発酵と僕



僕が発酵を知ったのは、父の影響からでした。

幼いと言っても中学に上がるかそれ位の時期に
お弁当に良く実験的なメニューが並ぶ様になり
タダ単純になんだこれ?何か良く分からない食べ物?がある。これは一体何を目的にここに詰め込まれているんだろうと不思議さと、
偉大な父が作ってくれた、他の人のお弁当にはまず入ってないであろう優越感が当時の僕のお弁当の中には存在していた。
時にはあいつの弁当からは変な匂いがすると言われ、一緒にご飯を食べて貰えない事もあった。

中学生位の僕、家族はそうした日常的な所から
父が創造した発酵料理の世界に入っていった。
(創造=あの世とこの世を送還する)

当時はまだ発酵について話を聞かされても特に
興味も無く、「へーソウナンダー」と適当に返事をしていた記憶がある。

ある日、いつもの様に弁当を食べようとした時の事。

あれ?何か弁当全体と言うか、弁当袋、鞄の中
全てに妙な液体がこぼれてる。なんだこれ???

そう、あろう事か弁当の中に、
「甘酒」
が忍びこまされていたのである。
(当時の僕の弁当箱はタッパー)

しかも普通の甘酒では無い。ピンク色なのだ。
一瞬、イチゴミルクでも鞄に入れてたっけと思ったが、2秒後には父の笑顔が思い浮かんだ。。

父は仏教に詳しかった。

お釈迦様や空海さんの事など色々喋っていた気がする。記憶が曖昧だが。
父曰く、お釈迦様や仏陀、その周辺の高尚なお方達が食べていたであろうミルク粥なるモノから
発想を得て、「発酵ミルク粥イン苺」を創造したらしい。これが溢れて僕の鞄と弁当箱を浄化してくれたみたいだ。

中学生の僕は育ち盛りなのもあり空腹に耐える事が出来ずに、鞄を洗うのは母に任せようと即決し、高尚な発酵ミルク粥イン苺を取り敢えず食べたのだが...........
美味しい?
あれ?
鞄の匂いするけど、あれ?美味しい?
もしかして?
鞄と一緒に僕も少し高尚な気に当てられたのか
もしくは偉大な父を疑う気持ちが浄化されたのか、
美味しいのである。
(鞄の匂いはするが)

発酵ミルク粥イン苺美味いじゃん!!
スゲー!!なんだか良く分からないけど!
育ち盛りだった事もあり全て平らげていたのだ。

当時の僕はまだ発酵や料理であったりとは無縁の存在で、仏陀や空海さん達面白いもん食べてたんだなぁとか、ただただその美味しさに驚いていた。発酵が持つ力を意識する事も無く、その日の空になったお弁当を鞄に閉:まった。
日常の風景の一つとして。