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研修医のための微生物レクチャーシリーズ グラム染色所見と培養結果からどう考える?(5)

[第5回]グラム陽性球菌 ⑤

黒田浩一 くろだ ひろかず
神戸市立医療センター中央市民病院感染症科

(初出:J-IDEO Vol.3 No.6 2019年11月 刊行)

 前回は,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase negative staphylococci,CNS)の分類,引き起こす感染症,培養から検出された場合の考え方,薬剤感受性ついて解説しました.今回は,CNSの治療について簡単に触れてから,CNS感染症診療における2つのトピックをCQ(clinical questions,臨床的疑問)形式で解説しようと思います.

CNSによる感染症の治療

 前回述べたように,大半(70~80%程度)のCNSは,メチシリン耐性であるため,感受性がわかるまでの経験的治療は,セファゾリンへde-escalationします.
 前述したように,CNSによる感染症の大半はCRBSI(catheter related blood stream infection)です.化膿性血栓性静脈炎などがない通常のCRBSIの治療期間は,カテーテル抜去した場合は,血液培養陰性確認から5~7日間です.再燃のリスクはありますが,カテーテル抜去しない場合は,血液培養陰性確認から10~14日間の静注抗菌薬に,抗菌薬ロック療法を併用します【1】.抗菌薬ロック療法については,IDSA(Infectious Diseases Society of America,米国感染症学会)のCRBSI診療ガイドラインをご参照ください【1】.
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【重要】CNSの治療の基本は,バンコマイシン(感受性があればセファゾリンでもOK)
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 基本的に併用治療を行う病態が2つありますので,それについて説明します.

1.人工弁置換術後感染性心内膜炎(PVE)の治療

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