「ラストホイッスル」 4年 芳山詩恩
「ラストホイッスル」
4年 総合政策学部 芳山詩恩
「こんなにあっけなく終わってしまうのか」
Iリーグ最終節、試合終了の笛と共に今までに味わったことのない感情を抱きながら涙が出てきた。
みんなは最終節を勝利で終え、残留をほぼ確実にして笑顔でやり切った顔をしていた。
そんな中、自分はここまで支えてきてくれた人を思うと悔しさと申し訳なさで涙が出ていた。
勝ったのに涙が出てきたのは初めてだった。
もちろんここに至るまですべては自分のせいである。それは十分わかってはいる。わかってはいるけど、少しだけ思いのたけを話させてほしい。
正直、4年目の1年間の自分の起用のされ方にはずっと納得いってなかった。なぜ毎回スタメンじゃないのか、なぜ自分のパフォーマンスが評価されないのかわからなかった。常に自分に向けていたベクトルが最後の方は外に向いてしまっていた。
時には、去年怪我をしてなかったら去年同様B1でサッカーができたのか、それともステップアップしてAでやれたのかなど、たらればばかり考えていた。
正直不満を持ちつつサッカーをやっていたことは否めない。
自分のせいなのに外にベクトルを向けて、不満を持ちつつサッカーをしていることが自分でも理解していたからこそ、自分に余計に腹が立った。
それでも2度目の前十字靭帯損傷から今年の5月に1年ぶりに完全復帰したことや、ラスト1年しかないという思いからサッカーをできることに感謝し全力で楽しもうとプレーしていた。
しかし、最終節に限り出場時間はアディショナルタイム入れて5分。
家に帰っても心の整理はできず、何もやる気が起きなかった。
抱いた感情は悔しさでも苛立ちでもない。
「申し訳ない」ただそれだけ。
今まで自分にサッカーを教えてくれたコーチ
自分に期待してくれ、支えてくれた友人
切磋琢磨してきたサッカーで出会った仲間たち
そして文句も言わず、18年間サッカーを自由にやらせてくれ、1番近くでサポートし続けてくれた1番のサポーターであった家族
今まで支えてきてくれた人たちが頭から離れなった。
こんなに18年間迷惑をかけ続けたのに、最後こんなにあっけない終わり方をしちゃってごめん。
中大サッカー部のみんなと比べると、大したことないかもしれないが自分では努力しているつもりだった。だけど報われないこともやっぱりあるんだなと感じた瞬間だった。
「楽しいサッカー人生だった」なんて言葉絶対に言えないと思った。
それでもありがたいことに2週間後には西が丘で引退試合となる中筑定期戦があった。
素晴らしい仲間と共に素晴らしいピッチで、素晴らしい相手と戦える最後のチャンスがまだあった。
迎えた定期戦当日
最後の最後にゴールを決めることができた。
大学で決めたゴール数なんて両手で数えられるぐらいしかない。
だからめっちゃ嬉しかったし、ゴールを決めるまでの流れや決めた瞬間のことは今でも鮮明に覚えているし、今後も忘れないだろう。
そして引退試合を勝利で終わることができた。
今度は涙を流すことなく笑顔で試合終了の笛を聞くことができた。
試合が終わったあと、あきに「努力してたもんな。報われたね」と言われた。
近所の公園でひたすらしたマーカードリブル、遅くまで残ってやった止める蹴る、合計2年半近くの膝のリハビリ…。
「今までの頑張りは無駄じゃなかったんだ」と素直に思えた。
あのゴールは自分が頑張るために支えてきてくれたすべての人のおかげで決めることができたゴールだと本当に思う。
やはり振り返るとこの18年間は本当に何にも変えることのできない、本当に素晴らしい時間だった。
そして今は思う。
「素晴らしいサッカー人生だった」
本当に心の底からそう思えた。ありがとう。
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