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マンション大規模修繕工事の市場動向は?今後の課題や予想について 2023/9/14

日本のマンションの建築は、大きく分けると2つの時期に集中的に行われてきました。

1つ目は高度成長期です。日本の高度成長期は、1955年~1973年までの19年間の経済成長のことを言います。当時の日本は終戦から10年が経ち、自動車や電気・機械を始めとする産業が、海外からの最新技術を取り入れ、急速に経済が発展した時代でもあります。

急速な経済発展を支えるために、多くの労働者が住むための住宅が必要となったのです。そこで国は1955年に日本住宅公団を設立し、画一的な板型RC造の集合住宅が何棟も連なる「団地」を日本全国の各都市に建設しました。

2つ目はバブル期です。バブル期とは、1980年代後半から1990年代初頭までの好景気だった時代のことを言います。バブル期が誕生した背景として、莫大な不動産投資があります。

当時建築されたマンションの販売価格は、数億円を超えるものも多く、「億ション」とも呼ばれていました。そのような高額マンションでも飛ぶように売れていた時代だったのです。

そして現在では、当時建設した多くの大規模建築物の老朽化が問題となっています。そこで今回は、マンションの大規模修繕工事の現状について解説します。


1.マンションの大規模修繕とは

マンションのような大規模な建築物には、一般的に鉄筋コンクリートが用いられます。鉄筋コンクリートとは、鉄筋を組んで周囲をコンクリートによって固めることで、強固な柱や床などを形成するものです。

コンクリートは、圧縮に強く引っ張りには弱い材料です。一方、鉄筋は、圧縮には弱く引っ張りには強い材料です。コンクリートと鉄筋を組み合わせることで、建物に発生する圧縮や引っ張りの力に耐えることができます。

また鉄筋は錆やすく、熱に弱いという欠点がありますが、コンクリートで鉄筋を覆うことで、鉄筋の錆を防止して熱からも守る役割があります。

鉄筋コンクリートの法定耐用年数は47年とされており、寿命が長いことも大きな特徴です。しかし建物には地震や台風など、一時的に大きな力がかかることがあり、想定を超える大きな力が加わった場合は鉄筋コンクリートの寿命に影響があります。

大きな力を受けない場合でも、鉄筋コンクリートのマンションは13年から16年の周期で定期的に老朽化した設備や躯体の修繕が必要です。

マンションには多くの人が住んでいるため、定期的な修繕であってもその工事規模は大きくなり住人に負担がかかります。しかしマンションで長い間安心して暮らすためには、定期的に大規模修繕を行わなければなりません。

2.マンションの大規模修繕の市場について

高度成長期とバブル期に多くのマンションが建築され、現在もそれらのマンションを維持するために、定期的に大規模修繕が行われています。高度成長期とバブル期以外にもマンション建築は行われており、今後も新たなマンションが建設されることでしょう。

国土交通省の審議会である住宅宅地分科会において、今後のマンションの管理適正化及び再生の円滑化のあり方について報告がありました。

その報告の中で、築40年超のマンションは81.4万戸あり、10年後には約2.4倍の197.8万戸、20年後には約4.5倍の366.8万戸と高経年マンションが増加するとされています。

参考:国土交通省「マンション政策の現状と課題」

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001313642.pdf

これらのマンションを維持するためには、定期的な大規模修繕が必要ですが、タワーマンションなどの出現により年々修繕の大規模化が進んでいます。

また修繕工事の専門化や複雑化も進んでいる状況です。大規模修繕を必要とするマンションが増加する一方で、修繕工事のできる業者は限られています。

3.マンション大規模修繕の課題と今後

マンションの大規模修繕工事についてはいくつかの課題がありますが、特に深刻なのが周期的な修繕工事の実施です。

国土交通省の住宅宅地分科会では、大規模修繕が必要な時期を迎えるマンションに対して、築40年以上のマンションの約4割、築30年以上のマンションの約2割が適切な時期に大規模修繕が実施できていない可能性があると報告されています。

特に築年数の古いマンションについては、所有者の高齢化や管理組合の担い手不足、住人の修繕工事実施の同意など様々な問題があります。

また古いマンションでは空き住戸もあり、修繕工事に必要な費用を準備できないこともあるでしょう。大規模修繕を必要とするマンションが増える状況に変わりはありませんが、計画的に修繕工事を行うことが課題となっています。

参考:国土交通省「マンション政策の現状と課題」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001313642.pdf

4.マンション大規模修繕が必要な理由

多くのマンションは鉄筋コンクリートでつくられています。マンションは大きな建物であるため、修繕工事も大規模になります。鉄筋コンクリートで建てられているマンションについて、大規模修繕工事が必要な理由を説明します。

4-1.中性化

中性化とは、コンクリートのpHが中性化することです。施工初期のコンクリートは強アルカリ性であり、鉄筋の腐食を防止する効果がありますが、時間が経つとコンクリートの中性化が進みます。コンクリートの強アルカリ性を低下させる要因として、酸性雨や熱などがあります。

建物外壁部のコンクリートは、雨や太陽光の影響を直接受け、雨や太陽光に長期間さらされることによってコンクリートが中性化します。コンクリートの中性化によってpHが10程度になると、内部の鉄筋が腐食し始めると言われています。

4-2.塩害

塩害とは、コンクリートに浸透した塩化物イオンによって生じる鉄筋コンクリートの劣化のことです。塩化物イオンが内部に浸透し、鉄筋まで到達すると鉄筋を腐食させます。

海辺の近くや海から離れていても海からの潮風を受けるような高層マンションでは、塩害が発生しやすいと言えるでしょう。

4-3.アルカリ骨材反応

アルカリ骨材反応とは、コンクリートをつくる時に一緒に混ぜた砂利や砂などの骨材の成分が、コンクリートのアルカリ性水溶液と反応して、骨材が異常膨張することです。

骨材が異常膨張すると、コンクリートにひび割れなどの現象が発生します。アルカリ骨材反応によってコンクリートがひび割れてしまうと、コンクリートの強度低下や鉄筋腐食の原因となります。

4-4.凍害

凍害とは、寒冷地においてコンクリート内部の水分が凍結して膨張する現象です。長年の間、凍結と融解を繰り返すことによりコンクリートの劣化が進行します。

マンションで凍害が発生しやすい部位としては、突出部や水が流れる経路、日射が当たる南面に発生する傾向にあります。凍害による劣化が進行すると、ひび割れの進行以外にコンクリートのはく離・はく落が発生して、安全性などに影響を及ぼします。

5.マンション大規模修繕での足場の必要性

マンション大規模修繕では、鉄筋コンクリートの劣化状態を確認して、劣化が進行する前に補修しなければなりません。

コンクリートの劣化は主に外壁側から始まるため、修繕工事も外壁が中心となります。そのためマンションの大規模修繕工事には足場が必要となります。

マンションの大規模修繕工事で組む足場自体は、新築時と大きな違いはありませんが、修繕工事の際には住人に対する配慮が必要となります。

特に配慮しなければならないことは防犯対策です。マンション大規模修繕工事で建物全体に足場を掛けると、高層階の部屋でも容易に外から侵入することが可能になります。

実際にオートロック付きのタワーマンションで、大規模修繕工事が行われた時に足場を利用した窃盗事件が発生したことがありました。

大規模修繕工事時における窃盗事件防止の対策として、足場の出入り口を施錠管理したり防犯カメラを設置したりして、工事関係者以外は足場に立ち入りできないようにする必要があるでしょう。

最近では、防犯ニーズの高まりから養生枠の需要も増えています。

中央ビルト工業:「スカイフェンス」

不審者が建物内に侵入するのを防いだり、外部からの視線を遮断したりするためにも、しっかりと養生を行うことが大切です。

6.まとめ

高度成長期やバブル期に建築されたマンションの中には、老朽化で解体されているものもありますが、現存するものも多くあります。

今後もマンション建設は行われるため、定期的に大規模修繕の必要なマンションは増加する傾向です。マンションに限らずどの建物についても、定期的に修繕する必要がありますが、マンションの場合は建物自体が大きいため、希望する時期に工事ができない可能性があります。

マンション大規模修繕における足場工事のニーズは今後も増加傾向となるでしょう。そのため、多様なニーズに対応できる施策が求められています。


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