化フォーマット」ツール(図表2)を活用し、内省しつつ、自己変革に取り組むことができます。

図表2 見える化フォーマット

より高次の成果と革新を実現していくことを目的に、交流と相互研鑽を行う活動が「JMSワーキング」です。

「JMSワーキング」は、中小ものづくり経営者有志とJMS推進機構理事会社から選出されている企画委員会メンバーとで構成された推進機構内の活動体です。

JMS推進機構会員となり、この活動の趣旨目的に賛同した中小製造業経営者ならば参加が可能で、今期は12社が業界を超えて交流し研鑽しています。
今春4月よりスタートして1年間の活動を行っています(図表3)。

図表3 活動スケジュール

この「JMSワーキング」の最大の特徴は、中小企業経営者のみの活動ではないことで、ともに活動する企画委員は、大手メーカーの第一線マネジャーですが、取引関係を超えてワーキングメンバー企業の現場に入り、取組成果が挙がるよう、持てる「技(管理技術)」を惜しみなく発揮し、親身になって取り組んでいることです。

後半戦「実践期」で活動は本格化

第3期は前期の活動の枠組みを踏襲していますが、特に活動の核となる実践期については、手探りの第1期活動、試行の第2期活動を経てこの第3期において次のような活動の型を作り、実行するに至りました。

ワーキング活動では参加メンバー各社が期間中、2つのことに取り組んでいます。

1.経営者である自分自身の「行動変革」に挑戦する

経営者が自身の行動を見直し、変革に臨むということは、それだけでも高い意識を持っていることの証でしょう。

自らの行動を変えることは容易ではありませんが、それを促進するためのアプローチとして、前出の「JMSフレームワーク」を共通のツールとして用いています。
フレームを構成する18項目について、その実現を重視していながらも、今ひとつ効果的な行動が取れていない、と認識しているものをピックアップします。その実現のための現在の自身の行動を明確化し、それが効果的なのか、さらには実現のための信念・執念を持って行動しているのかを内省するのです。

そこで現在の行動を見直す必要性を自ら実感し、新たなアクションを検討するわけですが、ここでワーキング活動のメリットが発揮されます。
メンバー同士は活動期間中、JMSフレームの項目実現に向けた日々のアクションを話題にし、共有しているので、外見上なかなか窺い知れない他の経営者の思いや信念に裏打ちされた具体的な行動を肌で感じることが出来ます。

あるメンバーは「中小企業経営者は立場上、多くの人と関わりを持つが、詰まるところとても孤独な存在。自分のやっていることが正しいのかどうか、同じような立場にある他の経営者がどのような思いや執念をもってやっているのかを知ることが出来るのは大変刺激的で貴重な機会」と、この活動を評価しています。

一人で内省し、自己変革していくことは孤高で、途中でやめてしまっても咎められることはあまりないことから、継続的な実行にはかなり強い気持ちが必要となることでしょう。
先頭に立つ経営者同士が刺激し合い、気づきを与え合い、さらには学び合いながら、挑戦を続ける姿を共有することが、変革への大きな支えとなります。

2.メンバー各社の「目下の経営課題」をテーマとした活動に取り組む

今期は3チーム、8社について訪問スケジュールを組んで、実際の取組を現地現物で確認し、意見交換や助言をおこなっています。
今期からは、11名の企画委員が、課題に取り組むメンバー1社に対して1名乃至2名が担当として関わる形を取っています。

さらに、取り上げるテーマは、期間中に完了するものでなくてもよいものとしました。これは「JMSワーキング活動のための活動」になってしまった例が散見された前期の反省からです。

ただし、ワーキング活動終了時点で、何をどこまで実現するかということを具体的に[メインKPI]として設定すること、またその実現に寄与する[サブKPI]、さらに向上・改善するための具体的なアクションに直結する[プロセスKPI]の設定をお願いしました。

[KPI設定]を採用したのには2つの理由があります。

1点目は、KPIが明確になったテーマを設定することで、その会社のものづくりに精通していないメンバーや企画委員でも、短時間でより的確な助言や指摘を可能にするため。

2点目は、コーゼーション(目標設定からスタートしてプロセスを導き出す因果律)が日常的に身に染みついた大企業の企画委員が、中小経営者に寄り添い支援するためのコミュニケーションツールとしてKPIが有効ではないかと考えたからです。

中小企業経営は極言すればエフェクチュエーション(走りながら考える)が根本にあると思われます。様々に起こる事象に臨機応変に対応し、目の前のチャンスを逃さず、即断即決しながら既に動いているわけです。
それは中小経営の持ち味であり、代え難い強みだといえるでしょう。

その良さは大いに肯定するとして、一方で、社内で組織マネジメントを徹底する場合の多くはコーゼーションであり、手法に馴れておらずこの点は不得手、ということが散見されるのも事実です。

企画委員は、経営者であるワーキングメンバーに対して、経営の助言はできないものの、日頃叩き込まれている管理の「技」はお伝えできます。
7月から始まった担当企画委員によるメンバーへの事前訪問、打合せでは、設定したテーマからKPIに落とし込んでいくことについて、活発にやりとりしてもらっています。

企画委員は、自身の経験に裏打ちされた技を惜しみなく提供し、一方、メンバーも、企業規模の大小にかかわらず通用する考え方であることを素直に受け容れてくれているようです。

社内への展開のしやすさを実感している様子も多く見受けられます。

実践編最新情報(㈱グラベルクリーン様での活動)

最後に直近の取組状況をご報告します。

去る10月10日に今期から参加の㈱グラベルクリーン様に伺い、第3期最初の実践期訪問を実施しました。

当日はチームメンバー、担当企画委員に加え、ホスト工場であるグラベルクリーン様の幹部4名も加わり、事務局と併せて16名で、同社の現場視察、活動取組報告、参加メンバーの活動進捗報告を行いました。

未だ活動も緒に就いたばかり、という段階ではありましたが、ここに至るまでの担当企画委員とのテーマやKPI設定についての意見交換や議論の様子、得られた知見などについて報告がありました。

現場の視察では、同社の2大事業のうち、社名にもなっている骨材・砂利プラント向け機械の製造現場で、参加者達が熱心に視察。ものづくり企業経営者、大手メーカーの一線級管理職ならではの視点で活発なディスカッションが行われました。

歴史のある同社製品ですが、その使われ方、競合状況、グローバル規模での市場性などについて、同製品分野についての素人だからこそできる質問や投げかけに、新たな発見や気づきがあったようです。

(執筆者:マネジメント開発事業部 JMS推進機構事務局)

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