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研修医のための微生物レクチャーシリーズ グラム染色所見と培養結果からどう考える?(1)

[第1回]グラム陽性球菌 ①

黒田浩一 くろだ ひろかず
亀田総合病院感染症科(掲載当時)

(初出:J-IDEO Vol.3 No.2 2019年3月 刊行)

はじめに

 発熱などのなんらかの感染症を疑う症状を持った患者さんが来院した場合,患者背景や症状などから,感染臓器と原因微生物を推定することによって,初期治療が決まります.よって,通常,治療開始時点では原因微生物が不明です.その後,培養検査によって微生物(真の原因微生物とは限らない)が判明した場合,それを適切に解釈し,治療方針(追加検査・治療薬・治療期間など)を決定する必要があります.
 この連載では,後半の部分である「微生物を検出した後,どのように考えるか」に焦点を当てて解説します.内容は,筆者が勤務している亀田総合病院で不定期に開催している,感染症科ローテーター(初期または後期研修医)対象のミニレクチャーを元に作成しています.

1.細菌の分類

 培養検査で検出される微生物はほとんどが細菌であり,この連載では,細菌のみを取り扱います.細菌の分類方法はいろいろありますが,一般的な臨床現場(救急外来,一般外来,一般病棟,集中治療室など)では,グラム染色による分類がわかりやすいと思います.
 多くの臨床検体から検出される細菌は,好気性菌または通性嫌気性菌であり,これらはグラム染色で,「グラム陽性」と「グラム陰性」,「球菌」と「桿菌」の2×2=4通りに,まず分類します[図1].その後,さらに形態から細分類し,臨床経過を踏まえて,菌名を推定し,治療方針を決定します.

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