なぜ『千と千尋の神隠し』は今でも中国で人気を博しているか

19年前に公開した『千と千尋の神隠し』は今でも中国で人気を博していることに気になり、その原因を調べてみました。
興味があれば、読んでみてください。
『千と千尋の神隠し』は2019年6月21日に中国国内上演し、その後一週間を経った時点で興行収入は3億元(約46億円)を突破した。一週間の間、Weibo話題ランキングで常に上位を取っていた。19年前に公開した『千と千尋の神隠し』は今でも中国で人気を博している原因として、映画が兼ね備えている「教育性」と「エンターテインメント性」にあると思う。
大人にとっての教育性
■ 千尋の変化によって自分を見えた
 千尋は元々すぐ卑屈になってわがままを言ったり両親に頼ろうとしたりする子であった。しかし、油屋で色々な事を経験し、千尋は勇気を持つようになった(湯婆婆と論弁をし、遠いところにいる銭婆を探しに)、思いやりのある人間になった(河の神、ハクを助ける)。
 社会人になった人々は千尋の変化から自分を見えた(共感ができた)。社会に入ってから親はそばにいなく、頼りの人は周りにすでにいない。問題やトラブルがあれば、それに直面し問題解決に努める。
■ 千尋とカオナシから学んだ「自我を忘れてはいけない」
 物語ではずっと名前を忘れてはいけないと強調する。名前は自我を表すもの、名前が忘れたら、ただの働き機械となる。神達からもっと金を貰うために、油屋に勤める人々は昼も夜も働く。働かない人々は、千尋の両親のように動物になり、そして最後食べ物になる。千尋は生きていくために、自我のない働き機械の"千"になりかけた。
 カオナシも自我を忘れかけたもう一つのキャラクターである。カオナシは孤独で冷遇されているイメージであるが、油屋に入って自分を強制的に変えて周囲の人間に受け入れられるようになると、より孤独で空虚であることに気づく。金銭で気が狂ってしまい、自我を忘れ、食欲(欲望)がますます大きくなっていく。カオナシは金銭で千尋と仲良くしたいが、千尋は金銭を断り、河の神からもらった団子でカオナシに全ての食べ物(欲望)を吐き出してもらった。そして、カオナシは元の自分に戻った。
子供にとっての教育性
 多くの保護者のコメントによると、『千と千尋の神隠し』は子供を連れて見る初めてのアニメ映画であり、この映画は自分と子供にとって”良い選択”だという。
 多くの保護者にとって、『千と千尋の神隠し』は子どもに多くの簡単かつ貴重な道理を教えてくれた。一、勇敢であること。気が弱くトンネルに入る勇気がない千尋から勇敢に両親を救出できた千尋に変わった。それはまるで子供一人一人の成長の縮図である。二、他人の助けを受けて“ありがとう”と言うこと。急いでボイラー室を出ていく千尋は、リンさんに釜爺にお礼をまだ言っていないことで叱責された。このようなシーンを通じて、礼儀正しさを子どもたちに訴えかけた。三、重要なものを自分で守る。ハクを救うために、千尋は危険を無視し、高いところにある真っ直ぐな壁を登り、湯婆婆の部屋に入り込んだ。また、片道しかない電車に乗って、銭婆のところを訪ねに行った。
エンターテインメント性
 千尋とハクの関係は多くのカップルに感動させた。『千と千尋の神隠し』の上演に伴い、中国全国でカップル映画鑑賞ブームが起きた。人生の中で最も重要な人と一緒に見ようとし、二人分のチケットを並べる写真を次々とネットにあげていた。お互いに離れ、同じ時間に上演する『千と千尋の神隠し』を楽しもうとするカップルも多くいる。また、気になる相手を誘って、一緒に『千と千尋の神隠し』を観る人も少なくない。
 カオナシは中国のカップルにとって"片思い"の典型的な代表。千尋の優しさに感動され、金や薬札を千尋に渡し全力を尽くす。Weiboでは"カオナシのような男性と結婚したい"というコメントも多く出ている。
【傾向】
 中国では、何か重要な道理を人々に伝える作品が特に人気。言い換えれば、「教育性」と「エンターテイメント性」を兼ね備える作品は中国で受け入れやすい傾向がある。『千と千尋の神隠し』や『ナタ~魔童降臨~』はいずれもそうである。

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