妻による声明(2023.1.23)

私は、2022年12月まで「フェミニズムなら人を傷つけていいわけじゃない」という名前でTwitter(https://twitter.com/standupallguys)を運用していた者です。現在、アカウントが凍結されているため、夫のTwitterアカウントにこの文章を掲載してもらっています。

先日、私の夫・中野雄斗(以下「夫」)が、「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」(以下、「なくす会」)代表であり劇団TremendousCircus団長である知乃氏を被告として、「ハラスメントをなくしたいと堂々と言うのであれば去勢したほうがいい」旨発言についての損害賠償請求を行うため、訴状を東京地方裁判所立川支部民事部に提出いたしました。

念の為先に申し上げますが、私共夫婦は最近提訴された谷賢一氏とは直接の面識がなく、恥ずかしながら谷氏のハラスメントに関しては告発によって初めて知りました。したがって、谷氏に協力・賛同する立場の人間ではありません。また、最近話題になっているcolaboの会計問題につきましても、偶然に時期が重なったのみであり、便乗するような意図はありません。

1. なぜ私の実名をすべて明かさないのか
 端的に申しますと、「本訴訟とは無関係の人物に殺される可能性が高いから」です。
私は近年、恋愛感情の不成就に端を発し、物理的に命を奪われかける刑事事件の被害者になりました。法的には解決した事件ですが、逮捕できない程度の二次加害が続いています。
夫とは事件後に結婚し、信頼のおけるごく近しい人物を除いては結婚の事実を明らかにしていません。今後一生涯、明らかにすることはできないと思います。事件の内容やその前後文脈等を鑑みるに、結婚の事実を加害者側が把握すれば私も夫も命が狙われるとみています。加害者は私共夫婦の知り合いからある程度容易に辿れる範囲の人物であり、実名を明かせば私だと分かってしまいます。
実名を出すべきではないかと夫とも何度も相談しましたが、やはり私だけでなく夫の命、ひいては私共夫婦の実家家族の命も守るため、このように名字だけ明かす形になってしまうこと、何卒ご容赦いただければと思います。なお、私個人を特定するようなご質問には「この人ですか?」というものも含め恐れ入りますが一切お答えいたしかねます。加えて、憶測で「この人だろう」と公開の場で発言することもお控え願います。再三で申し訳ありませんが、結婚の事実を知っている方も、どうか引き続きご内密にお願いいたします。

2. 提訴とその公表について
 当然ながら、本提訴は「なくす会」のハラスメントをなくそうという理念自体に反対する目的を持つものではありません。「なくす会」に救われた方々がいることを思えば、提訴などすべきでないという声もあることと思います。私共も救われた方々に対し申し訳ない思いがあります。ただ、本訴訟と「救われた」という事実は無関係です。また、社会的に正義と言えるから、救われた人がいるから何をされても黙るべきだというのは、私は違うと思っています。

 知乃氏個人がフェミニストでありミサンドリストでもあるということに対しても、思想は自由ですから「内心を変えろ」などと要求する意図はありませんし、そのように要求する権利は誰も有していないと思います。しかしながら、ミサンドリーの思想を内心にとどめず他者に振りかざすと、それは暴力になり得ます。

知乃氏が過去性被害に遭ったことは大変痛ましいことです。ただそれは、他者を傷つけることを正当化しません。Aの件に関して被害者であっても、Bの件に関しては加害者である、ということは成立するはずです。
 知乃氏は2022年11月7日にTwitterに「人の体に勝手に触るやつ、ケチつけるやつ、みんな死んで当然!」と投稿していますが、ご自身が「ケチつけるやつ」になってしまっていないか、一度お考えいただきたく思います。

https://twitter.com/c_Tremendous/status/1587719392678137856?s=20&t=vWuBldvxZLZFMHNJkN7qMg 2022年12月23日閲覧

ただ、私共は知乃氏に「死んで当然」とは露ほども思っていません。人間は、変わることができます。これは勝手な願望に過ぎないのですが、知乃氏には今は難しくともいつか「故意に他者を傷つけた。それは暴力であった」という認識を持ち、繰り返さないようにしつつハラスメントに抗議する姿勢をとっていただければ嬉しいです。この度の提訴がその契機となれば幸いです。

知乃氏に批判的な立場の方や疑問を持つ方、更には傷つけられてしまった方は夫だけにとどまらないと思いますが、それを表明しても「フェミニズムを勉強しろ」「ハラスメントについて何も行動していないくせに」「傷つくわけない」更には「加害者側」、その他侮辱的な言い回しで返されてしまう状況があったと認識しています。
しかし、行動していようがしていまいが、フェミニズムをよく勉強していようがしていまいが「酷いことは酷い」と考えてよいと示す必要があると思いから、熟考の末夫は提訴の公表に踏み切り、私もそれに賛同しました。行動していないのに、フェミニズムをよく勉強していないのに「酷い」「傷ついた」と思うなど間違いであり恥ずかしい──などということはないと思います。「演劇をよく勉強していないくせにハラスメントだと騒ぐなんて恥ずかしい」はおかしいですよね。構造的には、それと大きな違いはないと私は感じています。
 

3. なぜ原告の妻も声明を出すのか
 夫だけが声明を出しても意味がないだろうと考えました。残念ながら、理由は「夫は男性だから」です。知乃氏はミサンドリストであると公言しており、2022年10月14日付のnoteにて
「わたしはいつだって全速力の助走をつけて、全体重かけて、この世の全ての男を殺す第殺戮のために日々怒り狂っています。」、「一瞬で男がわたしの顔を見ただけで殺意を感じる様な私に、客席に私が座っていたら泣いてしまって演技ができなくなるようにならねばなりませんね。」(原文ママ)
と記述しています。
引用元:知乃氏のnote 2022年10月14日の記事「引き裂かれるわたしたち・ついでに」より 2022年12月19日閲覧
https://note.com/c_tremendous/n/n637bcdd44c98

上は演劇作品について述べている記事だとしても、男性一般についてのことと読めてしまいます。
また、既に削除されていますので詳細は伏せますが、知乃氏が男性を見たら「どうしたくなるか」ということについても、Twitter上で暴力的と言わざるを得ない投稿を目にしたことがあります。
※ここまでの知乃氏の発言に関しては、人の考えは変わるものと思いますので去年のもののみに言及しました。

主にこれらのことから、心苦しいですが夫だけが何か発言したところで「男だから」という理由で知乃氏や知乃氏に賛同する方々からバッシングされて終わりだろうと考えました。男の加害性を自覚していないからこんなことをするのだ、フェミニストに対する嫌がらせである、と。

 再び個人の経験を勝手に開示し恐縮ですが、私は過去に性暴力被害に遭ったことがあります。その時は泣き寝入りしたため、証拠はありません。
 知乃氏は「女がそう言っているのならそう」「レイプ被害者がいうのだから間違いない」という旨の発言をしていたことがあると認識しておりますが、であれば私のこの声明も「女がそう言っているのならそう」「レイプ被害者がいうのだから間違いない」に当てはまるはずです。私は、一人の女性として、過去に性暴力被害に遭った者として、この文章を書いています。知乃氏が夫にした発言は、社会通念上妥当なものとは言えないと思います。
 (もちろん、本来であれば論の正当性・妥当性はその人の背景とはある程度は無関係にあるものと思います。どのような背景を持つ人であれ、「この背景を持っているからどんな論でも正しい/間違っている」というのは健全ではないと私は考えています。)

4. 終わりに
 そもそも皆無かもしれませんが、念の為に記述します。
私共は本記事をお読みになった方々に対し、賛同を表明してほしい・すべきだとは考えていません(賛同の表明を禁じるものでもありません)。もちろん、本記事の転載やTwitterでのリツイートに関しては、必ずしも賛同を示すものではないと考えます。
今後、私共は相当なバッシングに遭うかもしれません。もし私共への賛同を表明した場合、その方もバッシングに遭うかもしれないと危惧しています。私共への賛同を表明した人が、それを理由に傷つけられるようなことがあってはならないと思います。
また、本訴訟を持ち出して知乃氏や知乃氏の賛同者、および「なくす会」に救われた方々に対し誹謗中傷・侮辱・揶揄を行うことは絶対におやめください。批判と誹謗中傷・侮辱・揶揄は異なります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

2023年1月23日

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