日本漫画の海外輸出について

【日本漫画の国内外市場現状】
日本漫画の市場規模を売り上げベースで見ると、国内は約4,400億円、海外は約1,000億円弱。海外でもっとも大きいのはアメリカで、約250億円。
日本漫画の海外市場を国別売り上げ割合で見ると、北米が25%、フランスが22%、 韓国が15%、ドイツが8%、中国が6%。国別成長率で見ると、アメリカが7年で約7倍、ヨーロッパは2.6倍、中国を含むアジアは2倍ほど。(講談社データより)

【日本漫画の海外市場が拡大できる原因】
日本漫画の海外市場が拡大できる主な要因は日本のアニメを配信する動画プラットフォームサービスが増えたため。
ネットフリックス、マゾンプライム・ビデオといったさまざまな動画を観られるサービスやクランチロールや中国のビリビリなどアニメに特化した配信サービスが出てきた。その結果、これまでアニメや漫画について知ってはいたが観たことがなかったような人たちがアニメを視聴できる機会が以前より格段に増えた。
#現地の人々は漫画購入に至る流れ
最初はアニメを観て作品を知りファンになる。好きになればなるほど続きが気になり、原作を読んでみたくなる。それで現地で出ている漫画を購入する。

【海外向けの作品作りについて】
僕は昔、海外向けだから、「ファンタジーやSFものを入れていこう」「日本的なラブコメはやめておこう」という考えがあった。実はそれが乱暴的な判断だった。『七つの大罪』などファンタジー系のものは欧米、アジアを問わず様々な国・地域で人気がある。 一方台湾、韓国、タイなどアジア地域では『金田一少年の事件簿』がいまでも大人気で、アメリカでもアジア系アメリカ人を中心に人気がある。国ごとにニーズや好みは結構違うし、同じ国のなかでも違うことはよくある。「海外向けの作品を創る!」と考えるときは、各国の現地法人がどの作品を選ぶのか?も指標にしながら作品テーマを考えた方がよい。

【競合:カラーの縦読み漫画】
約半年前まで、僕は「日本漫画はクオリティが高いから、負けるはずがない」と思ってきたが、デジタルに限ってそうともいえないと中国のWeb漫画を見たときに分かった。スマホでマンガを読む人たちは、カラーの雰囲気を楽しみながら、でも文字が多いものを避けたいというライトにコミックを消費したい人たちだと思う。

インドネシア、ベトナムなど物価が安いところでは書籍の値段も安いこともあり日本の出版社が現地でライセンスビジネスを拡大していくことがなかなか難しい。一方で韓国や中国はそういう国に対して、ほぼ無料で簡単に手に入れるカラーの縦読み漫画でガンガン攻めている。

【海外にデジタル化作品を配信していくネック】
海外に作品を配信していく大きなネックの一つとして、海賊版の存在だ。海賊版の特徴として翻訳されたコンテンツのラインナップや日本と同時に現地版を公開するスピード感にある。海賊版に対抗するために、まずは海賊版の特徴を正規版でも同等以上に充実させることが不可欠。そのうえ、作家さんにご協力を頂いて制作秘話や制作過程を披露したり、原作の面白さを損なうことなく読者に伝える良質な翻訳を行ったりすることも海賊版対抗策だと考えられる(アイディアに過ぎないが、試してみる価値があるかも)

【日本の漫画をもっと世界に広げていくために】
日常生活のなかに漫画があふれている日本と違い、中国を含め、海外に住んでいる人にとって漫画は身近なものではない。読者層を広げていくために、まずは漫画の面白さを現地の人々に体験してもらう必要がある。
中国を例にすると、北京、上海、広州、杭州、武漢、瀋陽など一線都市で漫画原画展や漫画家さんのイベントを演出することが日本漫画との接点作りに期待される。グッズ販売や漫画キャラクターを使った広告も考えられる。
東京オリンピックを狙って期間中に訪日客に漫画を一巻無料で読んでもらうことも日本漫画との接点作りに期待される。日本に興味があってやってくる人たちに、日本漫画を読んだという体験を持ち帰ってもらって、その体験を母国でも継続的に楽しんでもらえば、日本漫画の海外での売り上げ増につながると思う。

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