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呼吸器感染症よもやま話(40)

[第40回]コロナ禍で活躍したハイフロー酸素療法


倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科

(初出:J-IDEO Vol.7 No.5 2023年9月 刊行)


COVID—19病棟で鳴り響いた酸素の音

 中等症のCOVID—19を診療している病院では,高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula:HFNC,ネーザルハイフロー)に助けられました.HFNCは,加温・加湿をかけて大量の酸素を鼻から投与するデバイスで,経鼻で60 L/分まで投与可能です.加温・加湿なしで60 L/分の流量にするとたぶん鼻腔が死にます.HFNCの何がよいかというと,通常酸素療法であるオキシマイザーカニュラやリザーバーマスクなどでは酸素化が維持できない呼吸不全でもSpO₂を維持するポテンシャルがある点です.国際ガイドライン1)では低酸素性呼吸不全に対してHFNCの使用を強く推奨しており,抜管後の再挿管回避や,挿管前のpre—oxygenationにおいても有効であることを明記しています.
 当院は最大で60床を稼働する軽症〜中等症COVID—19を診療する病院でしたが,HFNCを20〜30台稼働する活躍ぶりでした.アルファ株・デルタ株のころ,重症病床に転院できないような気管挿管非適用例に使用し,「中等症Ⅱの波」を乗り超えました.
 COVID—19病棟の廊下に立っていたとき,多くの部屋から聞こえるHFNCの音を耳にして,こんなパンデミックは最初で最後であってほしいと願うばかりでした.

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