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小説

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2022年7月の記事一覧

ぽんぽこあわもち

「名物の『ぽんぽこあわもち』です」  大きな一枚板の座卓の真ん中に、小皿が置かれていた。 「まあ、食べてみんさい」  小皿には包装紙に包まれた餅だか饅頭だかが二つだけ乗っている。私はその一つ、紅と白があるうちの紅色の方を手に取って開く。中から黄金色の、潰れた形の餅が顔を出す。 「これ、去年出来たばっかりの新名物なんです。新名物って言っても、文献を調査してね、古い名物を再現したんですわ。芋の一種を餡に使って、それを厩肥で包んで焼くんです。狸の伝説があったらしいんで、ぽんぽこあわ