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ハチドリ舎とのコラボ企画シリーズがはじまりました!〜第1回開催レポート〜

 2023年1月13日(金)に、広島市のソーシャルブックカフェ・ハチドリ舎で、「みんなでつくる中国山地」とのコラボ企画シリーズ第2弾が始まりました。第1弾のテーマ「獣害」に続き、第2弾のテーマは「空き家」です。

 みんなでつくる中国山地百年会議からは、事務局長・森田一平さん、田中輝美さん、中尾圭が参加し、会員のみなさんもちらほら。最初に自己紹介をして、みなさんが空き家に対してどんな関心を持っているのかを伺いました。「実家の空き家が複数あって…」「仕事で空き家に関わることをしていて…」「古民家に移り住みたいと思っていて…」などなど、空き家の所有者、使いたい人、活用策を考えたい人と、いろいろな立場の人たちが集いました。今回は空き家に関しての総論的な話も多く含まれているため、詳細にレポートしてみたいと思います!


 まずは、森田さんから、空き家についての基礎情報をインプット。全国的にどれくらい増えているのか、そもそもなぜ空き家になってしまうのか、中国山地において空き家がどれくらいあるのか、活用のハードルになっているものは何かといった情報を伺いました。

なぜ空き家が増えてしまう?

 日本の空き家は846万戸。2018年頃の時点で、中国5県で57万5800戸の空き家があります。ちなみに東京都は81万戸だそう。
 島根県で考えてみると、「総人口の減少」「世帯数の増加」「世帯人口の減少」が起こり、それにしたがって空き家も増えてきました。つまり、戦後の急激な人口移動、さらに核家族化、世帯当たりの人数が徐々に減っていくにつれて、空き家が増えてきたと言えます。

 また、日本では新築住宅の制度の優遇措置や支援制度が偏っているために、中古物件を改修するよりも新築を建てた方が有利になってしまうという社会的背景もあります。島根県で言えば、中古物件の取引は県全体の取引物件の5%しかないそうです。
 2005年から人口減少時代に入っても、新築住宅の増加は止まらず、「空き家は増えるのに、新築住宅がどんどん建っていく」という状況になっているのが現在です。日本の住宅政策は、人口減少社会に適応できていないと考えることもできそうです。
 日本の住宅の平均寿命は28年と言われており、ヨーロッパでは70年と大きな違いがあります。これは、日本ではライフステージに応じてちょっとずつよい家に移り住むというスタイルになっており、物件はあるが住む人がどんどん変わっていく、という状況になっていることがわかります。(このあたりのことが気になる方は、『新築がお好きですか?─日本における住宅と政治』砂原庸介(ミネルヴァ書房)をぜひご一読ください。)

なぜ空いているのに貸せない?

 田舎の空き家の大きな問題点として、「空いているのに借りられない」ということがよく挙げられます。その理由はいくつかあります。

①家そのものが先祖代々受け継いできたものであり、墓や仏壇がある
②家に関わる関係者が多く合意形成が難しい
③価格が低いので取引業者が嫌がる
(賃貸契約を仲介した場合、仲介料が5000円や1万円程度では…)
④家主にとって貸しても儲からない
⑤古い家は冬がとても寒いし、改修に対する助成制度が少ない
⑥建築基準法改正以前の木造住宅が多く、構造的に安全面を保証することが難しい
⑦近年、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)が強化されたことによる建築物の構造規制

 空き家に携わったことがある方は、どれかひとつは経験があるのではないでしょうか?


おおなんDIY木の学校の取り組み

 そして、森田さんが島根県邑南町で実践している「おおなんDIY木の学校」やそれに関連した活動についても紹介していただきました。

 「おおなんDIY木の学校」は、邑南町の物件を舞台に実践的なDIYスキルを学ぶことができるDIYスクールです。特徴は、自然素材を極力使った再生方法を学べることと、民間資格を取得できること。
 参加者は参加費を払ってスクールに参加し、その道のプロから学ぶことができ、施主は物件修繕費用を軽減することができるという取り組み。古い物件の再生には多額の費用が必要となるので、これはうれしい仕組みです。邑南町では、この取り組みで既に5軒を改装しているそう。いずれもパブリックな場所なので実際に訪れることができますよ。(mikke紙楽社うづい通信部コイサイド/空手道場)

 ただ、このスクールを開催するためには、リフォーム可能な物件を見つけ出し、そこをパブリックな場として活用したい人を見つけ、その人に施主となって材料費を負担してもらわなくてはなりません。森田さんは、地元出身の強みを生かしながら、物件の掘り起こしに奔走しているとか。

 ここからは、参加者のみなさんとのやり取りです。


物件の片付けって業者じゃないとできないの?

 片付けは、お金がかかると思われていますが、自分で捨てればほとんどお金をかけずに処分することができます。ただし、その片付けが事業ではないということが重要。事業として請け負って片付けをする場合は、指定された産業廃棄物処理業者に処分を依頼しなければなりません(業者に依頼すると高いのは、適切に分別して処分場まで運ぶため、お金と手間がかかるからなんですね)。

 また、必要としている人に譲ることもできるでしょう。家具や衣類は寄付できるところがあったりするほか、古道具屋に持ち込んだり、片付けを手伝ってもらう代わりに好きなものを持って行ってもらうこともできるかもしれません。
 その際に気を付けておきたいのは、家主と事前にきちんと話し合い(できれば書面をかわし)、家主にとって大事なものはとっておくこと。物件を売買ではなく賃借する場合は、片付けの際に立ち会ってもらうほうがよいでしょう。その場で現金化するようなやり方をすると、大家さんにとっては損した気持ちになってしまいかねないので、注意した方がよさそうです。(森田さんの場合は、あくまで労力と交換で無償で差し上げる、という形にするようにしているそうです。)


水回りの改修ってどれくらいかかるの?

 あくまで目安ですが、トイレだけで60万円、下水につなぐ場合は設置費がさらに20万円くらいが相場です。安く済ませることだけ考えず、地元の設備屋さんにお願いすれば、その後のメンテナンスなどもお願いできるので長い目で見ればそちらの方がよいこともあります。
 森田さんも、一緒に穴を掘る作業をして工賃を少し安くしてもらったこともあるそうで、近い関係性であればDIYでできる部分は「一緒にやらせて」と相談できる可能性もあります(ただ、余計に手間をおかけする場合もあるので、相談できる関係性は大切)。


安く借りて自分の手で直してみたいなら「DIY型賃貸借」

 通常の賃貸物件では、大家さん側が修繕をした上で貸し出します。しかし空き家の場合は、大家さんに修繕する気はないけど借りたいというケースがほとんど。そういう場合の考え方として、借りた側が修繕をする代わりに原状復帰の義務を負わないこと、その投資に見合う長期間契約することを定めた契約の形として「DIY型賃貸借」と呼ばれるものがあります。(国土交通省のサイトにもガイドラインや契約書のひな形があるそう!)
 例えば、家賃相場4万円のエリアで、家賃1万円で借りることができれば、1年あたり36万円分の修繕費用負担が可能になる、という考え方です。10年間の契約なら360万円分でしょうか。結構いろいろできそう!

 改修して素敵になることで、「やっぱり返してほしい」とトラブルになる可能性もあるので、10年など長期的な賃貸契約をしておく必要はあるでしょう。また、大家さんが想定していなかった大幅なDIYしてしまったり、構造を変えられて困るという場合もあります。
 仲介業者がいないということは、貸し手と借り手の直接契約になるので、お互いの関係性のためにも、事前に想定されるトラブルは回避できるようにしたいところです。


物件をどうやって見つける?

 ここが、参加者のみなさんの多くが知りたいポイントだったようです。

 空き家バンクには、なかなかよい物件がないことが多く、それには貸す側の気持ちが関係しているようです。空き家対策に仕事でも携わっている参加者の方によると、「空き家情報にはランクがあるように感じる」とのこと。たとえば、①信頼できる地域の人なら教えてもいい、②移住担当部署だけならいい、③地元の不動産会社だけならいい、④全国規模の空き家バンクに掲載してもいい、といった違いを体感するそうです。

 つまり「誰が入ってもいいです」という状態にならないと空き家バンクには載ってこないというのが実情。となると、空き家バンクに登録してある物件もあるし、空き家を待っている人もいるのに、住める空き家がないという悪循環になってしまいます。ある意味、誰もがアクセスできない形で、空き家情報を取り扱っていく方が、好循環が生まれるのかも…?


空き家を貸す側の気持ちを考えてみよう

 空き家を借りたいならば、大家さんにとってのメリットを考えることがとても大切です。

【考えられる空き家を貸すことのメリット】
①固定資産税がまかなえて赤字にならない
②管理してもらえて家の寿命が延びる(最終的に解体費用になる)

 無償で借りる場合も、家賃無料という形で賃貸借契約を結びます。ただ、安ければいいということではなく、大家さんに家賃を毎月払うことで、良好な関係を維持することにもつながるよさはあります。改装後、大家さんが頻繁に帰省されるようになって、応援してくれて、よいつながりができたという例もあるのだとか。

 一方で、大家さんにとっての不安要素についても、理解しておくことも重要です。物件を貸して、変なことにならないかどうかは、大家さんはとても気にします。地域の人からは「○○(大家)さんの家に入っている人」と認識されてしまうからです。何かあったとき、近くに親戚がいれば、その人たちにも迷惑をかけることになってしまいますもんね。


「空き家はいい人に借りてほしい」の「いい人」とは?

 「空き家はいい人に借りてほしい」というのが地域の人の思い。その「いい人」というのは一言では言い表せないくらい、複雑な意味だったりします。やっぱり肝心なのは最初の事例。その複雑な意味を汲みとって、よい事例をつくれると、徐々に空き家情報が集まるようになってくる、というのが森田さんの実体験のようです。既に直っている物件を見せることができるのも、空き家の家主さんの心を動かすのによいそうです。
 「いい人」の反対は「知らない人」。得体のしれない人に貸すのは怖いというのが本音だとすれば、会って話せば知った人になるということなのですね。「移住したい人は、その地域の祭りに参加するのがいいかも!」とハチドリ舎の安彦さん。それはいいアイデアかも!

 最後に、今後このシリーズで聞いてみたいことを参加者のみなさんにお聞きしました。「(古民家ではない)中途半端な家」「建築・不動産業界」といったキーワードが出てきましたが、どんな企画につながっていくか、楽しみですね。


 次回は、2月26日(日)19時~21時で開催します。広島市でも新しい取り組みが始まっているとのことで、その担当者の方にお話を伺います。ぜひみなさんの空き家に関する疑問も持ち寄っていただければと思います!
(レポーター:みんなでつくる中国山地百年会議・中尾圭)

みんなでつくる中国山地コラボ企画 〜空き家の課題シリーズ②広島市の新しい動き〜
2023年2月26日(日) 19時〜21時
https://www.facebook.com/events/872943527091587

みんなでつくる中国山地コラボ企画 〜始動!空き家問題解決に動く庄原の不動産屋さん〜
2023年3月10日(金) 19時〜
https://www.facebook.com/events/587764166699373


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