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GXスキル標準による社内カーボンニュートラル人材の育成

1.カーボンニュートラル人材の必要性

大企業だけでなく、自動車サプライヤーを中心に、カーボンニュートラルの目標を掲げる企業が増えています。しかし、CN実現の課題として、多くの企業は「担当部署がない」「知識を持つ人材が不足している」などを挙げています。
そもそも、カーボンニュートラル推進を担う人材像がはっきりしてないので企業活動や組織に組み込むことが難しく、とりあえず、ISO14001などEMS担当部署や総務部に担当させている企業が多いのです。
今後は、カーボンニュートラル人材像を描き、現在の社内人材が持つスキルとのギャップを浮き彫りにして、その不足を埋める必要があります。

2.GXスキル標準(GXSS)とは

そうした悩みを抱える企業に参考となるのが、「GXスキル標準(GXSS)」です。
この基準は2050年のカーボンニュートラル実現と社会変革を見据え、GXへの挑戦を推進するために必要なスキルセットです。
「GXスキル標準(GXSS)」は、すべてのビジネスパーソンが最低限持つべきGXリテラシー標準(GXSS-L)と、GXを推進するプロフェッショナルが必要とするGX推進スキル標準(GXSS-P)の2つで構成されています。
2024年5月に経済産業省がリードするGXリーグに参加するさまざまな業界の企業によって策定されました。
「GXリテラシー標準」は、経営層を含むGXに関わる全員に必要な学習項目の定義を行うもので、「GX推進スキル標準」は、GXを推進する人材の類型化とレベル別のスキル定義です。

3.CNの各ステップとは

CN実現の大まかなステップは4つあります。
Step1「知る」、Step2「測る」、Step3「目標/計画」、Step4「実行」です。
Step1「知る」は、なぜCNが必要か、メリット・デメリットを明確にすることです。
Step2「測る」は、二酸化炭素など温室効果ガスを、事業所内のみか、仕入先・顧客先も含むのか、それとも製品単位で算定するのかを決めて、排出量を算定することです。
Step3「目標/計画」は、達成する削減目標値、それに至るロードマップ、各年のCO₂削減率、削減の具体的な方法を決めることです。
Step「実行」は、削減方法を実施するための人材育成、実施を支援する補助金の獲得、実行できない場合の削減方法の見直しなどです。

 4.GXスキル標準の例

GXスキル標準では、独自指標のGXSSレベル標準を定義しています。このレベル軸において「GXリテラシー標準」はレベル1に相当します。GXの重要性を理解し、基礎知識を有していると定義され、全ビジネスマンに求められるレベルです。具体的には「低炭素・脱炭素燃料、再生可能資源、リサイクル材料、持続可能な素材の重要性を理解し、具体例を挙げられる」スキルが求められています。最高はレベル4で、プロフェッショナルとして独力で自社のGX推進の課題の発見・設定と解決・実行 をリードすることができると定義されています。

本年度では、GXスキルレベル1の身に着けるべき知識と学習が期待される項目(学習項目例)が定義されています。
学習項目は、Why(GXの背景)、What(何をすべきか)、How(どうするべきか)、Mind/Stance(マインド・スタンス)の4つがあります。項目毎に学習内容が設定され、どの程度身に付けるべきかが定義されています。

上記Step3「目標/計画」は、同スキルでは、What(何をすべきか)のひとつである「削減目標の設定・計画の策定」に該当します。

How(どうするべきか)の項目のひとつに、「燃料・原料転換、新素材」があります。その部分を以下に引用します。

GXスキル標準(GXSS)より引用

5.CN人材育成計画

「GX推進スキル」についてはまだ詳細の定義がされていないものの、この「GXスキル標準(GXSS)」を自社におけるCN人材育成計画の策定や、全社員の意識づけに役立ててほしいと思います。

(執筆者:中産連 主席コンサルタント エネルギー管理士 梶川)
自動車部品製造業・産業機械製造業・廃棄物処理業を中心に、温室効果ガス排出量算定・削減、省エネ診断、環境法令順守コンサルティングを行っています。


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