見出し画像

感じる心エコー(5)

感じる心エコー(5)
[第5回]カラードプラで見えるもの
~言葉の威力 モザイクってなんなんだ~
水野 篤 Atsushi Mizuno
聖路加国際病院循環器内科

心エコーってかなりの割合が印象で決まるんです.
病態生理の理解も大切ですが,もっと大切なのは「感じろ!!」ってこと.
Dr.水野の全く新しい心エコーの世界へようこそ.


 さてさて,前回は比較的あっさりしていたような気がするかと思いますが,今回は前回に少し予告していました,カラードプラについて触れていきたいと思います.おそらく本誌をご覧になるようなモチベーションの高い読者の方々はカラードプラということがどういうものかは感覚的にも理解されているのではないかと思います.前回は少し意地悪く,フレームレートということから,けっこう見えているものですらほとんど見ていないことを暗に触れてみました.今回はカラードプラそのものをとり上げて,自分も含めて世の中のほとんどのものは実際に見えているようで何も見えていないということを再度皆さんにお伝えしていけたらと思います.

Ⅰ.カラードプラは何といっても色をみるもの

 前回触れたように,日本の先輩の強い想いから,「近づくのが赤,遠ざかるのが青」ということでカラードプラの色が決められました.では実際のエコーを見てみましょう.4 ch(4腔断面)の動画[QR1]カラーの動画[QR2]をまず見てください.今回はこのなかでも僧帽弁通過血流に注目しましょう(まぁ,一応前回のフレームレートの違いがあるなぁということもかすかに覚えておいてもらえたら嬉しいです).僧帽弁の通過血流は実は2相性で,早期流入血流と心房収縮期にあるのですが,まぁ今回はそんな細かいことはなしにして,色だけに注目していきます.
 では,先ほどの動画を拡張期で止めた[図1-a,b]で色を見てほしいのです.

図1

[図1]拡張期のカラードプラと階調表示

 ちなみに両方拡張期です.[図1-a]では赤で,左房から左室に向かった赤っぽい色がよく見えますよね.ところで[図1-b]も見ていただきたいのですが,青くないですか? いや,どう見ても青ですよね.左房と左室の間にある僧帽弁を通過する血流はどのように向かうのか覚えていますでしょうか? そうです! 左房から左室には一方向で流れるはずです.
 「ではこの青は何でしょうか?」というのがこの7~8年,毎年レジデントに質問し続けている内容です.カラードプラという言葉はかなり普及していますが,そもそも色をきちんと見ることができているのか? ということもありますし,エコーという奥深い領域を考えるにはちょうどよい話題だと思っています.おそらく本誌の読者にもちょうどよい質問レベルかと思っています.ここで一度本誌を閉じて,数分考えてほしいのです.もちろんこの後解説しますが,ここで考えるという作業こそが重要だと自分は思っています.

ここから先は

2,963字 / 2画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?